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北海道最終戦

第百四十六話 親衛隊の実力

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「撃てぇーーっ!!!!」

 北海道国の首相が叫んだ。

「アド、赤穂さん、オオエ!! 隊長と代表を頼む。俺は総さんを護る」

「ニャー!!」
「はい!!」
「分かりました!!」

 その声と同じタイミングで銃撃が始まった。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!! やめろーー!!! やめるんだーーっ!!!! 銃は使うなーー!!!!」

 首相の横をかすめるように銃弾が何発か飛んで行った。

「ぎゃははは、銃の扱い方はド素人じゃねえか!! 丸く囲んだら同士討ちになるのは当たり前だろう。そんなこともわからんのかねえ。くひひっ」

 黒いアンナメーダーマンの残虐大臣が笑っている。
 銃弾程度ではアンナメーダーマンを倒す事は出来はしない。
 アンナメーダーマン達には少しの動揺すら無かった。

「ぐああああぁぁぁーー、いてぇぇーーっ!!」

 銃弾の多くは囲んでいる兵士達に当たっている。だが、防弾チョッキでも着ているのか兵士達にも即死の者はいなさそうだ。
 むしろ、足とか手とかにかすった者達が大げさに痛がっている。
 まあ、本当に痛いのかもなあ。血が沢山でている。

 おそらく、弾がもったいなくて十分な練習が出来ていないのだろう。
 まるっきりこっちに飛んでこない弾まであった。

「くそうっ!! 警棒を使えーーっ!!」
「うおおおおーーーーーーー!!!!」

 親衛隊は、一斉に警棒をのばして全員が構えた。
 それを振りかぶり襲いかかってくる。

「ふふふ、それなら、俺でも戦える!!」

 総さんが、いち早く敵に飛び込んで、警棒を取り上げて数人をたたきのめした。

「ほらっ!!」

 総さんが兵士の代表二人に、倒れている親衛隊の警棒を取りあげて渡した。

「ははは、ありがとうございます」

 兵士達の代表の二人は楽しそうに笑って警棒を受け取ると、親衛隊に飛び込んで次々に倒していく。
 最強の親衛隊なのかも知れないが、大勢の兵士の中で代表を務めるほどのこの二人はそれ以上に強いようだ。
 三人が暴れまくるのを合図に、アンナメーダーマン達も親衛隊に襲いかかった。

「やれやれ、さすがに強いなあ。おや!? あんたは行かないのか??」

 俺は、横に立っている憲兵隊の隊長の顔をのぞき込んだ。

「ちっ、出遅れた! 俺の出番は、もうなさそうだ」

 残念そうな顔をした。この隊長も腕には自信があるようだなあ。
 しかし、ほんとうにあっと言う間の出来事だった。
 親衛隊は、すでに全員床に倒れてうなっている。

「なっ、なんなんだ!!!! なんなんだーーーー!!!! おまえたちはーーーー!!!!!!」

 北海道国の首相の目が見開かれて飛び出しそうになっている。
 鼻水まで出とるぞ、ギャグ漫画かよ!

「さて、次はお前だーーっ!!!!!! しねぇーーっ!!!!」

 黒いアンナメーダーマンが、首相に殴りかかった。

「ひっ!! ひいいぃぃーーーーーー!!!!」

 ダン!!!!!!

 首相が悲鳴と共にしゃがむと、スケさんが間に割り込んで黒いアンナメーダーマンの拳の軌道を変えた。
 スケさんが割り込まなければ本当に殺してしまう勢いだった。
 軌道を変えられた黒いアンナメーダーマンの拳は、首相の体ではなく横にある扉を殴った。
 扉は高速で回転しながら吹飛んで、食堂の中にいる大臣達の前を猛烈な勢いで飛んで行った。

「ひっひいぃぃぃーーっ!!!!」

 ノーパンしゃぶしゃぶを食べようとしていた大臣達が、悲鳴を上げ、その中の数人がそのままバタンと後ろに倒れた。
 そう言えば、残虐大臣は裏切り者として部下を処刑されているんだったなあ。
 危うく家族まで殺されるところだったんだよな。
 そうか、腹を立てていたのか。

「こらこら、残虐……、まだ殺しちゃあだめだ!! 死刑は判決が出てからだ!! ふふふっ」

 残虐大臣と言いそうになって、そこだけはごまかした。

「くっ!! わかった……」

 黒いアンナメーダーマンの残虐大臣は、扉を殴り飛ばした姿勢のまま、顔だけを北海道国の首相にむけた。
 向けられた首相の体がビクンと波打った。

「いいいいっ、いった……い、いったい、お前達は何者なんだぁーー????」

「わたくし達は、越後の商人十田家の者です。そして私は、十田家の使用人八兵衛です。黒いのや青いのや赤いのは、アンナメーダーマンという正義のヒーローです。黒い忍者のような服を着ている者は忍者です。そして猫耳の黒いメイド幼女は、アド三十歳です」

「二十九歳ニャーーーー!!!!」

「なっ!!!! この可愛い幼女が三十歳!?」

 首相が驚いている。

「おいっ!! 二十九歳っていっているニャーーーー!!!!」

「さて、北海道国の首相さん。あんたはやっちゃあいけないことをしてしまった。何をしたのか分かっているのか?」

「な、なに? まさかあれか? あれのことを言っているのか?」

 首相はノーパンしゃぶしゃぶを指さした。

「そうだ!! 俺達が薄い粥で我慢しているのに、自分たちばかりノーパンしゃぶしゃぶを食いやがってぇーーーー!!!!」

 兵士の代表の二人の目が血走っている。
 勝手に割り込まないでくれるかなあ。

「違う!!!!」

 俺は首を振った。
 確かに許せないことではあるが、自国内のことだ。
 俺には、もっと許せないことがある

「ま、まさか。あれのことか? いや? あれのことか……?」

 首相は指を折りだした。
 思い当たることが、沢山有るらしい。

「政治家って奴はそんなに悪事を働くものなのか?」

「ふんっ!! くだらん。一体何が言いたいのだ。言ってみろ!」

 どうやら、会話をしているうちに落ち着きを取り戻したようだ。
 ふてぶてしい顔になり、余裕が出て来た。

「共和国の民間人を殺させただろう? 戦争にだってまもらなければならない不変のルールがある。民間人を狙って殺す事だけは絶対にやっちゃあならねえんだ。あんたは、それを指示してやったんだ」

「ふん、使用人の豚ふぜいが何を言いやがる。全く身に覚えがねーなーー!! それとも証拠でもあるのか?」

 人を見下し始めた。
 これだからなあ……。

「なにーーっ!!!!」

 俺を馬鹿にしたとたんに、スケさんとカクさんが殴りかかろうとした。
 俺はそれを手で制して、黒いアンナメーダーマンの残虐大臣の横に立った。
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