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夏休み編

第三百七十八話 反撃

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 確かに弾道ミサイルはある。この前処理したばかりだ。当然まだあるはずだ。
 この共和国の隊長は、それを使って人類を滅亡させろと言う。
 本気なのか?

「その方がいいと考えているのですね」

「ええ、もう充分でしょう。充分頑張りました」

 その言葉にあるのは絶望か。

「それでも皆、必死であがいて生きています」

「貴方も土方さんと同じ言い方をするのですね。なんだか土方さんと話しているようだ」

 あきれられているのだろうか?
 それとも……
 沖田隊長はなおも続けた。

「ふふふ、人はなんと、醜い生き物なのでしょうか。結局人の事を助けようと生きる者より、奪って殺す者の方が強いそんな気がします。多くの日本人のように助け合って、少ない物資を分けあって生きる者より、それを奪って生きる者の方が贅沢をしています。まあ、そうして奪っている者も又日本人なんですけどね。それが余計に情けない」

 確かになあ。
 新政府が、日本人が幸せで豊に暮らせるような行動をとってくれたら、どれだけ早く日本が再生したか。
 北海道国も政府が北海道の民の事を考えてくれたら、どれだけ豊に暮らせていたのだろうか。
 政府が搾取と略奪をして、政治家が贅沢をしている様では、絶望しか生まれてこないよなあ。
 こんな世界ならなおのこと奪われる側は、生きる希望なんてものが生まれてこねえ。
 それで、核ミサイルか。沖田隊長も又、絶望をしている一人ということか。

「沖田隊長、報告します」

 部下の兵士が走ってきて、会話に割り込んで来た。

「ええ、どうしました」

「はっ、正体不明の者達の働きで、街にいた賊達は全員捕縛出来ました」

「なっ!??? はっ八兵衛さん! あなた達は何人で来ているのですか?」

「はい、えーーとっ……」

 俺は、一人ずつ顔を浮かべて指を折り始めた。

「街には八人ニャ、姿がみえない者が追加で四人ほどいるけどニャ」

「はーーーーっ!!!! たったそれだけで……すごい!!」

「沖田隊長、街に賊がいなくなったのなら、私達は賊の本拠地へ行って来ます。それが終わったら、またご挨拶に伺います」

「は、はい。八兵衛さん、すべてお任せする事になってしまって申し訳ありません」

「いえいえ。それが、道楽のお方ですのでお気になさらずに、ではのちほど」

「ど、道楽……」

 報告に来た兵士と、沖田隊長がつぶやいた。
 声には出さないですが、口が「ご老公だ」って動いています。

「くひひひ」

 何故かアドが笑いました。

「では、アド行きましょうか!」

「ニャッ!!」

 俺達は、沖田隊長の見える範囲では人間の走れる限界の速度で、死角に入ると全力で走った。

「は、八兵衛さん!! 待って下さい」

 信さんが呼び止めてくれました。

「ああ、皆さん!!」

 目的地までの途中で追いついてしまったようです。

「ぐあああーっ!」

 途中で、アジトへ逃げ帰る賊を見つけると、退治しながら先へ進む。

「どうですか、共和国の人は?」

 走りながら、信さんが聞いてきた。

「ああ、そうですねえ。隊長の沖田という人物に会いました」

「そっ、それで????」

 女性達が全員で食いつき気味に聞いてくる。
 そ、そんなに関心があるの?

「そうですねえ。とても清らかで澄んだ心の持ち主のようです。ですが、絶望という暗い闇に覆い尽くされそうな、すごく危うい感じのする人でした」

「で、綺麗な人なのですか」

「まあ、綺麗なというか整った顔の人でしたよ。でも中性的で男か女かわかりませんでした」

「パ、パフパフはしたのですか」

 女性陣が全員で聞いてきます。
 するわけが無い、サンダーの時にさんざん怒られたばかりだ。

「していれば、『男か女か分かりません』などとは言いません」

「じゃあ、女ですね」

 そう言いながら、女性陣は信さんを見ました。
 信さんはギョッとした表情をして俺を見てきます。
 お、俺に助け船を求められても……いやなんだか意味が良くわからない。まあいいか。

「とまれーー!! 貴様らは何者だーー?」

 賊のアジトの入り口にはやはり見張りがいた。
 すぐに数人の見張りに囲まれた。
 全員一癖も二癖も有りそうな、恐ろしいひげもじゃの顔をしている。

「うるさい! じゃまだ!!」

 女性陣の機嫌が少し悪いようです。
 一瞬で囲んだ見張りが全員吹飛んだ。
 怒りのこもったきつめの攻撃で全員失神したようだ。

「いやあああああああぁぁぁぁーーーーー!!!!」

「ひゃあはははははーーーー!!!!」

「きゃあああぁぁぁぁーーーー!!!!」

「うひゃはははははははーーっ!!!!」

 外から明かりの見える広い部屋から、悲鳴と笑い声が続く。
 どうやら、中では狂乱の宴が始まっているようだ。
 やっぱり、あずさとヒマリを連れてこなくてよかった。
 きっと見せられないような事が行われているにちがいない。

「おおーーっ、帰ったのかーー!! 食い物はいつも通り倉庫へ! 女はそのままこっちへ運んでこい!! ひゃあはっはっはーー!!」

「やめてぇぇぇぇーーーー!!!!」

 その間も女性の悲鳴と男達の笑い声がやむことはなかった。

「やめないかーー!!!!」

 信さんがたまらず突っ込んで行ってしまった。
 その後ろを、スケさんとカクさんが素早く追いかけた。
 女性陣は、耳を覆って硬直している。
 きっと、中で行なわれていることを想像して、動けなくなったのだろう。

「貴様らは、何者だーー!! くそう、見張りはどうした。であえーーであえーー!! くせ者だーー!! 叩き殺せーー!!!!」

 一番太った男が慌てて声をあげた。
 武装した男達がドタドタ音をたてて走ってくる。

「皆は、女性達を介抱してやってくれ、賊共は俺達男に任せてくれ」

 久々に俺はやる気を出して、声のする方へ歩き出した。
 きっと、俺の後ろ姿には、湯気のようなオーラが何本も立ちのぼっていることだろう。
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