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激闘編
第二百八十九話 北海道では
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「赤穂様、帯広が陥落しました。北海道国軍は帯広で乱取りを始めました」
私は釧路の郊外で防衛戦の準備をする解放軍の様子を監視しています。
そこへ帯広の様子を見てきた部下が報告を持って来ました。
「そうですか。詳細を教えて下さい。ゲン様と伊達様に報告しましょう」
「失礼します。古賀忍軍、に組、組頭赤穂です」
「おお、赤穂さんか、どうしたんだ。入ってくれ」
ゲン様が答えてくれました。
ここは釧路市街の目立たない廃墟ビルの作戦司令部です。
すでに木田家のゲン様、伊達様の部隊は姿を消して、釧路の郊外に布陣する解放軍の後方に、気付かれないように布陣しています。
どうやら解放軍が負けることを想定しているようです。
「帯広が落ちました」
「そうか……。意外と時間がかかったなあ。それで釧路へはスグに来そうなのか?」
「そ、それが、まだしばらくかかりそうです」
「まさか!!」
伊達様が驚きの声を出しました。
「はい」
私はそれだけ言って顔を伏せました。
ゲン様はどんなときも表情を変えませんが、伊達様は歯を食いしばり怒りの表情です。
「まずは戦闘の状況を、詳しく教えてください」
伊達様が、落ち着こうと拳に力を込めながら丁寧に言いました。
「は、はい。それについては、古賀忍軍に組一班班長カモンが報告します」
「うむ、頼む」
「はい、北海道国軍と解放軍は帯広の西で対峙しました。解放軍は塹壕を掘り、北海道国軍を準備万端迎え撃ちました。装備と人員に劣る解放軍でしたが、地の利を生かして良く戦いましたが、戦車の大量投入をした北海道国軍に中央を突破され、総崩れになりました」
「ふむ、戦車か」
ゲン様がぼそりとつぶやきます。
「大殿が聞いたら喜びそうですなあ」
伊達様がつぶやきました。
「それで、街の様子は?」
「はい。弾薬を節約するために戦車による破壊はされていませんが、兵士だけでは無く住民にまで牙をむいています」
「人間の本性が、そういうものだとは思いたくは無いがそうなったか」
げん様が言います。
「旧日本軍には、住民を大切にした部隊もあったと聞いたことがありますが、北海道国軍はそうきましたか」
伊達様は第二次世界大戦の事を勉強したのでしょうか。
日本軍の事を持ち出しました。
「教えてくれカモンさん。いまから行ったら助けられるのか?」
「いいえ、いいえ」
カモンは首を激しく振ります。
目に涙が溜まっているようにも見えます。
「ふむ。わかった。だが、これで俺の腹は決まった。伊達!!」
「はい」
「木田家北海道方面軍は、釧路守備をする解放軍が敗退した場合には、釧路市民を守るため盾となる」
「はっ!」
「明日、戦うのは俺と伊達の二人だけだ!!」
「えっ!?」
「ゲン隊も伊達隊も盾として、壁のように街への道路をふさぎ、戦うのは俺とお前だ」
「ほ、本気ですか? 敵は戦車ですよ」
「こっちは機動陸鎧だ!」
「は、はあ」
伊達様は、何を言っても無駄と諦めて気のない返事をしました。
「赤穂さん、解放軍の布陣は?」
「はい、海岸線からの進入路は橋を落としてふさぎ、北からの侵入を想定し塹壕を作っています」
この後、私達は持ち場へ戻りましたが、ゲン様と伊達様、松田様は夜更けまで話し合っていたようです。
数日後、北海道国が国道を行軍してきました。
前回の戦いでは戦車を温存していましたが、今回は最初から前面に出してきました。
解放軍には二両の戦車がありますが、北海道国軍は十両以上の戦車で来ています。
北海道国軍は全軍がそろうと、戦車が火を噴きました。
これで、解放軍の戦車が沈黙しました。
「わあああああーーーーーーー!!!!」
それを合図に総攻撃が始まりました。
