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九州漫遊編

第三百三十九話 新都之城占領

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 国道を進むと、萩原川にかかる橋が見えてくる。
 橋の手前には左手に、目立つグルメの店がある。
 どうやら焼き肉バイキングもやっていた店のようだ。
 だが、食べ物のある建物は荒らされている。
 ここもボロボロの、なにやら出そうな廃墟になっている。

 橋を進むと左手に百円ショップの廃墟、そして右手に新都之城が見えて来た。
 川を天然の堀とするため、中州側の土手の草を刈り土木工事をしている。
 ご丁寧に、お代官様は橋の上で待っていてくれたようだ。
 橋にはかがり火が焚かれ、オレンジ色に揺れている。
 まだ日の出には早いため、かがり火の向こうは真っ暗闇だ。

 道幅は十メートルと無いのだが、そこに千人近くの兵士がいる。

「き、貴様らーーー!!!! 遅いぞーーー!!!!」

 お代官様は、ご機嫌斜めのようだ。
 ずいぶん前に用意が終わっていたようだ。

「あら、お出迎えですか? お城にこもって震えているのかと思いましたのに失礼しましたわ」

 久美子さんは、そう言うと可愛い下をペロリとだした。

「ぐぬぬぬ!! 言わせておけばーー!! かまわねーー、全員でぶち殺せーー!!」

「おおおおーーーーっ!!!!」

 千人とはいえ、二十メートル足らず前にいるだけの男達の喊声はすさまじく大きかった。
 橋の欄干までビーンと共鳴している。

「スケさん、カクさん、ケンさん! 三人で大丈夫ですか?」

 久美子さんが三人に聞いた。

「むろん!!!」

 三人の目が興奮のためか、それともかがり火の揺らめきのせいか、ユラユラとあやしく光った。

「では、お任せします」

 橋の上は、大きく回り込まれる心配も無く、むしろ少数で戦うこちらとしては戦いやすい。

「オイサスト!! シュヴァイン!!」

 三人はアクアスリーに変身すると、静かに素早く走りだした。

「な、な、な、なんじゃ!?」
「へ、変身したーー!!!!!!」

 敵兵も驚いているが、ユウ様が一番驚いている。

「さ、最近の黄門様は、スケさんとカクさんが変身するのか?」

 ユウ様が両目を見開いて、三人の後ろ姿を見つめつぶやいた。
 もう、俺は何と返事をして良いかわかりません。
 この質問が聞こえたのか、スケさんとカクさん、そしてケンさんがガタガタ震えだした。

「ぎゃーーはっはっはっはーーーーー!!!」

 橋の上で、腹を抱えて笑い出した。
 どうやらつぼに入ったらしい。
 たちまち敵兵に囲まれて、めった打ちになっている。おいおい。
 横を見たら。うちの美女軍団も大うけだ。
 久遠さんも大きな口を開けて笑っている。
 俺はそれを見て、何だか安心してにっこり微笑んだ。

「はあーーっはっはっーーーー!! 馬鹿め勝ったぞーー!! どんどん、どんどん、ぶったたけーー!!!! ぶち殺せー!!」

 どうやら代官様は勝ちを確信したようだ。

「た、た、た、大変じゃーーー!! スケさんとカクさんが死んでしまったーーー!!! わしのせいじゃ! また、わしのせいじゃーーー!!!!」

 んっ「また、わしのせい」って、前にもこんなことがあったのかな。
 ユウ様が、泣きそうな顔をして頭を抱えた。

「ふふふっ、安心して下さい。こんなこともあろうかと、スケさんもカクさんも変身したのです。あーっ、ケンさんも……」

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 三人の笑いが収まると、押さえ込んでいた兵士達が宙に高く浮いた。
 三人はまわりに空間が出来ると、次々掌底で吹飛ばしていく。
 まるでボーリングのように、飛ばされた兵士が、別の兵士を巻き込みながら倒れていく。

「な、な、な、なんなんだ!! なんなんだ!!」

 その光景を見たお代官様の目玉が少し前に飛び出している。

「ま、まさか。スケさんとカクさんは、変身すると強くなるのか?」

 ユウ様が言った。

「そ、そうですね。でなければ変身をする意味がありません。ついでにケンさんも変身で強くなります」

 俺は、少しあきれながら答えた。

「なるほどのう」

 ユウ様の目があやしく光った。
 嫌な予感しかしない。

「オイサスト! シュヴァイン! ……あれ? オッ、オイサスト! シュヴァイン! おかしいぞよ八兵衛!! 変身出来ない??」

 そりゃあそうだろう。
 出来るわけが無い。
 むしろ、なんで変身出来ると思ったーー!?

