419 / 428
北海道最終戦
第四百十九話 思案
しおりを挟む
しかし、昇宮大臣は何故震えている?
そして何故、すべてを話す気になった?
ふむ、どうやら震えは恐怖では無く怒りか。
国民の事を何も考えない、それどころか知ろうともしない首相や、その他の大臣、野党の党首などに対する怒りか。
そして、こいつらと同じだった自分への怒りか。
俺は、視線をミサに向けた。
ミサなら、昇宮大臣の心を見ているだろう。そして、俺の心も。
「……」
ミサは無言でうなずいた。
おおむね、俺の考えで合っているのだろう。
いまだにニヤニヤ笑っている首相やその他の大臣、野党の党首を一瞬見て視線をミサにもどした。
ミサは顔を伏せて、首を振った。
どうやら、言葉と行動が一致している、正真正銘の政治家の先生様と言う事なのだろう。
大多数の国民を三十年以上も苦しめ続け、それだけでは飽き足らず、さらに餓死までさせようとする政治家の先生様ということで間違っていないのだろう。
「ふふふ、昇宮大臣、あんたの言いたい事はわかった。だが、すんなりそうですかとは行かないなあ。だが、あんたの処分はこっちの政治家の先生様の処分が済んでからだ。さて、首相お待たせしました。何か言い残すことはありますか?」
「い、言い残すことだと!?」
首相は本当に分かっていないようだ。
「そうです。辞世の句でも詠まれますか?」
「な、何を言っている。俺が何故死なねばならんのだ。俺は生まれつきの政治家だぞ! 木田家だって必要なはずだ。俺がいれば木田家は栄えるぞ。税収だってアップさせることが出来る。支配者がさらに裕福になる法律だってどんどん考えてやれる。私がいれば木田家はどんどん裕福になる! 贅沢が出来るんだーー!!」
「やれやれ、昇宮大臣、あんたはどう思う? こんな政治家が必要だと思うか?」
「少なくとも、大殿の木田家の民の為には必要無いでしょう」
昇宮大臣は、丁寧でゆっくりふてぶてしく言った。
「きっ、きさまーー昇宮ーー!! 裏切るのかーー!!」
「ふふふ、俺はもともと裏切り者として処分されたのだろう。今更裏切り者とは片腹痛い」
「くそっ!!」
「なあ、聞いてくれ北海道国の政治家さんよう。今のこの日本は第二次世界大戦後の日本と同じだ。何も無くなってしまった。だが、日本人だけは立ち直ることが出来る民族なんだ。なぜなら、1945年すべてを失って占領された国がたった二十年程で、世界第二位の経済大国になったんだ。そして、今いる政治家さん達はその日本をドンドンダメにしている。もう手出しをしないでくれ、あんたらが手を出すと余計に駄目になる。この世界は、最早次のステージの若者達に託す時代に入ったんだ」
「……」
首相達は無言で俺の顔を見つめている。
「今のこの日本では、子供達の大半が苦労をしている。親を亡くし兄弟を失い、食べる物も無く助けてくれる人もいない、流した涙も少なくないはずだ。苦労をした子供達ならきっと、良い日本にしてくれるはずだ」
「木田の殿様よう!! あんたは馬鹿なのか!! せっかく、日本の頂点に一番近いくせに、『次の世代に期待する』だと本気でそんなことを考えているのか?」
「ああ。あずさ、ヒマリ、イルナ、変身を解除して姿を見せてくれ」
三人は言われるまま姿を見せた。
「うおおっ!!」
「なんと美しい!!」
「輝くほどの美しさだ!!」
「まるで、天使のようだ!!」
「この子達は、俺の自慢の娘達だ。美しく気高く、その上頭も良い。そして何より、どん底を見ている。あんた達と違って底辺を知っているのさ。外で薄いお粥をすすっている人達と共感できるのさ。さて、あずさ、この大臣達はどうしたらいいと思う?」
「死刑です。生かしておく価値はつゆほどもありません」
あずさは、全く表情を作らずに言った。
やめてくれよーー。昔のお前に戻ったような気がする。
「何だと、小娘ーーっ!!!!」
首相が恐ろしい顔であずさを見た。
だが、あずさは表情を全く変えなかった。
あずさの方が一枚上手のようだ。
「はぁあっはっはっはっーー!!!! それはいい。その通りだ。今の政治家達にはつゆほども価値はない。そして期待も出来ない」