あちこちで、戦車の砲撃の爆発が起ります。
解放軍にはすでに、戦車に対する有効な武器が無いようです。
銃撃は続けていますが、戦車を止めることが出来ません。
「もはやこれまでだーー!! 全軍てったーーい!!」
撤退の大音声が響きました。
「一人も逃すなーー!! ぶちころせーーー!!!!」
北海道国軍の大将の声が響きます。
釧路市市街地方向から二人の機動陸鎧が飛んできました。
赤い機動陸鎧は天夕改です。ゲン様の指揮官専用機です。
緑の機動陸鎧は天竜で指揮官機は独眼竜の固有名を持つ伊達様専用機です。
「まてーーーい!!!!」
ゲン様の声が響きます。
「な、なんだ。あれは? ちっ、かまわねえ。戦車隊攻撃しろー!!」
戦車が火を噴きました。
それを、二人は素早い動きでかわします。
「おいおい、聞かねえかーー!」
ゲン様が怒鳴ります。
「やかましーー!!」
敵大将は聞く気無しです。
「伊達、しょうがねえ。一暴れだ」
「おおーーーっ!!」
伊達様は返事をすると、一気に間合いを縮めると一つ目の戦車の砲塔の下に入りました。
「はあーーはっはっはっ!!!! ゲンさんこれなら、俺一人でも行けそうです」
そう言うと、戦車の砲塔を曲げてしまいました。
「馬鹿野郎!! 調子に乗るんじゃねえ!!」
ゲン様が言った瞬間、伊達様の独眼竜に砲撃が直撃しました。
爆音が響きます。
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!! やられたーーー」
「言わんこっちゃねえ!! 馬鹿野郎!!」
「うおおおおおーーーーー!!!! やったぞーーー!!」
敵兵から歓声が上がります。
一撃当たると、独眼竜に次々と10式戦車の砲弾が直撃します。
煙で独眼竜が見えなくなりました。
「馬鹿が!!」
ゲン様の赤い天夕改が次々戦車を行動不能にします。
すでに五両が沈黙しました。
「うおおおーーーー!!!! なんだ、なんなんだあれはーー!? すげーーっ!!!!」
撤退中の解放軍が気付き足を止めて天夕改に見入っています。
「かっけーーロボだー!! ロボが助けに来てくれたぞーー!! 赤いあれみてーだ!!」
解放軍の兵士が子供のように、はしゃいでいます。
赤いあれって、なんですかー?
「み、見ろ!! あれをーー!!」
解放軍の何人かの兵士が言いました。
「す、すげーーー!!!! すげーーぞこっちも!!!! こっちのロボもすげーー!!」
視線の先は緑の独眼竜が直撃を受けた場所です。
真っ白に煙っていた独眼竜の姿が薄ら見えてきました。
直撃でバラバラに壊れているのかと思いましたがなんと無傷です。
「おい!! いつまで休んでやーがるんだ!! 馬鹿野郎!! さっさと仕事をしねーか!!」
「あーーはっはっはっ!! びっくりしたーー! 死んだかと思ったー!」
「て、てめーら、なにぼさっとしているんだ! 撃てー撃たねーか!!」
敵の大将が、近くの兵士の頭を叩いています。
口をポカンと開けて見とれていた兵士が、慌てて銃撃を始めました。
敵の戦車の砲撃と、銃撃の雨の中を二人の機動陸鎧が機敏に動きまわります。
敵の攻撃はかなり命中していますが、何事も無いように移動して戦車を破壊していきます。
戦車が最後の一両になるとゲン様は、敵の大将の前に移動して仁王立ちになりました。
「てめーら、何をしている。撃てーー、撃つんだーー!!!!」
至近距離の銃撃は全弾命中します。
ですがそれは、天夕改に傷一つ付けません。
それどころか跳弾が、自分たちに飛んできます。
「うわっわっわっわ! ばっ、ばっかやろーーー!!!! 何をしている!! やめねーか!! あぶねーだろーがー!!」
銃撃が止まると、最後の戦車を壊した独眼竜が、天夕改の横に並び腕を組みました。
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」
