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九州漫遊編
第三百四十話 都城萩原川の戦い
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伊藤義祐殿の正規軍が来たのは、それから七日後だった。
総勢は五千人程。結構多いなあ。
「うおっ!? な、なんだあれは? なんなんだあれわぁーー!!」
「ふふふ、余りにも遅いから、出来てしまったわ」
久美子さんが、川を越えたところに作った楼閣の上で伊藤軍を見下ろしながら言った。
当然、敷地内には天守閣も作ってある。
大阪城に比べればミニチュアサイズだ。ただのお飾りだ。
宿舎の上にのっけた。
そして城壁も全体を包むほどには完成した。
異世界金属の節約のため、すべてサスリル製の銀色の金属製だ。
伊藤軍の二人の将が、部隊の中に入ると兵をかき分け前に進んできた。
「嘘だろ、城が出来ている。城壁まで……」
伊藤軍がザワザワしている。
「えーーっ!? 忠朗! あんた達何しに来たのーー!?」
久美子さんが驚いている。
どうやら島津家久隊が千五百人弱で伊藤隊の右翼にいるようだ。
家久隊はすでに島津家久が薩摩に帰っているので、伊集院忠朗が隊長として率いて来たのだろう。
その伊集院率いる家久隊が伊藤家の援軍として参加しているということか。
「うおおーーっ!! おおと……」
伊集院は俺の姿を見るとうれしそうに大殿と言おうとしたようだ。
「しっ!」
久美子さんが口の前に人差し指を立てて黙らせた。
「賊が新都之城に立てこもったので、討伐に協力してほしいと言われたので、食糧の恩もありましたので参加いたしました」
「じゃあ、そのまま伊藤軍として戦いなさい。相手は私がいたします」
「ふぇっ!?」
伊集院殿は、驚いた表情をしたあとに、何を思ったのかニヤリと笑った。
そして、部隊の一番後ろに下がった。
さすがは島津家で一軍を預かる将だ、不敵な面構えをしている。
「オイサスト! シュヴァイン!」
変身の声がした。
楼閣の下には門があり、その門から二人の女性アクアが出て来た。
ユウ様とサッチンだ。
「しょうが無いなあ」
「しょうが無いわね」
「オイサスト! シュヴァイン!」
後を追うように、スケさん、カクさん、ケンさん、そして久美子さんが変身をし、門の前に出た。
「八兵衛!! 後は任せます!!」
「はっ!! 仰せのままに」
「なんだ、貴様ら兵士はどうした?」
義祐殿が怒りをあらわにした。
「ふふふ、六人もいるじゃ無いですか。先日は五人でしたから一人増えています」
俺は、久美子さんにかわって楼閣の上から答えた。
「な、なにーーっ!! 尺樽!! 賊に襲われて城を奪われたと言ったが、たった五人だったのか。たった五人に負けたのかーー!!!!」
義祐殿が代官を怒鳴りつけた。その顔は真っ赤になり、まるで茹でだこだ。
尺樽と呼ばれた代官は、恐れおののいている。
さすがは猛将鬼伊藤義祐殿だ。恐ろしい風貌だ。迫力がある。ちょー恐ー。
しかし、代官の奴、シャダルという名前か。ナカキュウといい九州の人は独特の名前が多い。
そう考えていたら、俺の肩をミサがチョンチョンとつついてきた。
顔をみたら、首を振った。
どうやら、何かが違うようだ。
そうか、ナカキュウは九州じゃ無いかもしれない。
たぶん、大阪かな、そう言う事だろう。
「そそそ、そんなに怒らないで下さい。あああああ、あなた方は、いい、今からその六人に、やややや、やられるのですから」
俺は恐さにおびえながら、それを微塵も見せずに言ってやった。
「な、なっにーーーっ!!!! きっ、きさまーー、なめるなーー!!!!フーーッ! フーーーーッ!!!!」
荒々しい呼吸音がここまで聞こえる。
伊藤義祐殿も部隊の一番後ろに下がる。
「祐筆の方は同行していますか? ちゃんと記録して下さいね。伊藤家五千がたった六人に敗れる歴史的敗北を」
「ぐぬぬぬ、おのれー!! 言わせておけばー! このくそ豚ーー!!!! 全軍、あのくそ豚を捕まえて丸焼きにしろーー!!!!!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!!!」
伊藤軍が、楼閣に向って突進してきた。
「あわわわ」
伊集院は俺の事を豚と呼んだ伊藤殿の顔を見つめて慌てている。
「あのー、いつ行ったらいいのですか?」
ユウ様が楼閣を見あげ聞いてきた。
「い、今でしょう」
ほ、本当にわからないのかー?
