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第十五話 泣いている女の子
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安崎さんが廃神社に行って、1週間が過ぎました。
パソコンの前で、作業をしていると電話がかかってきました。
「もしもし、安崎です」
「はい、恵美子です」
「久しぶりです、今日時間はありますか」
「はい、大丈夫です」
「色々話したいことがありますが、全てはその時に」
居酒屋貴賓席
「一週間、連絡もせずに済みません」
安崎さんはいつもの様に、約束の時間の五分前に来てくれました。
「いいえ、大丈夫です」
私は久しぶりに好物を食べて満足しています。
「先生、あの映像について、わかっていることを教えて下さいませんか」
「はい、そのつもりで来ました。ですがこれは全て私の推測です」
私は、安崎さんの隣に座りディスクをセットしてもらった。
そして、画面が昼の映像を映しています。
「私は多くの時間、心霊映像を見ています。映像として見ている分には、ほとんど何も感じません」
「そうですか」
「はい、でもザブさんの配信映像は、格が違いました。見た瞬間に寒気を感じました。本当に恐ろしい映像です。でも、このディスクに入っている昼の映像には最初、何も感じませんでした」
ノートパソコンに映し出される昼間の廃墟映像を指さしました。
「でも、配信映像でみた昼間の廃墟は、すでに恐ろしい気配がします。この違いは、ザブさんが荒らす前と、後の違いということです」
「先生は、この映像だけで違いを感じるのですね。私にはどちらも気持ち悪さを感じて、違いなどわかりません」
私はそういうものなのかと、改めて思った。
こんな映像ばかり見ていると、見た目だけでは恐く感じ無くなるらしい。
「この家からは、二つの感情を感じます。一つは、子供からの感情、そしてもう一つはそのお父さんの感情です」
子供と言った時に、安崎さんは少しビクッと反応しました。
「この家を見ただけで、それがわかるのですか」
「いいえ、それに気が付いたのは、もう少し後ですがこの時に、怒りの感情と悲しみの感情を感じました」
私は、ここでビールを口に運んで、少し間をとった。
「ふふふ、誰かの細工のせいで、この家に、こんなに変化が起きた理由が、しばらくわかりませんでした……」
私はチラリと安崎さんを見た。
安崎さんが少し照れながら頭を掻いています。
「昼間、ザブさんはこの家を荒らし、換金出来そうなものを持ち出したのですね。あまりお金にならないものが置いてある部屋は、撮影の為にそのままにしたのでしょう。そしてもともと空き巣だったザブさんはタンスを荒らして、そのままにしたのでは無いでしょうか」
安崎さんは赤い顔になり動きを止めた。
「私は、この家に手を出してはならないものが、有ったのだと思います。親子の大事な思い出の品」
「ぬいぐるみと鏡ですか」
安崎さんの答えを聞いて私はうなずいた。
「この家は、何か複雑な事情があった様に思います。でも、父親は娘を愛し、娘さんはお父さんを愛していたのでは無いでしょうか。その思いは私達が考えるより、ずっと強かったのかもしれません」
安崎さんの表情がかわった。
泣きそうな顔になって私を見つめている。
きっと、なにか事情を知っているのでしょう。
でも、私はそれには触れず話しを続けた。
「私はこう考えています。思い出の品に手を出したザブさんに、父親が怒り、そんな父親を娘さんが心配していたと」
「ザブはとんでも無いことをしたのですね」
私はこれには答えず、映像を進めた。
映像には夜の廃墟で、スピリットボックスを出したザブさんの姿が映し出された。
そしてスピリットボックスから声がする。「ザザザ、ガエデーー、ザザザーザ」この音がするとザブさんは「か、帰ります、帰りますー―!!」と言ってあわてて逃げ出します。
「私は、この男の人の声がお父さんで、かえせーーって言っている様に聞こえます。何か大事なものを取ってしまったことがわかります。とても強い思いですよね」
「ふむ」
私はディスクを替えて自宅の映像にします。
「そして、これが自宅での映像です。ここに人の影が見えてきます」
私は、照明の消えている部屋の映像の、人影の位置を指さします。
ザブさんが引き戸を開けた瞬間に人影が一瞬見える場所です。
そして、人影が見える瞬間、
「うわあああーー」
安崎さんがとんでも無い大声を上げました。
店内のお客さんが全員振り向きます。