「ふふんっ!!」
あずさは自慢そうだ。
鼻息が荒い。
「だが、あずさ、俺はひねくれ者だ!!」
「知っています」
「ふふふ、お前達よかったなあ。未来の総理大臣あずさ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやる。ふふふ、だが、そうだなあ、呂瞬の所で重労働でもしてもらおうか」
俺がそう言うと、首相達は何の事か分からずにキョトンとしている。
呂瞬の所とは、大陸の死体処理だ。
贅沢三昧の大臣達にはきつい仕事だろう。まあ罰だから仕方が無いな。
「とうさん!! さらっと何を言っているのですか!! 私は総理大臣なんかやりませんよ。私は、とうさんと産業廃棄物処理屋さんをするのが夢なのですからね」
「ははは、奇遇だなあ。俺もそう思っていた所だ」
「にひひひ」
あずさが嬉しそうに笑った。
「さて、実行犯の昇宮大臣には、もっときついお仕置きが必要だ。ヒマリどんな罰がいいかなあ」
「はい、死刑です。首をはねましょう。たとえ戦争でも、民間人を標的にして殺した人は全員死刑です」
「はあぁはっはっはっ!! それじゃあアメリカ人は全員死刑じゃ無いか。日本の民間人を狙って、殺しまくった。仕舞いには原子力爆弾まで実験で落とした。だが、俺はひねくれ者だ!!」
「知っています」
「ふふふ、昇宮大臣よかったなあ。未来の総理大臣ヒマリ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやろう……」
俺は、昇宮大臣にどんな罰を与えようかと思案していた。
そして何故、すべてを話す気になった?
ふむ、どうやら震えは恐怖では無く怒りか。
国民の事を何も考えない、それどころか知ろうともしない首相や、その他の大臣、野党の党首などに対する怒りか。
そして、こいつらと同じだった自分への怒りか。
俺は、視線をミサに向けた。
ミサなら、昇宮大臣の心を見ているだろう。そして、俺の心も。
「……」
ミサは無言でうなずいた。
おおむね、俺の考えで合っているのだろう。
いまだにニヤニヤ笑っている首相やその他の大臣、野党の党首を一瞬見て視線をミサにもどした。
ミサは顔を伏せて、首を振った。
どうやら、言葉と行動が一致している、正真正銘の政治家の先生様と言う事なのだろう。
大多数の国民を三十年以上も苦しめ続け、それだけでは飽き足らず、さらに餓死までさせようとする政治家の先生様ということで間違っていないのだろう。
「ふふふ、昇宮大臣、あんたの言いたい事はわかった。だが、すんなりそうですかとは行かないなあ。だが、あんたの処分はこっちの政治家の先生様の処分が済んでからだ。さて、首相お待たせしました。何か言い残すことはありますか?」
「い、言い残すことだと!?」
首相は本当に分かっていないようだ。
「そうです。辞世の句でも詠まれますか?」
「な、何を言っている。俺が何故死なねばならんのだ。俺は生まれつきの政治家だぞ! 木田家だって必要なはずだ。俺がいれば木田家は栄えるぞ。税収だってアップさせることが出来る。支配者がさらに裕福になる法律だってどんどん考えてやれる。私がいれば木田家はどんどん裕福になる! 贅沢が出来るんだーー!!」
「やれやれ、昇宮大臣、あんたはどう思う? こんな政治家が必要だと思うか?」
「少なくとも、大殿の木田家の民の為には必要無いでしょう」
昇宮大臣は、丁寧でゆっくりふてぶてしく言った。
「きっ、きさまーー昇宮ーー!! 裏切るのかーー!!」
「ふふふ、俺はもともと裏切り者として処分されたのだろう。今更裏切り者とは片腹痛い」
「くそっ!!」
「なあ、聞いてくれ北海道国の政治家さんよう。今のこの日本は第二次世界大戦後の日本と同じだ。何も無くなってしまった。だが、日本人だけは立ち直ることが出来る民族なんだ。なぜなら、1945年すべてを失って占領された国がたった二十年程で、世界第二位の経済大国になったんだ。そして、今いる政治家さん達はその日本をドンドンダメにしている。もう手出しをしないでくれ、あんたらが手を出すと余計に駄目になる。この世界は、最早次のステージの若者達に託す時代に入ったんだ」