「そうですか。では、参ります。ラーラララーー!!」
歌いながら、フィギュアスケートのように回転しながら、伊藤家の兵士の中に突っ込んだ。そして両手を広げる。
「うぎゃあああああぁぁーーーーーー!! どわあああああぁぁーーーーーーーー!!!!!」
恐ろしい数の悲鳴が上がった。
まるで雑草を刈る草刈機のように次々兵士を刈り取っていく。
なんだか、伊藤家に深い恨みがあるように見える。
「ラーラララーーー!!!!」
あっ、サッチンまで……。
サッチンはすぐにやめてしまった。
「どうしたのですか?」
ケンさんが駆け寄って背中をさすっている。
「ぎもじわるーい!」
どうやら、目が回って吐きそうになっているようだ。
だめだこりゃあ!
「島津軍! 私が相手になってあげるわ。遠慮しないでかかってきなさい!!」
こっちでは、伊集院忠朗率いる島津家久隊と久美子さんの戦いが始まった。
久美子さんは挑発するように、手を伸ばし手のひらを上にすると、クイクイと手を曲げた。
「敵は鬼姫だ! 遠慮はいらない、ぶちかませーー!!!!」
「おおおおーーーーーっ!!!!」
島津軍が、久美子さんに突進する。
島津軍も本気だ。
おいおい、姫様に恨みでもあるのかよう。
全力疾走で久美子さんに襲いかかる。
総勢は五千人程。結構多いなあ。
「うおっ!? な、なんだあれは? なんなんだあれわぁーー!!」
「ふふふ、余りにも遅いから、出来てしまったわ」
久美子さんが、川を越えたところに作った楼閣の上で伊藤軍を見下ろしながら言った。
当然、敷地内には天守閣も作ってある。
大阪城に比べればミニチュアサイズだ。ただのお飾りだ。
宿舎の上にのっけた。
そして城壁も全体を包むほどには完成した。
異世界金属の節約のため、すべてサスリル製の銀色の金属製だ。
伊藤軍の二人の将が、部隊の中に入ると兵をかき分け前に進んできた。
「嘘だろ、城が出来ている。城壁まで……」
伊藤軍がザワザワしている。
「えーーっ!? 忠朗! あんた達何しに来たのーー!?」
久美子さんが驚いている。
どうやら島津家久隊が千五百人弱で伊藤隊の右翼にいるようだ。
家久隊はすでに島津家久が薩摩に帰っているので、伊集院忠朗が隊長として率いて来たのだろう。
その伊集院率いる家久隊が伊藤家の援軍として参加しているということか。
「うおおーーっ!! おおと……」
伊集院は俺の姿を見るとうれしそうに大殿と言おうとしたようだ。
「しっ!」
久美子さんが口の前に人差し指を立てて黙らせた。
「賊が新都之城に立てこもったので、討伐に協力してほしいと言われたので、食糧の恩もありましたので参加いたしました」
「じゃあ、そのまま伊藤軍として戦いなさい。相手は私がいたします」
「ふぇっ!?」
伊集院殿は、驚いた表情をしたあとに、何を思ったのかニヤリと笑った。
そして、部隊の一番後ろに下がった。
さすがは島津家で一軍を預かる将だ、不敵な面構えをしている。
「オイサスト! シュヴァイン!」
変身の声がした。
楼閣の下には門があり、その門から二人の女性アクアが出て来た。
ユウ様とサッチンだ。
「しょうが無いなあ」
「しょうが無いわね」
「オイサスト! シュヴァイン!」
後を追うように、スケさん、カクさん、ケンさん、そして久美子さんが変身をし、門の前に出た。
「八兵衛!! 後は任せます!!」
「はっ!! 仰せのままに」
「なんだ、貴様ら兵士はどうした?」
