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九州激闘編

第三百六十四話 復讐に燃える男

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 アンナメーダーマンが、足を止めて左足を前に出しました。
 力強く踏みしめると、ズンと地面に震動が走ります。
 足のまわりに丸く、空気のゆらぎのような物が見えます。
 ゆらぎは、円を描きながら広がります。それがさっきの風より強い風に変わり、新政府軍と私達を襲います。

 ――こ、これは!?

 いけません。またパンチラです。さすがにしつこいです。
 私は、後ろを振り返り美女軍団を見ました。
 全員スカートを押さえ、普通にスカートがバサバサ風に揺れているだけです。

 ――えっ!!

 どうやら、見せる気が無いようです。
 アンナメーダーマンが背中を向けているので、見てもらえないから?
 そんな気がします。こ、この人達……。
 あっ、私も押さえて見えない様にしています。と言う事は無意識のようですね。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 先頭集団が、アンナメーダーマンに襲いかかります。
 アンナメーダーマンは、体をひねり右手を目一杯後ろに下げて、手の平を広げたまま立てて構えています。
 その力を貯めた状態から一気に解放しました。

 まるで巨大な滝が、滝壺に落ちていくような音がします。
 最初に吹飛ばされた人が、後ろの人を巻き込み次々将棋倒しになっていきます。
 アンナメーダーマンを中心に扇のように新政府軍の兵士が倒れていきます。
 新政府軍はアンナメーダーマンのたった一撃で足を止め静まり返りました。

「な、なんだ、あの力は……」

 拘束されている、隊長二人が同時に言いました。
 目が見開かれ、唇が微かに震えています。
 一体何人倒れているのでしょうか。
 先頭を走っていた人達が全員、ものの見事に倒れています。
 その中から、四人の男がユラユラ立ち上がりました。

「あっ、馬鹿野郎!!」

 隊長二人が叫びます。
 どうやら、副隊長はタフなためすぐに立ち上がれたようです。
 でも、おかげですぐに副隊長とわかってしまいました。
 もう少し倒れていればいいのに。本当に馬鹿野郎ですね。
 アンナメーダーマンは素早く近づくと、四人のえり首をつかみ次々こちらに投げ飛ばしました。

「スケさん、カクさん、副隊長です。拘束して下さい!」

「はっ!」

 四人の副隊長も隊長の横に拘束されてしまいました。
 六番隊と七番隊の最高幹部六人が捕まりました。
 新政府軍は動く事が出来ず。静まり返っています。

「スケさん、副隊長を一人解放してやって下さい」

「よ、よろしいのですか?」

「大丈夫です。その前に全員、変身しておいてください。そうすれば、副隊長程度では勝つ事が出来ないでしょう」

「なっ!?」

 六人が驚いています。

「オイサスト! シュヴァイン!!」

 全員が変身をしました。

「おおっ、へ、変身した!!」

 隊長二人が驚いています。
 この時、美女軍団の下着姿がチラチラ見えましたが、もういいですよね。

「ふふふ、そこの青い人達は、全員アンナメーダーマンです。あなた達よりも強いですよ。何しろ、あの桜木と戦っても負けないように設計されていますからねえ。試してみますか?」

 アンナメーダーマンは視線をゆっくり隊長達の端から端まで動かしました。

「スケさん、いいですよ。解放してください」

「はっ!」

「じゃあ、副隊長さん、撤退の命令をしてください! そして、五番隊にも負けた事を伝えてください!」

「てめーに言われた通りになどすると思うのか?」

 拘束具を外された手首をさすりながら、副隊長がアンナメーダーマンをにらみ付けます。
 まだ戦う気のようです。馬鹿なのでしょうか。
 ゆっくり、自軍へ歩いて行きます。

「そうか、いいだろう。だが、ここからは戦う相手は俺じゃねえぞ。常久ーー!!!! 待たせたな」

「……!?」

 常久様が突然ふられて驚いて固まっています。

「ふふふ、この常久は、安東常久、おめー達に家族を殺されて復讐に燃えている男よ! わかるだろう、んっ、どうだ? 具足をつけている男達は全員、青いアンナメーダーマンより強いぞ!! この男達にお前らを追わせる。わかるか? さっさと逃げた方が身のためだと思うがなあ」

「ふっ、ふっ、ふっ」

 常久様が、笑い顔ですが興奮している為、鼻から息が漏れています。前に進みながら、マボリ隊長の三間槍を拾い上げると、それを頭上に上げて回し始めました。

 織田軍自慢の三間槍は鋼鉄製で、長く重いため普通の人は二人でしか扱えません。
 それを一人で軽々持ち、そして、とうとう片手になりました。
 高速で回る槍は、もう目で追う事が出来ません。

「うおおーー!!!!」

 常久様が気合いと共に、頭上で止めた槍を上段から一気に振り降ろしました。

 ビョオオオオォォォォーーーーーー

 風が、新政府軍の中に吹き込みます。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 その槍が、一人だけ解放された副隊長の頭上、1ミリの所で止められました。
 副隊長は、ペタンと腰が抜けたように道路に座り込んでしまいました。

「どうやら、常久の一撃の威力は理解出来た様だな」

 アンナメーダーマンは、副隊長から新政府軍の兵士達に視線を移しながらいいました。
 そう言えば、既に姿はアンナメーダーマンですが大殿になっていますよ。

「いくぞおぉぉぉぉーーー!!!!!!」

 常久様は槍を頭上に持ち上げ、新政府軍に向って走り出しました。

「ひっひぃぃぃーーーーーー!!!!」

 新政府軍の兵士から悲鳴が上がります。

「まてーっ!!」

 アンナメーダーマンが手を横に伸ばします。

「はっ!」

 常久様はすぐに止まりました。
 まるで、打ち合わせをしていたようにタイミングぴったりです。
 まあ、止められると分かっていたのでしょう。
 うふふ、常久様の配下の方が次々常久様の後ろに整列します。
 真っ黒の具足は、威圧感がありすぎですね。
 新政府軍は全員恐怖に打ち震えています。

「ふふふ、常久。俺は、お前さんの家族を守ってやれなかった。なさけねえ、許してくれ。常久の心を思うと居たたまれねえ。だがよう、今の日本は法治国家じゃねえ。恨みは自分の手で晴らしてもいいわけだ。やった犯人は目の前にいる。存分に恨みを晴らしてくれ。昔のように、赤の他人が被害者の気持ちも考えねえで、軽い刑罰を言い渡す事がねえんだ。とことん納得がいくまでやったらいい」

 大殿の言葉に、常久様の目から大量の涙があふれ出しました。
 そして、鼻から口から大きく息を吸いました。

「おおおおーーーーーっ!!!!! 全軍、目の前の新政府軍を皆殺しだーーーーー!!!! 一人も生きて返すなーー!!!!!」

「ま、まってくれ。い、いや。ま、待ってください!!!!」

 どうやら、やっと副隊長さんの心が折れたようです。
 姿勢を正し、頭を下げています。
 腰が抜けて尻もちをついた姿勢からなので、自然と土下座に成っています。
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