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あずさと札幌ライフ

第三百九十八話 もらい泣き

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「うわあぁぁぁーーーーーー!!!!! このカバン、すごくたくさん食べ物が入っている」

 俺のバックパックには、沢山食糧を詰め込んで来た。
 食べやすいように、一番上におにぎりが沢山のせてある。

「これを食べたら、チビ達元気になるかなあ?」

 その言葉を聞いたときに、リーダーの顔が曇った。
 どうやら、元気にならないほど弱っているのだろう。

「はーーっ、よく死んだ!!」

 俺は、倒れた状態から上半身だけ起きて背伸びをした。

「うわあ!! 豚が生き返ったーー!!!!」

「おいおい、俺は豚じゃねえ! 八兵衛だ! お前達の所に病気の子供がいるのか? 治してやるから案内しろ!!」

「ちっ! 大人の言うことなんか信用できるかよう」

「そうか、……ならば、そのカバンの中の食べ物には毒が入っていないぞ。ふふふどうだ」

「な、なんだって!?」

 キョトンとしている。
 言った意味がわからないようだ。
 全く子供はこれだからなあ。難しすぎたかな?

「大人の言うことが信用できないのなら、そのカバンの食べ物は食べられなくなったということだ」

「な、何を言っているんだ?」

 やっぱり、まだわからないらしい。やれやれだぜ。

「ふふふ、だってそうだろ。俺が毒は入っていないって言ったんだから、お前達は毒が入っていると思うんだろ」

「…………そっ、そうか」

 どうやら、言った意味がわかってもらえたらしい。

「どれ、毒味をしてやろう。一番上の握り飯を取ってくれ」

 子供達は、俺に刃物を向けながら囲み、リーダーが代表して俺に一個おにぎりを渡そうとした。
 俺はあずさの顔が脳裏に浮かんだ。

「ぐわああああーーーーー!!!! 何をするんだーー!!!! きたねーー!!!! このやろー!!!! このやろーー!!!!」

 俺は、リーダーの子供の手ごと、おにぎりを口に入れた。
 リーダーの手は俺のよだれで、びちょ、びちょになった。
 おかげで烈火の如く起って、俺を蹴っている。

「くひひひっ……っうっ……ぐああああああああぁぁぁぁーーーーー!!!!! げほぉーげほぉーー!!!!」

 俺はそれがおかしくて、笑えてしまった。
 反応があずさと同じだった。つぼにはまったのだ。
 そして、笑いすぎたため、おにぎりが変なところに入ってむせてしまった。

「うわっ! やっぱり毒が入っていたのかーー!! くそーー!!」

「違う違う!! 美味し過ぎてむせたんだ!! はーーうめーー!!!!」

 俺が美味いといったら、子供達はゴクリと唾を飲み込んで、真剣な顔をしてカバンを見つめている。

「ねえ、兄ちゃん。毒は入っていないって! 食べてもいい?」

「だめだ、チビ達が待っている。チビが先だ」

「そっか! そうだね」

 リーダーが言うと、子供達は口からよだれを垂らしながらも、素直に言うことを聞いている。
 人に刃物をためらいもなく、ぶっさすのは褒められたことじゃねえが、いい子達じゃねえか。

「おい、お前達、ここにもう一個カバンがある。おにぎり位、一人一個食べてもいいんじゃ無いかなあ」

「うおっ!! さっきまで無かったじゃないか! どこから出したんだー!??」

「ふふふ、そんなことはどうでもいいじゃねえか。まあ、しいていうならば超能力だ。ほら! 食え!!」

 子供達は、全員リーダーの顔を見た。

「しょうがねえなあ、一人一個だぞ!!」

「わあああーー!!」

 歓声を上げると子供達が、駆け寄って手に手におにぎりを取りかぶりついた。

「うめーーーっ!!!! うめーーよぉぉぉーーー……!! わあーーん……!!」

 子供達は、握り飯を食べながら大声で泣き出した。

「くっ、くそーーっ……ぐぉっ」

 むこうでこっちの様子を伺っていた、原田の子分達が泣くのを我慢しながらも、泣けてしまって泣き声が漏れている。

「おい、おめーは食わねえのか?」

「俺はチビ達が食べ終わってから最後に食う」

 どうやら、リーダーは全員が食べられないといけないので、最後に食べる気のようだ。

「なんて奴だーー!! ふおぉぉーーーー!!!!」

 原田の子分達がとうとう普通に泣きだした。
 こいつらは、子供達に会うと攻撃されていたので、こんなにしっかり様子を見たことが無かったのだろう。
 よく知ってしまうと、こんなものなのかも知れない。

「なあ、俺には不思議な超能力がある。医師免許はねえが、チビを見せてくれねえか、助けてやれるかもしれねえ」

「……」

 リーダーの子供はチラリと俺を見た。

「なあ、頼む。助けたいんだ!! この通りだ!!」

 俺は誠意をもって両手をついて頭をさげた。

「あんたさあ、なんでそんなに助けたがるんだよう」

「なんでって、小さな子が苦しんでいるのなら助けるのが大人の仕事だ。子供を守るのは大人の仕事なのさ。よく頑張ったなあ。つらかっただろう。後は八兵衛に任せてくれ。この先は、食事と安全を俺が守ってやる。もう苦労する必要は無いんだ! 子供は楽しく笑顔で暮らせるようにする。信じてくれ!」

「うわあーーやめろーー!!!! やめろーー!! やめろって! やめて……!! やめ……」

 俺はそういうとリーダーに近づいて、軽く抱きしめようとした。
 最初は手を振りほどいたが、続けて抱きしめようとすると、振りほどく力が弱くなり、最後は涙を流して自分から抱きついてくれた。

「うわあああああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」

 リーダーの子供が大声で泣き出すと、一緒について来た子供達も泣いている。

「ぐわあああーーーーーーーー!!!!!」

 原田の子分まで大声で泣いている。
 うぜえっ!!!!

 このあと、リーダーに案内をしてもらって、隠れ家で動けない子供達を治癒して、全員を屋台村に案内した。

「とうさーーん、すごく楽しい。今までの夏休みで一番楽しーーい」

 屋台村に着くとすぐに、あずさが駆け寄って来た。

「そ、そうか。この夏休みがあずさの記憶に残るほど、楽しいのなら俺もうれしいよ」

「この子達が、最初に助けた子? かわいい女の子ね」

「えっ」

 俺は手をつないでいるリーダーの子供を見た。
 赤い顔をして、クネクネしている。
 まじかーー!! 又、やってしまったーー!!
 男のフリをしていたのかー! 全くわからんかったーー!!

「まずは、お風呂に入って、食べられるのなら屋台でご飯を食べよう。あずさ、女の子はお前がお風呂に案内してやってくれ」

「はーーい!!」

 こうして子供達はお風呂にむかった。
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