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激闘九州猛将伝

第四百四話 橋の上の一騎打ち

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「桃井様! 報告します!」

 私のもとに、北海道で大殿の様子を見てきた部下がもどって来ました。
 北海道には古賀忍軍い組の部下四人を行かせて、交替で大殿の状況を報告してもらっています。
 本当は、い組こそが大殿のお庭番なのですが今回は北海道担当の、に組の赤穂さんにその役を譲っています。

「はい、お願いします」

「大殿は、函館から札幌に移動しました」

「そうですか。それで?」

「はい、札幌の街に入って、最初に民間人に食糧を配っています」

 私は、感動してひざカラチからが抜け、カクンと体が沈みました。
 織田信長も太閤秀吉も徳川家康も戦争相手の国に入って、飢えている民衆に食糧を配ったなどと言うことは聞いた事がありません。
 上杉謙信が敵国の武田信玄に塩を送ったのは有名ですが、敵国の民衆にまで食糧を配ったなどと言うことは聞いた事がありません。

 確か、石田三成が飢饉の時に自国民に倉を開放して、米を配ったのは聞いた事がありますが、これも自国民で敵国の民ではありません。
 我が、親愛なる大殿はまずは敵国だろうと自国だろうと、民衆を救うことから考えます。
 いつも民衆第一です。
 桃井は大殿が好きすぎて、どうにかなりそうです。

「そ、それで?」

「はい、次に市街地に入り、ストリートチルドレンの救出を始めました」

「はうっ……」

 ダメです、感動しすぎて呼吸困難になって、死にそうになりました。

「あの、大丈夫ですか?」

「ゼーゼーーッ……、だ、大丈夫です。続けて下さい」

「はい、拠点を地元の小学校に移して、そこで地元の人に食糧を配り、同時に大音量のスピーカーで、音楽を流して付近に存在をアピールしています」

「そうですか、楽しそうな音楽が聞こえてくれば行ってみたくなりますからね。名案です。それで、それで?」

「はい。そのスピーカーは、ステージが付いていまして、そこでピーツインのコンサートが開かれています」

「な、なんですってー!!」

「しかも一日に二回のステージです。しかも、しかも、夜には、ステージの周りで盆踊りです」

「な、なんですって!! それは、もはや夏祭りではありませんかーー!!!!」

「です、です、そうなんですよー。食糧の提供は屋台から行なっているので、もはや夏祭りそのものです。そんな楽しい夏祭りを中断して、こうして報告に来ました。くっ、じゃんけんに負けました。では、私は任務にもどります」

「なっ……」

 う、うらやましすぎる。
 部下は、いそいそと北海道に戻りました。
 屋台に、超絶美少女アイドルピーツインのステージに盆踊り、そして大殿! 私もいきたーーい!!!!

「いいでしゅねえ。わたちもしょっちにいきたいでーしゅ」

 アメリちゃんが言いました。
 私は今、九州側の関門海峡にかかる橋の主塔の上にいます。
 門司側の主塔の上で、長門の新政府軍を見つめ対峙しています。
 私のまわりには、アメリちゃんとフォード教授、サンダーアメリカからサンダーワールドに名前をかえた、サンダーワールドさんのアメリカ三大ヒーローがいます。

「いよいよ、始まりますかな」

 フォード教授が目をキラキラさせて言いました。
 橋の道路の上を三人の九州を代表する猛将が横並びでゆっくり歩きます。
 左側を戸次統虎様こと、ベッキー、そして右側を安東常久様、中央を島津義弘様が進みます。
 アメリカ三大ヒーローは大殿から、戦争には参加しないように言われています。
 敵にモンスターが現れるので、モンスターだけ退治して欲しいと言われていますので、モンスターが出てくるまでは指をくわえて見学です。

「俺は、日本国九州雄藩連合島津義弘だ。この戦いの総大将を任されている。せっかくだから、手始めに一騎打ちで腕試しと行こうじゃねえか! 恐いならやめてやるがな。がははははーー」

 九州雄藩連合は橋の手前で整列して、大きな日の丸の旗を揚げています。
 その旗が、島津義弘様の口上が終わるとバサバサと音を立てて揺れました。
 ベッキーと安東常久様、島津義弘様の後ろには影のような真っ黒なメイド、シャドーが一人ずつ立っています。

「ふん、アンナメーダーマンは、いねーのか」

 敵新政府軍から一人の男が歩き出し、道路を進みます。
 あれは五番隊隊長のナカヅイですね。
 ですが、人相が前より悪くなっています。目の下のくまが書いたように濃く黒くなっています。
 体も一回り大きくなったように感じます。

「ふふふ、アンナメーダーマンはいない。しばらくは九州に来られないはずだ」

「ははは。それで、関門海峡を渡ろうとは増長しすぎだ。後悔させてやる!!」

 ナカヅイは怒りの表情で手を上げると、こっちへ来いと手を振りました。
 すると新政府軍の中から、二人の男が歩き出します。
 六番隊の隊長ミズと七番隊の隊長マボリです。
 この二人の人相も悪くなり、体が大きくなっています。
 三人は手に織田の三間槍を持ち、のそりのそりと橋の中央を目指します。

「ふふふ、こうして目の前で見ると、おぬしらでかいなあ」

 安東常久様が言いました。

「ふん、そりゃあそうだろう俺達は、ハルラ様の加護をもう一段階上げてもらった。前回あった時の俺達じゃねえ」

 気のせいでは無かったようです。
 本当に体が一回り大きくなっていたようです。
 ベッキーと安東常久様、島津義弘様の手にも槍がありますが、普通サイズです。

「えっ!!??」

 思わず声が出ました。
 三人は、どうやら具足を付けないで戦うつもりのようです。
 何を考えているのでしょうか。
 殺されますよーー。

「なるほどなあ。ハルラと言うのはそんなことも出来るのか。おもしろい。準備が良ければ、そろそろ始めたいのだが?」

 島津義弘様が言いました。

「ふふふ、さっさとかかって来い!!!!」

 ナカヅイが言いました。

「いくぞおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!」

 ベッキーと安東常久様、島津義弘様が襲いかかります。

「だめーーっ!!!!」

 思わず私は橋の主塔の上から飛び降り、三人の元へ急ぎました。
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