「オイサスト! シュヴァイーーーーーン!!!!!!」

 くそう、耳元でうるさい。
 面倒なので、変身させてやった。

「おお、八兵衛! わしはアクアの才能があったようじゃ。わしも行って来る」

「あっ!! おいっ!!」

 ユウ様はアンナメーダーマンアクアの装備になると、兵士達の間に入って戦いを始めた。

「えーーーーっ!!」

 ユウ様の御供のサッチンが驚いている。
 嫌な予感しかしない。

「オ、オイサスト! シュヴァイン!!」

 サッチンまで言いだした。
 やれやれだぜ。
 俺はサッチンも変身させてやった。
 サッチンは小躍りして敵兵の中に飛び込んで行った。
 全く九州の人は戦闘狂がおおいのかー?
 本当にやれやれだぜ。

「き、貴様らーー!!!! ひ、卑怯だぞ!! 三人でも勝てないのに二人も追加するとは、何を考えているのだーーーー!!!!」

 ケンさんに首根っこをつかまれて、お代官様が連行されてきた。

「はあぁーーっ!?」

 俺はため息が出た。
 まあ、パンツがどうとか言わないだけましか。

「呆れてものがいえん!! パンツをちらちらさせたら、負けるに決まっている。こんな卑怯な戦い方は見た事が無い! この卑怯者めーーーー!!!! 恥をしれーーー!!!!」

 あぁーーっ、やっぱ言いやがった。
 しかも唾をピッピコ、ピッピコ飛ばしながら言いやがるから汚えんだよ。

「久美子様。これで城の兵士も全員倒しました」

 スケさんと、カクさんが城の守備兵も全員道路に連れ出してくれた。

「では、新都之城を頂いておきましょう。お代官様、私達はこのお城でのんびり、くつろいでいます。…………」

「くそう!! それがどうした!!」

「さっさと、殿様の元へ行き、全軍で取り返しに来いって、伝えなさいって言っているんですよ!!!!」

 久美子さんが、代官にいい加減切れたのか少し乱暴に言った。

「なっ、なにーーっ!! くそっ!! おっ、おぼえていろよーーーー!!!! てめー達いつまで寝てるんだー!! 行くぞー!!」

 まわりに倒れている兵士の頭を叩いている。
 所々に、ユウ様とサッチンに倒されて死にそうな兵士がいるので、それだけは歩けるぐらいまで治癒しておいた。
 まあ、二人とも初めてにしては、ちゃんと手加減してうまく戦えていたほうだと思う。所でユウ様って、何もんなんだろう?

「しかし、これだけやりましたから、仕返しには来なかったりして」

 久美子さんが言いました。

「いいえ。おにぃ……鬼伊藤義祐様は絶対来ますよ。なめられて放って置ける方ではありません」

 ユウ様が言いました。
 なにやら、伊藤義祐殿について詳しいようです。

「そ、そうですか。大丈夫でしょうか?」

 久美子さんが心配そうに言った。

「ひゃはははーー、心配には及ばないじゃろう。このアクアさえあれば、負けるわけが無い。殺さないようにするのが大変じゃった。ふふふ、まるで人がゴミのようじゃった」

「本当に!!」

 二人が、晴れ晴れとした美しい笑顔で微笑んだ。
 おーーい、ユウ様とサッチン!!
 だれかー、この二人をなんとかしてくれーー!!
 すごく恐ろしいのですけどー。
 俺はもしかして、してはいけない大変な事をしてしまったような、そんな後悔の念に襲われている。
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