解放軍からやんやの喝采が上がりました。
「さて、話を聞く気になったか?」
ゲン様の静かな声が聞こえてきました。
私は釧路の郊外で防衛戦の準備をする解放軍の様子を監視しています。
そこへ帯広の様子を見てきた部下が報告を持って来ました。
「そうですか。詳細を教えて下さい。ゲン様と伊達様に報告しましょう」
「失礼します。古賀忍軍、に組、組頭赤穂です」
「おお、赤穂さんか、どうしたんだ。入ってくれ」
ゲン様が答えてくれました。
ここは釧路市街の目立たない廃墟ビルの作戦司令部です。
すでに木田家のゲン様、伊達様の部隊は姿を消して、釧路の郊外に布陣する解放軍の後方に、気付かれないように布陣しています。
どうやら解放軍が負けることを想定しているようです。
「帯広が落ちました」
「そうか……。意外と時間がかかったなあ。それで釧路へはスグに来そうなのか?」
「そ、それが、まだしばらくかかりそうです」
「まさか!!」
伊達様が驚きの声を出しました。
「はい」
私はそれだけ言って顔を伏せました。
ゲン様はどんなときも表情を変えませんが、伊達様は歯を食いしばり怒りの表情です。
「まずは戦闘の状況を、詳しく教えてください」
伊達様が、落ち着こうと拳に力を込めながら丁寧に言いました。
「は、はい。それについては、古賀忍軍に組一班班長カモンが報告します」
「うむ、頼む」
「はい、北海道国軍と解放軍は帯広の西で対峙しました。解放軍は塹壕を掘り、北海道国軍を準備万端迎え撃ちました。装備と人員に劣る解放軍でしたが、地の利を生かして良く戦いましたが、戦車の大量投入をした北海道国軍に中央を突破され、総崩れになりました」
「ふむ、戦車か」
ゲン様がぼそりとつぶやきます。
「大殿が聞いたら喜びそうですなあ」
伊達様がつぶやきました。
「それで、街の様子は?」
「はい。弾薬を節約するために戦車による破壊はされていませんが、兵士だけでは無く住民にまで牙をむいています」
「人間の本性が、そういうものだとは思いたくは無いがそうなったか」
げん様が言います。
「旧日本軍には、住民を大切にした部隊もあったと聞いたことがありますが、北海道国軍はそうきましたか」
伊達様は第二次世界大戦の事を勉強したのでしょうか。
日本軍の事を持ち出しました。
「教えてくれカモンさん。いまから行ったら助けられるのか?」
「いいえ、いいえ」
カモンは首を激しく振ります。
目に涙が溜まっているようにも見えます。
「ふむ。わかった。だが、これで俺の腹は決まった。伊達!!」
「はい」
「木田家北海道方面軍は、釧路守備をする解放軍が敗退した場合には、釧路市民を守るため盾となる」
「はっ!」
「明日、戦うのは俺と伊達の二人だけだ!!」
「えっ!?」
「ゲン隊も伊達隊も盾として、壁のように街への道路をふさぎ、戦うのは俺とお前だ」
「ほ、本気ですか? 敵は戦車ですよ」
「こっちは機動陸鎧だ!」
「は、はあ」
伊達様は、何を言っても無駄と諦めて気のない返事をしました。
「赤穂さん、解放軍の布陣は?」
「はい、海岸線からの進入路は橋を落としてふさぎ、北からの侵入を想定し塹壕を作っています」
この後、私達は持ち場へ戻りましたが、ゲン様と伊達様、松田様は夜更けまで話し合っていたようです。
数日後、北海道国が国道を行軍してきました。
前回の戦いでは戦車を温存していましたが、今回は最初から前面に出してきました。
解放軍には二両の戦車がありますが、北海道国軍は十両以上の戦車で来ています。
北海道国軍は全軍がそろうと、戦車が火を噴きました。
これで、解放軍の戦車が沈黙しました。
「わあああああーーーーーーー!!!!」
それを合図に総攻撃が始まりました。
あちこちで、戦車の砲撃の爆発が起ります。
解放軍にはすでに、戦車に対する有効な武器が無いようです。
銃撃は続けていますが、戦車を止めることが出来ません。
「もはやこれまでだーー!! 全軍てったーーい!!」
撤退の大音声が響きました。
「一人も逃すなーー!! ぶちころせーーー!!!!」
北海道国軍の大将の声が響きます。
釧路市市街地方向から二人の機動陸鎧が飛んできました。
赤い機動陸鎧は天夕改です。ゲン様の指揮官専用機です。
緑の機動陸鎧は天竜で指揮官機は独眼竜の固有名を持つ伊達様専用機です。
「まてーーーい!!!!」
ゲン様の声が響きます。
「な、なんだ。あれは? ちっ、かまわねえ。戦車隊攻撃しろー!!」
戦車が火を噴きました。
それを、二人は素早い動きでかわします。
「おいおい、聞かねえかーー!」
ゲン様が怒鳴ります。
「やかましーー!!」
敵大将は聞く気無しです。
「伊達、しょうがねえ。一暴れだ」
「おおーーーっ!!」
伊達様は返事をすると、一気に間合いを縮めると一つ目の戦車の砲塔の下に入りました。
「はあーーはっはっはっ!!!! ゲンさんこれなら、俺一人でも行けそうです」
そう言うと、戦車の砲塔を曲げてしまいました。
「馬鹿野郎!! 調子に乗るんじゃねえ!!」
ゲン様が言った瞬間、伊達様の独眼竜に砲撃が直撃しました。
爆音が響きます。
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!! やられたーーー」
「言わんこっちゃねえ!! 馬鹿野郎!!」
「うおおおおおーーーーー!!!! やったぞーーー!!」
敵兵から歓声が上がります。
一撃当たると、独眼竜に次々と10式戦車の砲弾が直撃します。
煙で独眼竜が見えなくなりました。
「馬鹿が!!」
ゲン様の赤い天夕改が次々戦車を行動不能にします。
すでに五両が沈黙しました。
「うおおおーーーー!!!! なんだ、なんなんだあれはーー!? すげーーっ!!!!」
撤退中の解放軍が気付き足を止めて天夕改に見入っています。
「かっけーーロボだー!! ロボが助けに来てくれたぞーー!! 赤いあれみてーだ!!」
解放軍の兵士が子供のように、はしゃいでいます。
赤いあれって、なんですかー?
「み、見ろ!! あれをーー!!」
解放軍の何人かの兵士が言いました。
「す、すげーーー!!!! すげーーぞこっちも!!!! こっちのロボもすげーー!!」
視線の先は緑の独眼竜が直撃を受けた場所です。
真っ白に煙っていた独眼竜の姿が薄ら見えてきました。
直撃でバラバラに壊れているのかと思いましたがなんと無傷です。
「おい!! いつまで休んでやーがるんだ!! 馬鹿野郎!! さっさと仕事をしねーか!!」
「あーーはっはっはっ!! びっくりしたーー! 死んだかと思ったー!」
「て、てめーら、なにぼさっとしているんだ! 撃てー撃たねーか!!」
敵の大将が、近くの兵士の頭を叩いています。
口をポカンと開けて見とれていた兵士が、慌てて銃撃を始めました。
敵の戦車の砲撃と、銃撃の雨の中を二人の機動陸鎧が機敏に動きまわります。
敵の攻撃はかなり命中していますが、何事も無いように移動して戦車を破壊していきます。
戦車が最後の一両になるとゲン様は、敵の大将の前に移動して仁王立ちになりました。
「てめーら、何をしている。撃てーー、撃つんだーー!!!!」
至近距離の銃撃は全弾命中します。
ですがそれは、天夕改に傷一つ付けません。
それどころか跳弾が、自分たちに飛んできます。
「うわっわっわっわ! ばっ、ばっかやろーーー!!!! 何をしている!! やめねーか!! あぶねーだろーがー!!」
銃撃が止まると、最後の戦車を壊した独眼竜が、天夕改の横に並び腕を組みました。
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」
解放軍からやんやの喝采が上がりました。
「さて、話を聞く気になったか?」
ゲン様の静かな声が聞こえてきました。
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