底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
上 下
385 / 428
あずさと札幌ライフ

第三百八十五話 豚の妖精

しおりを挟む
「あ、貴方は、昇宮大臣じゃありませんか?」

 俺は賊の親玉の顔を見た。
 親玉は、微妙な表情をしている。人違いなのか?

「やばいぜ、ありゃあ残虐大臣だ! まちがいねえ」
「ああ、バレてしまったら、もうここは使えねえ」
「下手をすると捕まって全員死刑になるぜ」
「もう、ここは包囲されているかもしれねえ」
「さっさと、逃げねえと」

 どうやら、こいつらはこの賊の親玉こと、昇宮大臣が拘束の身だとは気がついていないらしい。
 いままでこの残虐大臣に、そうとう酷い目にあわされているようだ。
 なるほど、これで恐いお兄さんの反応も、この残虐大臣の表情も意味がわかった。

「あんた達、心配するな。大臣はお忍びだ」

「なんだー!」
「このデブーー!!!!」
「おい! この豚、この状況でビッビッてねえぞ!!」
「お忍びだとー!!」

 人相の悪いお兄さん達が口々に言った。

「ふふふ、俺と二人だけで来ているんだ」

「二人だと! なら、ぶち殺せるぞ!!」
「なめやがってー!!」

「おいおい、残虐大臣は一人でも滅茶苦茶強いぜ」

 今の、残虐大臣はクザンを身に付けている。
 クザンは俺がアンナメーダーマンのスーツとして作った物で、身につければ普通の人でもアンナメーダーマンになったのと同じだ。

「………………!!」

 大臣は口をパクパクやっている。
 どうやら「俺は強くねー!!」と叫んでいるようだ。

「おいてめーら、よく聞け! 残虐大臣様は、おめーらの相手は俺だけだ。ぶち殺してやるから、かかって来いとおっしゃっている」

 残虐大臣が声を出せないのをいいことに適当を言ってやった。
 残虐大臣が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。

「なにーー!! このデブー!!」
「大臣だかなんだか知らねーがぶちころしてやるーー!!」
「全員かかれーー!!」

 恐いおにーさん達が襲いかかった。

「……!!」

 残虐大臣が「ひいいいいぃぃぃーーっ!!」と悲鳴を上げているようだがその声は誰にも聞こえない。

「じゃあ大臣、後はお任せしました」

 大臣って、こいつ何の大臣だ? 後で聞こうか。
 俺は、人相の悪い人の相手は残虐大臣にまかせて、本当に気になることの方へむかおうとした。

「待てよ、てめー。逃げられると思うなー!!」

 おいおい、からんで来るんじゃねえよ。
 こっちにからんでくる奴がいる。

「ぎゃああああぁぁぁっ!!!」

 クザンが、そいつを後ろから捕まえて投げてくれた。

「……?!」

 残虐大臣の目がギラリと光った。

「うぎゃああっ!!」
「ぐえっ!!」
「ぐあぁぁっ!!」

 残虐大臣が、人相の悪い奴を次々倒していく。
 どうやら、自分が強くなっていることに気が付いたようだ。

「……、……!」

 残虐大臣が「なんだ、こういうからくりか!」とつぶやいた。

「こ、このやろー!! デブのくせにつえーぞ!!」

 次々短刀のような武器を出した。
 まあ、そんな物で傷の一つでも付けられたらいいのですけどねえ。
 でも、残虐大臣はそれを見てびびっている。
 まあクザンに任せておけば大丈夫だろう。
 俺は今度こそ残虐大臣に全てを任せて走りだした。

「赤穂さんいますか?」

 走りながら声を出した。

「はい」

 姿を消したまま、赤穂さんが走っている俺の耳元で、俺にしか聞こえないように小さな声で返事をしてくれた。

「がらの悪い、あんちゃん達の後をつけてアジトを見つけて置いてください。又、後ほどあいさつに行きますので」

「わかりました。部下につけさせます」

「はい、お願いします」





「小僧ーー!!!! てめーー!! このやろーー!!!!」

 闇市の雑踏の中で、やせて貧相な小僧が、一人のおっさんに捕まっている。
 既に数発殴られたようだ。
 鼻血を出して、目のまわりが青くなっている。
 容赦無く殴られたようだ。かわいそうに。
 手に握り飯が一つ大事そうに抱きかかえられている。

「おい、おやじさん! そのくれーで勘弁してやってくれねーか」

 俺はおっさんの振り上げた腕をつかんで話しかけた。

「うるさいんだよ!! この小僧は、俺の商品を盗んだんだ。半殺しにしてやる!!」

「これは、ゆで卵だ。これで許してくれねえか?」

 俺は、ザルに山盛りのゆで卵を出した。

「なにーー……」

 俺は、塩も出して渡してやった。
 おっさんは、その一つの殻をむくと塩をかけ口に運んだ。

「どうだ、うめえだろ」

「ふむ、全部貰っていいのか?」

 おっさんの怒りの表情が柔らかくなった。

「小僧を許してくれるのならな」

「ふん、小僧!! この豚のおっさんに感謝するんだな!」

 そう言うとおっさんは自分の握り飯の屋台へ戻って行った。
 豚のおっさんって、さりげなく悪口言っていきゃあがった。
 あの野郎!!
 小僧はうずくまって丸くなっている。
 腹の前に大事そうに握り飯を守っているのだろう。

「小僧大丈夫か?」

「……」

 小僧は汚れた顔で、目だけをこっちに向けて見てくる。
 これだけやられても、涙一つも出していない。可愛げのない小僧だ。
 まあ、泣いても何もならないことを知っている冷たい目だ。

「ふふふ、あずさを見ているみたいだなあ。どうだ小僧ケガは痛いか? 今、治してやるからな」

 俺は小僧の顔に手の平を向けて治癒の魔法を使った。
 今の俺には、あずさのおかげでこんな能力まである。

「……!?」

 声は出さないが、表情が穏やかになり驚いている。

「ふむ、どうやら。顔のケガは治ったようだな」

「ねえ、おじさん! おじさんは何者ですか?」

 なんだ、可愛い、素直ないい子じゃねえか。

「ふふふ、俺か……俺はそうだなあ、豚の妖精だ!」

「くひっ!!」

 俺の後ろで笑い声が聞こえた。
 どうやら、あずさとヒマリが後ろに来ているようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少年少女たちの日々

原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。 世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。 しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。 世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。 戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。 大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。 その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...