「……」
首相達は無言で俺の顔を見つめている。
「今のこの日本では、子供達の大半が苦労をしている。親を亡くし兄弟を失い、食べる物も無く助けてくれる人もいない、流した涙も少なくないはずだ。苦労をした子供達ならきっと、良い日本にしてくれるはずだ」
「木田の殿様よう!! あんたは馬鹿なのか!! せっかく、日本の頂点に一番近いくせに、『次の世代に期待する』だと本気でそんなことを考えているのか?」
「ああ。あずさ、ヒマリ、イルナ、変身を解除して姿を見せてくれ」
三人は言われるまま姿を見せた。
「うおおっ!!」
「なんと美しい!!」
「輝くほどの美しさだ!!」
「まるで、天使のようだ!!」
「この子達は、俺の自慢の娘達だ。美しく気高く、その上頭も良い。そして何より、どん底を見ている。あんた達と違って底辺を知っているのさ。外で薄いお粥をすすっている人達と共感できるのさ。さて、あずさ、この大臣達はどうしたらいいと思う?」
「死刑です。生かしておく価値はつゆほどもありません」
あずさは、全く表情を作らずに言った。
やめてくれよーー。昔のお前に戻ったような気がする。
「何だと、小娘ーーっ!!!!」
首相が恐ろしい顔であずさを見た。
だが、あずさは表情を全く変えなかった。
あずさの方が一枚上手のようだ。
「はぁあっはっはっはっーー!!!! それはいい。その通りだ。今の政治家達にはつゆほども価値はない。そして期待も出来ない」
「ふふんっ!!」
あずさは自慢そうだ。
鼻息が荒い。
「だが、あずさ、俺はひねくれ者だ!!」
「知っています」
「ふふふ、お前達よかったなあ。未来の総理大臣あずさ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやる。ふふふ、だが、そうだなあ、呂瞬の所で重労働でもしてもらおうか」
俺がそう言うと、首相達は何の事か分からずにキョトンとしている。
呂瞬の所とは、大陸の死体処理だ。
贅沢三昧の大臣達にはきつい仕事だろう。まあ罰だから仕方が無いな。
「とうさん!! さらっと何を言っているのですか!! 私は総理大臣なんかやりませんよ。私は、とうさんと産業廃棄物処理屋さんをするのが夢なのですからね」
「ははは、奇遇だなあ。俺もそう思っていた所だ」
「にひひひ」
あずさが嬉しそうに笑った。
「さて、実行犯の昇宮大臣には、もっときついお仕置きが必要だ。ヒマリどんな罰がいいかなあ」
「はい、死刑です。首をはねましょう。たとえ戦争でも、民間人を標的にして殺した人は全員死刑です」
「はあぁはっはっはっ!! それじゃあアメリカ人は全員死刑じゃ無いか。日本の民間人を狙って、殺しまくった。仕舞いには原子力爆弾まで実験で落とした。だが、俺はひねくれ者だ!!」
「知っています」
「ふふふ、昇宮大臣よかったなあ。未来の総理大臣ヒマリ様からお許しが出た。死刑だけはやめておいてやろう……」
俺は、昇宮大臣にどんな罰を与えようかと思案していた。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
少年少女たちの日々
原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。
世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。
しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。
世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。
戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。
大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。
その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる