怨霊師

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第一章

第八話 身の上相談

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 食事が終わり、コウさんの事務所に戻ると女刑事さんはすでにいなかった。
 ヒマリとエマは、マリアさんに自動車で送ってもらい俺は歩いて帰った。



 翌日の放課後、俺はこっそり一人でコウさんの事務所に向った。
 今日は、昨日のバイト代をもらうために行くのだが、せっかく専門家に会うのだから、俺の身の上相談をしたいと考えている。

「入ります!」

「どうぞ」

「おう、少年来たな」

 見るとコウさんのひざには愛くるしいマイちゃんが座っている。
 コウさんは応接セットの自分の前の席を勧めてくれた。
 そこに座ると、すぐにマリアさんが事務机の上から封筒を取ると歩いて来た。

「はい、まずはお給料」

 マリアさんがにっこり笑って、俺に封筒を渡してくれた。

「ありがとうございます」

「ふふふ、中を確認して領収書にサインと印鑑をお願いね」

「はい」

 俺は封筒の中を見て驚いた。
 十万入っている。
 俺は顔を上げると目を見開いてマリアさんを見た。

「うふふ、いいのよ」

「そうだとも、少年はその位の働きをした」

「あ、ありがとうございます」

 俺はそそくさと領収書を処理してマリアさんに渡した。
 しかし、いいのだろうか?
 ほんの数時間同行しただけで、しかもうまいものまで食わしてもらった。
 昨日のエビチリはどう考えても伊勢エビのエビチリだったはずだ。
 寿司も回転の奴じゃ無い。
 その上でこんなに沢山のお金までもらってしまった。

「少年の顔は、あんなことでこんなに貰っていいのだろうか? と言う顔だな」

「は、はい」

「どうぞ」

 ハルミさんが俺とコウさんにコーヒーを、マイちゃんには真っ白なミルクを出してくれた。
 そして、コウさんの隣に座ったマリアさんに紅茶を出すと、おれの横に座って紅茶を飲み出した。

「少年、あれはすごい事だ。あの、おやじさんは誰にも助けてもらえずに困っていたのさ。高い費用で霊能者を何人も雇ったと言っていた」

「でも、コウさんにも出来るのでしょ?」

「出来るが、俺はいろいろ準備がいる。あんなに簡単に終らせられない。助かったよ」

 コウさんは高校生の俺に頭を下げてくれた。
 できた人だ。
 俺はこの人なら信用できると思った。

「コウさん聞いてほしい……」

 そして俺は、ヒマリの事件の事を話した。

「なるほどな」

「俺は人殺しになるのでしょうか?」

「今の日本の法律では裁く事は出来んだろうな。何しろ触ってもいないのだからな。自首しても無罪だろう。ところで少年、おやじさんや、若頭には怨霊は見えなかったのか?」

「!?」

 俺は突然の質問に驚いた。

「少年、ポーカーフェイスを憶えた方がいいな。で、少年なら殺せるのか?」

「!?」

 まただ、驚いて目玉が落ちそうになっている。
 コウさんはニコニコ笑顔でうなずいた。
 もう全て理解してくれているようだ。
 だが、その後真面目な顔をして宙を見つめた。
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