義祐殿が怒りをあらわにした。
「ふふふ、六人もいるじゃ無いですか。先日は五人でしたから一人増えています」
俺は、久美子さんにかわって楼閣の上から答えた。
「な、なにーーっ!! 尺樽!! 賊に襲われて城を奪われたと言ったが、たった五人だったのか。たった五人に負けたのかーー!!!!」
義祐殿が代官を怒鳴りつけた。その顔は真っ赤になり、まるで茹でだこだ。
尺樽と呼ばれた代官は、恐れおののいている。
さすがは猛将鬼伊藤義祐殿だ。恐ろしい風貌だ。迫力がある。ちょー恐ー。
しかし、代官の奴、シャダルという名前か。ナカキュウといい九州の人は独特の名前が多い。
そう考えていたら、俺の肩をミサがチョンチョンとつついてきた。
顔をみたら、首を振った。
どうやら、何かが違うようだ。
そうか、ナカキュウは九州じゃ無いかもしれない。
たぶん、大阪かな、そう言う事だろう。
「そそそ、そんなに怒らないで下さい。あああああ、あなた方は、いい、今からその六人に、やややや、やられるのですから」
俺は恐さにおびえながら、それを微塵も見せずに言ってやった。
「な、なっにーーーっ!!!! きっ、きさまーー、なめるなーー!!!!フーーッ! フーーーーッ!!!!」
荒々しい呼吸音がここまで聞こえる。
伊藤義祐殿も部隊の一番後ろに下がる。
「祐筆の方は同行していますか? ちゃんと記録して下さいね。伊藤家五千がたった六人に敗れる歴史的敗北を」
「ぐぬぬぬ、おのれー!! 言わせておけばー! このくそ豚ーー!!!! 全軍、あのくそ豚を捕まえて丸焼きにしろーー!!!!!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!!!」
伊藤軍が、楼閣に向って突進してきた。
「あわわわ」
伊集院は俺の事を豚と呼んだ伊藤殿の顔を見つめて慌てている。
「あのー、いつ行ったらいいのですか?」
ユウ様が楼閣を見あげ聞いてきた。
「い、今でしょう」
ほ、本当にわからないのかー?
「そうですか。では、参ります。ラーラララーー!!」
歌いながら、フィギュアスケートのように回転しながら、伊藤家の兵士の中に突っ込んだ。そして両手を広げる。
「うぎゃあああああぁぁーーーーーー!! どわあああああぁぁーーーーーーーー!!!!!」
恐ろしい数の悲鳴が上がった。
まるで雑草を刈る草刈機のように次々兵士を刈り取っていく。
なんだか、伊藤家に深い恨みがあるように見える。
「ラーラララーーー!!!!」
あっ、サッチンまで……。
サッチンはすぐにやめてしまった。
「どうしたのですか?」
ケンさんが駆け寄って背中をさすっている。
「ぎもじわるーい!」
どうやら、目が回って吐きそうになっているようだ。
だめだこりゃあ!
「島津軍! 私が相手になってあげるわ。遠慮しないでかかってきなさい!!」
こっちでは、伊集院忠朗率いる島津家久隊と久美子さんの戦いが始まった。
久美子さんは挑発するように、手を伸ばし手のひらを上にすると、クイクイと手を曲げた。
「敵は鬼姫だ! 遠慮はいらない、ぶちかませーー!!!!」
「おおおおーーーーーっ!!!!」
島津軍が、久美子さんに突進する。
島津軍も本気だ。
おいおい、姫様に恨みでもあるのかよう。
全力疾走で久美子さんに襲いかかる。
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