底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

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北海道最終戦

第四百十九話 思案

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 しかし、昇宮大臣は何故震えている?
 そして何故、すべてを話す気になった?
 ふむ、どうやら震えは恐怖では無く怒りか。
 国民の事を何も考えない、それどころか知ろうともしない首相や、その他の大臣、野党の党首などに対する怒りか。
 そして、こいつらと同じだった自分への怒りか。

 俺は、視線をミサに向けた。
 ミサなら、昇宮大臣の心を見ているだろう。そして、俺の心も。

「……」

 ミサは無言でうなずいた。
 おおむね、俺の考えで合っているのだろう。
 いまだにニヤニヤ笑っている首相やその他の大臣、野党の党首を一瞬見て視線をミサにもどした。
 ミサは顔を伏せて、首を振った。
 どうやら、言葉と行動が一致している、正真正銘の政治家の先生様と言う事なのだろう。
 大多数の国民を三十年以上も苦しめ続け、それだけでは飽き足らず、さらに餓死までさせようとする政治家の先生様ということで間違っていないのだろう。

「ふふふ、昇宮大臣、あんたの言いたい事はわかった。だが、すんなりそうですかとは行かないなあ。だが、あんたの処分はこっちの政治家の先生様の処分が済んでからだ。さて、首相お待たせしました。何か言い残すことはありますか?」

「い、言い残すことだと!?」

 首相は本当に分かっていないようだ。

「そうです。辞世の句でも詠まれますか?」

「な、何を言っている。俺が何故死なねばならんのだ。俺は生まれつきの政治家だぞ! 木田家だって必要なはずだ。俺がいれば木田家は栄えるぞ。税収だってアップさせることが出来る。支配者がさらに裕福になる法律だってどんどん考えてやれる。私がいれば木田家はどんどん裕福になる! 贅沢が出来るんだーー!!」

「やれやれ、昇宮大臣、あんたはどう思う? こんな政治家が必要だと思うか?」

「少なくとも、大殿の木田家の民の為には必要無いでしょう」

 昇宮大臣は、丁寧でゆっくりふてぶてしく言った。

「きっ、きさまーー昇宮ーー!! 裏切るのかーー!!」

「ふふふ、俺はもともと裏切り者として処分されたのだろう。今更裏切り者とは片腹痛い」

「くそっ!!」

「なあ、聞いてくれ北海道国の政治家さんよう。今のこの日本は第二次世界大戦後の日本と同じだ。何も無くなってしまった。だが、日本人だけは立ち直ることが出来る民族なんだ。なぜなら、1945年すべてを失って占領された国がたった二十年程で、世界第二位の経済大国になったんだ。そして、今いる政治家さん達はその日本をドンドンダメにしている。もう手出しをしないでくれ、あんたらが手を出すと余計に駄目になる。この世界は、最早次のステージの若者達に託す時代に入ったんだ」

「……」

 首相達は無言で俺の顔を見つめている。

「今のこの日本では、子供達の大半が苦労をしている。親を亡くし兄弟を失い、食べる物も無く助けてくれる人もいない、流した涙も少なくないはずだ。苦労をした子供達ならきっと、良い日本にしてくれるはずだ」

「木田の殿様よう!! あんたは馬鹿なのか!! せっかく、日本の頂点に一番近いくせに、『次の世代に期待する』だと本気でそんなことを考えているのか?」

「ああ。あずさ、ヒマリ、イルナ、変身を解除して姿を見せてくれ」

 三人は言われるまま姿を見せた。

「うおおっ!!」
「なんと美しい!!」
「輝くほどの美しさだ!!」
「まるで、天使のようだ!!」

「この子達は、俺の自慢の娘達だ。美しく気高く、その上頭も良い。そして何より、どん底を見ている。あんた達と違って底辺を知っているのさ。外で薄いお粥をすすっている人達と共感できるのさ。さて、あずさ、この大臣達はどうしたらいいと思う?」

「死刑です。生かしておく価値はつゆほどもありません」

 あずさは、全く表情を作らずに言った。
 やめてくれよーー。昔のお前に戻ったような気がする。

「何だと、小娘ーーっ!!!!」

 首相が恐ろしい顔であずさを見た。
 だが、あずさは表情を全く変えなかった。
 あずさの方が一枚上手のようだ。

「はぁあっはっはっはっーー!!!! それはいい。その通りだ。今の政治家達にはつゆほども価値はない。そして期待も出来ない」

「ふふんっ!!」

 あずさは自慢そうだ。
 鼻息が荒い。

「だが、あずさ、俺はひねくれ者だ!!」

「知っています」

「ふふふ、お前達よかったなあ。未来の総理大臣あずさ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやる。ふふふ、だが、そうだなあ、呂瞬の所で重労働でもしてもらおうか」

 俺がそう言うと、首相達は何の事か分からずにキョトンとしている。
 呂瞬の所とは、大陸の死体処理だ。
 贅沢三昧の大臣達にはきつい仕事だろう。まあ罰だから仕方が無いな。

「とうさん!! さらっと何を言っているのですか!! 私は総理大臣なんかやりませんよ。私は、とうさんと産業廃棄物処理屋さんをするのが夢なのですからね」

「ははは、奇遇だなあ。俺もそう思っていた所だ」

「にひひひ」

 あずさが嬉しそうに笑った。

「さて、実行犯の昇宮大臣には、もっときついお仕置きが必要だ。ヒマリどんな罰がいいかなあ」

「はい、死刑です。首をはねましょう。たとえ戦争でも、民間人を標的にして殺した人は全員死刑です」

「はあぁはっはっはっ!! それじゃあアメリカ人は全員死刑じゃ無いか。日本の民間人を狙って、殺しまくった。仕舞いには原子力爆弾まで実験で落とした。だが、俺はひねくれ者だ!!」

「知っています」

「ふふふ、昇宮大臣よかったなあ。未来の総理大臣ヒマリ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやろう……」

 俺は、昇宮大臣にどんな罰を与えようかと思案していた。
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