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激闘九州猛将伝

第四百五話 小手調べ

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 九州を代表する三人の猛将が次々繰り出す攻撃を、新政府軍の隊長達が重い三間槍で次々受けていきます。
 ガンガンと重い金属どうしがぶつかる音が響きます。
 槍の動きだけを見ていれば互角にも見えますが、九州の三人の猛将は歯茎から血が出るほど歯を食い縛り攻撃をしていますが、対して新政府軍の三人の隊長は口に笑みさえ浮かべ涼しい顔で攻撃を受けています。

「ふふふ、普通の人間でこれだけの攻撃が出来るとは驚嘆に値する」

 まるで、あのつるてんのような言われ方です。
 ちがうなあ、つるりん、くるりん、まあそんな感じの人の言われかたです。テレビで見た事があります。人類最強と言う奴でしょうか。
 いずれにしても、三隊長はこんな言い方が出来るほど余裕と言うことですね。

「くそーーっ!! うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 九州の猛将達は渾身の力を込め、うなり声まで轟かせて槍を振り降ろしました。
 けたたましい金属音が鳴ると同時に、九州の猛将達の槍が弾き飛ばされて、猛烈な勢いで回転して、天高く飛んで行きました。
 三人の隊長は、振り上げながら槍を弾き飛ばしたので、そのままの勢いで槍は三隊長の頭上高く振り上げられています。
 動きが完全にシンクロしています。恐らく狙ってやっていますね。
 完全になめられています。

「きえええええええぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!!!!」

 隊長達は振り上げた槍を気合いと共に打ち下ろします。
 あああっ、全くーー!! ベッキーと安東常久様、島津義弘様は防具を装備していません。薄い夏服を着ているだけです。馬鹿なのでしょうか。
 いくら何でも、この状態で攻撃を受ければ即死です。
 私は、あせって走っていますが、足を止めました。

 もう間に合わないからです。
 それに、もし間に合ったとしても、三人を同時に助けられるほど私には力がありません。

「くっ!!」

 私は振り降ろされる槍を直視出来ず、目を閉じてしまいました。
 目を閉じると、精神が集中するためか音が良く聞こえます。
 新政府軍の隊長の槍がゴオォォォーーと風を切る音が良く聞こえます。

 カアアアァァァァァーーーーーン

 高い金属音がしました。
 三猛将は馬鹿なので石頭だからでしょうか、おおよそ人の頭を叩いた音には聞こえませんでした。

「ぐああああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」

「くひっ」

 ――????

 苦痛の声を上げているのは、新政府軍の隊長のようです。
 いたずらっぽく笑っているのは、九州の三猛将のようです。
 いったい何があったのでしょうか。
 目を開けると、血みどろの九州の猛将がいる様な気がして、素早く目が開けません。私は恐る恐るゆっくり目を開きました。

「き、きさまらーー!! 何だそれは!! 卑怯だとは思わないのかーー!!!!」

 ナカヅイ隊長が叫んでいます。
 私の目には、九州の猛将三人を守ってシャドウちゃん達が、新政府軍の隊長の槍の前に体を入れて、太くて硬い槍を体で受けているのが見えます。
 おかげて新政府軍の隊長の槍は、九州の三猛将の頭の数ミリ上でピタリと止まっています。

「何を言う!! お前達だって鎧を着けているではないか。俺達の鎧が攻撃を受けてくれたのだ。卑怯もへったくれもあるものかーー!!」

 安東常久様が笑いながら言います。

「それのどこが鎧だーー!!!! 金属製のメイドロボじゃねえかーー!! ふっ、ふざけるなーー!!!! 神聖な一騎打ちを何だと思っているのだーーーー!!!!」

 ナカヅイ隊長が唾を沢山飛ばして言いました。

「では、見せてやろう。まばたきをしないで良く見ておけ!!」

 安東常久様が後ろに飛び、間合いを取りました。

「チェイン……」

 九州の三猛将が言いました。
 いいえ、言いそうになりました。

「あーっ、お馬鹿ーー!! 違う! 違う! いったい何を言いそうになっているのよーー!!!!」

「そうであった! オイサスト! シュヴァイン!」
「オイサースト! シュバイン!」
「オイザスト! シュヴァイーン」

 三者三様に言いましたが、シャドウちゃんはその意をくみ取り変身させます。
 三人のメイドロボが糸のように変形して、それぞれの主人の体を包みます。
 三人の猛将は大殿が作った当世具足を体に装備し終わりました。

「うおおおぉぉーー!!!! 変身した!! た、確かに鎧だ!!」

 三人は真っ黒な具足を身にまとい腕を組みました。
 どうやら、新政府軍の隊長達は納得したようです。

「まったく!! 最初から装備して下さい!! 心配するじゃないですかーー!!」

「おー桃井さんかー。悪い悪い。いやあーー!! 最初は自分の力がどれだけ通じるか確かめたかったからのう」

 安東常久様が頭を掻いています。

「ひひひ」

 ベッキーと島津義弘様がいたずらっぽく笑っています。

「はああぁーーっ! 心配して損しました!!」

 私は知らず知らずに、涙が出ていたようです。
 こっそりそれを拭き取りました。
 でも、ベッキーはそれに気付いてしまったようです。

「桃井さん、すみません。しかし、新政府軍の隊長は、滅茶苦茶つよいですなあ。大殿に会っていなければ、九州はいまごろ新政府軍に征服されていましたなあ」

 ゆるんだ表情を、引き締めて言いました。

「確かにのう……」

 島津義弘様も生真面目な顔をして言いました。

「ふふふ、遊びはここまでじゃ。ここからは本番じゃ。九州の猛将の力とくとお見せいたしましょうぞ」

 安東常久様が言うと、三人はそれぞれ構えました。
 かっこよく決まっています。
 すると、私の目の前に、吹飛ばされていた三本の槍が真上から飛んできて、足元に突き刺さりました。

「きゃああああぁぁぁーーーーーーっ!!!!!!」

 私は透明化を橋に飛び降りたときに解除しています。
 その私が不覚にも尻もちを付いてしまいました。

「うおっ!!!!!!」

 六人の男達が全員、私の一点を見ています。
 そうです。私は短いスカートで大股開き、M字開脚です。
 もう、パンツが丸見えです。
 はぁー、大失敗です。でも安心して下さい。丁度真ん中あたりは落ちてきた槍で見えなくなっています。やれやれです。
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