底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

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あずさと札幌ライフ

第三百八十五話 豚の妖精

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「あ、貴方は、昇宮大臣じゃありませんか?」

 俺は賊の親玉の顔を見た。
 親玉は、微妙な表情をしている。人違いなのか?

「やばいぜ、ありゃあ残虐大臣だ! まちがいねえ」
「ああ、バレてしまったら、もうここは使えねえ」
「下手をすると捕まって全員死刑になるぜ」
「もう、ここは包囲されているかもしれねえ」
「さっさと、逃げねえと」

 どうやら、こいつらはこの賊の親玉こと、昇宮大臣が拘束の身だとは気がついていないらしい。
 いままでこの残虐大臣に、そうとう酷い目にあわされているようだ。
 なるほど、これで恐いお兄さんの反応も、この残虐大臣の表情も意味がわかった。

「あんた達、心配するな。大臣はお忍びだ」

「なんだー!」
「このデブーー!!!!」
「おい! この豚、この状況でビッビッてねえぞ!!」
「お忍びだとー!!」

 人相の悪いお兄さん達が口々に言った。

「ふふふ、俺と二人だけで来ているんだ」

「二人だと! なら、ぶち殺せるぞ!!」
「なめやがってー!!」

「おいおい、残虐大臣は一人でも滅茶苦茶強いぜ」

 今の、残虐大臣はクザンを身に付けている。
 クザンは俺がアンナメーダーマンのスーツとして作った物で、身につければ普通の人でもアンナメーダーマンになったのと同じだ。

「………………!!」

 大臣は口をパクパクやっている。
 どうやら「俺は強くねー!!」と叫んでいるようだ。

「おいてめーら、よく聞け! 残虐大臣様は、おめーらの相手は俺だけだ。ぶち殺してやるから、かかって来いとおっしゃっている」

 残虐大臣が声を出せないのをいいことに適当を言ってやった。
 残虐大臣が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。

「なにーー!! このデブー!!」
「大臣だかなんだか知らねーがぶちころしてやるーー!!」
「全員かかれーー!!」

 恐いおにーさん達が襲いかかった。

「……!!」

 残虐大臣が「ひいいいいぃぃぃーーっ!!」と悲鳴を上げているようだがその声は誰にも聞こえない。

「じゃあ大臣、後はお任せしました」

 大臣って、こいつ何の大臣だ? 後で聞こうか。
 俺は、人相の悪い人の相手は残虐大臣にまかせて、本当に気になることの方へむかおうとした。

「待てよ、てめー。逃げられると思うなー!!」

 おいおい、からんで来るんじゃねえよ。
 こっちにからんでくる奴がいる。

「ぎゃああああぁぁぁっ!!!」

 クザンが、そいつを後ろから捕まえて投げてくれた。

「……?!」

 残虐大臣の目がギラリと光った。

「うぎゃああっ!!」
「ぐえっ!!」
「ぐあぁぁっ!!」

 残虐大臣が、人相の悪い奴を次々倒していく。
 どうやら、自分が強くなっていることに気が付いたようだ。

「……、……!」

 残虐大臣が「なんだ、こういうからくりか!」とつぶやいた。

「こ、このやろー!! デブのくせにつえーぞ!!」

 次々短刀のような武器を出した。
 まあ、そんな物で傷の一つでも付けられたらいいのですけどねえ。
 でも、残虐大臣はそれを見てびびっている。
 まあクザンに任せておけば大丈夫だろう。
 俺は今度こそ残虐大臣に全てを任せて走りだした。

「赤穂さんいますか?」

 走りながら声を出した。

「はい」

 姿を消したまま、赤穂さんが走っている俺の耳元で、俺にしか聞こえないように小さな声で返事をしてくれた。

「がらの悪い、あんちゃん達の後をつけてアジトを見つけて置いてください。又、後ほどあいさつに行きますので」

「わかりました。部下につけさせます」

「はい、お願いします」





「小僧ーー!!!! てめーー!! このやろーー!!!!」

 闇市の雑踏の中で、やせて貧相な小僧が、一人のおっさんに捕まっている。
 既に数発殴られたようだ。
 鼻血を出して、目のまわりが青くなっている。
 容赦無く殴られたようだ。かわいそうに。
 手に握り飯が一つ大事そうに抱きかかえられている。

「おい、おやじさん! そのくれーで勘弁してやってくれねーか」

 俺はおっさんの振り上げた腕をつかんで話しかけた。

「うるさいんだよ!! この小僧は、俺の商品を盗んだんだ。半殺しにしてやる!!」

「これは、ゆで卵だ。これで許してくれねえか?」

 俺は、ザルに山盛りのゆで卵を出した。

「なにーー……」

 俺は、塩も出して渡してやった。
 おっさんは、その一つの殻をむくと塩をかけ口に運んだ。

「どうだ、うめえだろ」

「ふむ、全部貰っていいのか?」

 おっさんの怒りの表情が柔らかくなった。

「小僧を許してくれるのならな」

「ふん、小僧!! この豚のおっさんに感謝するんだな!」

 そう言うとおっさんは自分の握り飯の屋台へ戻って行った。
 豚のおっさんって、さりげなく悪口言っていきゃあがった。
 あの野郎!!
 小僧はうずくまって丸くなっている。
 腹の前に大事そうに握り飯を守っているのだろう。

「小僧大丈夫か?」

「……」

 小僧は汚れた顔で、目だけをこっちに向けて見てくる。
 これだけやられても、涙一つも出していない。可愛げのない小僧だ。
 まあ、泣いても何もならないことを知っている冷たい目だ。

「ふふふ、あずさを見ているみたいだなあ。どうだ小僧ケガは痛いか? 今、治してやるからな」

 俺は小僧の顔に手の平を向けて治癒の魔法を使った。
 今の俺には、あずさのおかげでこんな能力まである。

「……!?」

 声は出さないが、表情が穏やかになり驚いている。

「ふむ、どうやら。顔のケガは治ったようだな」

「ねえ、おじさん! おじさんは何者ですか?」

 なんだ、可愛い、素直ないい子じゃねえか。

「ふふふ、俺か……俺はそうだなあ、豚の妖精だ!」

「くひっ!!」

 俺の後ろで笑い声が聞こえた。
 どうやら、あずさとヒマリが後ろに来ているようだ。
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