「おおおお、女の子が泣いているうー。おおおおおおー」
安崎さんが、凄い勢いで震えだしました。
パソコンの前で、作業をしていると電話がかかってきました。
「もしもし、安崎です」
「はい、恵美子です」
「久しぶりです、今日時間はありますか」
「はい、大丈夫です」
「色々話したいことがありますが、全てはその時に」
居酒屋貴賓席
「一週間、連絡もせずに済みません」
安崎さんはいつもの様に、約束の時間の五分前に来てくれました。
「いいえ、大丈夫です」
私は久しぶりに好物を食べて満足しています。
「先生、あの映像について、わかっていることを教えて下さいませんか」
「はい、そのつもりで来ました。ですがこれは全て私の推測です」
私は、安崎さんの隣に座りディスクをセットしてもらった。
そして、画面が昼の映像を映しています。
「私は多くの時間、心霊映像を見ています。映像として見ている分には、ほとんど何も感じません」
「そうですか」
「はい、でもザブさんの配信映像は、格が違いました。見た瞬間に寒気を感じました。本当に恐ろしい映像です。でも、このディスクに入っている昼の映像には最初、何も感じませんでした」
ノートパソコンに映し出される昼間の廃墟映像を指さしました。
「でも、配信映像でみた昼間の廃墟は、すでに恐ろしい気配がします。この違いは、ザブさんが荒らす前と、後の違いということです」
「先生は、この映像だけで違いを感じるのですね。私にはどちらも気持ち悪さを感じて、違いなどわかりません」
私はそういうものなのかと、改めて思った。
こんな映像ばかり見ていると、見た目だけでは恐く感じ無くなるらしい。
「この家からは、二つの感情を感じます。一つは、子供からの感情、そしてもう一つはそのお父さんの感情です」
子供と言った時に、安崎さんは少しビクッと反応しました。
「この家を見ただけで、それがわかるのですか」
「いいえ、それに気が付いたのは、もう少し後ですがこの時に、怒りの感情と悲しみの感情を感じました」
私は、ここでビールを口に運んで、少し間をとった。
「ふふふ、誰かの細工のせいで、この家に、こんなに変化が起きた理由が、しばらくわかりませんでした……」
私はチラリと安崎さんを見た。
安崎さんが少し照れながら頭を掻いています。
「昼間、ザブさんはこの家を荒らし、換金出来そうなものを持ち出したのですね。あまりお金にならないものが置いてある部屋は、撮影の為にそのままにしたのでしょう。そしてもともと空き巣だったザブさんはタンスを荒らして、そのままにしたのでは無いでしょうか」
安崎さんは赤い顔になり動きを止めた。
「私は、この家に手を出してはならないものが、有ったのだと思います。親子の大事な思い出の品」
「ぬいぐるみと鏡ですか」
安崎さんの答えを聞いて私はうなずいた。
「この家は、何か複雑な事情があった様に思います。でも、父親は娘を愛し、娘さんはお父さんを愛していたのでは無いでしょうか。その思いは私達が考えるより、ずっと強かったのかもしれません」
安崎さんの表情がかわった。
泣きそうな顔になって私を見つめている。
きっと、なにか事情を知っているのでしょう。
でも、私はそれには触れず話しを続けた。
「私はこう考えています。思い出の品に手を出したザブさんに、父親が怒り、そんな父親を娘さんが心配していたと」
「ザブはとんでも無いことをしたのですね」
私はこれには答えず、映像を進めた。
映像には夜の廃墟で、スピリットボックスを出したザブさんの姿が映し出された。
そしてスピリットボックスから声がする。「ザザザ、ガエデーー、ザザザーザ」この音がするとザブさんは「か、帰ります、帰りますー―!!」と言ってあわてて逃げ出します。
「私は、この男の人の声がお父さんで、かえせーーって言っている様に聞こえます。何か大事なものを取ってしまったことがわかります。とても強い思いですよね」
「ふむ」
私はディスクを替えて自宅の映像にします。
「そして、これが自宅での映像です。ここに人の影が見えてきます」
私は、照明の消えている部屋の映像の、人影の位置を指さします。
ザブさんが引き戸を開けた瞬間に人影が一瞬見える場所です。
そして、人影が見える瞬間、
「うわあああーー」
安崎さんがとんでも無い大声を上げました。
店内のお客さんが全員振り向きます。
「おおおお、女の子が泣いているうー。おおおおおおー」
安崎さんが、凄い勢いで震えだしました。
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