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激闘編

第二百八十六話 激しい憎悪

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「これが良い知らせなのか。ロボのメイドがあってもなあ」

「そうですなあ」

 どうやら、二人の期待外れだったようです。
 テンションが低くなりました。
 それはもう、ガッカリだよって全身からあふれ出しています。

「では、あの、オイサスト! シュヴァイン! と言って頂けませんか」

「ふむ。いいけどな」

 柴田様が前田様を見ます。

「オ、オイ、オイサスト! シュシュ、シュヴァイン!!」

 柴田様に合わせて前田様も言いました。
 二人のメイドの体から黒い糸が二人の大男にむかって出ていきます。
 柴田様と前田様の着ている物が収納され、黒い糸の間から一瞬パンツ一丁の姿が見えました。
 黒い糸の繭玉が消えると甲冑姿になっています。

「おおっ……」

 やっぱりあまり驚きませんね。
 二人にとっては期待外れと言うことでしょうか。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!! なんなんだこれわーーーーーー!!!」

 二人が大声で驚きました。
 今度は驚きすぎですね。耳が痛いです。

「お似合いですよ」

 シャドウちゃんが、気を利かせて顔の所だけ透明にしています。
 二人の大きな体が漆黒の甲冑に包まれると美しさと雄々しさを感じます。お世辞では無く本当に似合っています。

「柴田様は、あのいにしえの将軍呂布奉先殿のようですなあ」

「そ、そうか!?」

 柴田様はそう言われると、とてもうれしそうです。
 ニヤニヤが気持ち悪いです。

「となると俺は、呂布殿につかえた陳宮殿というところでしょうか」

「ば、馬鹿を言うな! わしが呂布ならお前は張遼文遠であろう!」

「なんと恐れ多い、あの泣く子も黙る張遼文遠とまで……」

 あらあら、前田様が涙ぐんでいます。
 私にはピンと来ませんが、わかる人にはわかるのでしょうか。

「ヨシ! 決めた。俺は今から呂を名乗る。そして本名の一字を加え呂瞬と名乗ることにする」

「おお!! では俺は張を名乗り、本名から高を加え張高と名乗りましょう」

「廣瀬殿!! ありがとう。ありがとう」

 柴田様が私の手を取り感謝をしてくれています。
 まあ、わかっていると思いますが、大殿がくれた物ですよ。
 私は運んだだけです。
 柴田様は大殿に感謝を言いたくないみたいで、その感謝を全部私に注ぎ込んでいるみたいです。

「あなたーー!! 何をこんな所で浮気ですかーー!!!! 男って奴は目を離すとすぐこれだからーー!!」

「うわあぁー! 悪い方の知らせ来たーー!」

 えーーっ!! 悪い方の知らせじゃ無くていい方ですよ。
 私の手を握って喜んでいるタイミングで、ギャングウェイを歩いて来た柴田様の奥方様に見られてしまいました。

「し、柴田様。い、いい方。いい方です」

「なっ、そ、そうか。うん、そうだ。そうせんといかんな」

 そうせんといかんなとは、どういうこと?

「はーーっ、何をごちゃごちゃ言っているのですか! いい加減手を離しなさい!!」

 柴田様が驚き過ぎて手を握ったまま離すのを忘れています。

「いや、違うぞこれは違う。廣瀬殿は想いを寄せるお方がいるのだ。だから、だんじて違う」

 ぎゃーー! この赤鬼は何を言い出すのでしょうかー!!

「はー!! そんなことは知っています。古賀忍軍の各隊長は全員木田の大殿にメロメロと聞いています。古賀忍軍では誰でも知っている有名な話です。船で教えてもらいました」

 えーーっ! 驚きです。隠していたのですがーー。って他の隊長も……。
 私は、振り返り船にいる部下を見ました。滅茶苦茶いい笑顔で手を振っています。
 まいりました。

「そ、そうなのか?」

 それで、なんで、柴田様は「バレているようだぞ」みたいな顔で私を見るのですかーー!!

「だからって、あなたが浮気しない理由にはならないでしょう!!」

 うわあ!! 奥方様が私の胸に言いました。
 胸は返事しませんよー。
 私の胸は、さっき振り返ったときの動きでゆれています。まあ、無駄に大きいですから……。

「なっ!!」

 それで、なんで柴田様まで視線を胸に移動させるのですか。
 それはセクハラです!!

「まあまあ、奥方様その位で、話は後でゆっくりと」

 話しが進まないので前田様が仲裁に入ってくれました。
 前田様の横には美しい奥方様が寄り添っています。
 無事を確認出来てうれしそうです。

「では、奥方様は結界の中に入って下さい」

 私のコスチュームは新型になりました。追加で結界を発生できるようになっています。
 何でも美術館で気が付いたと言って、息を切らせて大殿が私達の所へ来てくれました。
 息を切らせた大殿もやっぱりかっこよかったです。
 このため、ろ組のコスチュームは全部結界が作れる仕様になりました。

「悪い方のお知らせを御披露いたします」

 私は奥方様が結界に入るのを確認すると、船の部下に手を上げて合図を送りました。
 黒い檻が……

 ――うわっ!!!

 船の上から放り投げられました。
 コンクリートで固められた地面にぶつかり猛烈な音が出ます。

「バッ、バカヤローー!!!! な、何てことをしやあがる!!」

 檻の中から声がしました。本当にそうです。何てことをするのでしょう驚きました。
 見上げると船の上で、部下達が良い笑顔で手を振っています。まったくー!
 檻の中で拘束された一益は超能力が使えないようです。体をあちこちにぶつけました。
 でも、無事なようです。さすがに丈夫ですね。

「うおっ! か、一益! 慶次郎! 本当に悪い知らせだ。最悪かも」

 柴田様と前田様が驚いています。

「なるほど!! そういうことか! アンナメーダーマンめ!」

「ですな!!」

 柴田様と前田様がなにやら納得しています。

「一益、お前もアンナメーダーマンにやられたのか?」

「ちっ、うるせーんだよ」

「檻から出してやってくれ、その拘束も取ってやってくれ」

 柴田様が言いました。

「てめー、これがどういうことかわかっているのか」

 一益の体のまわりに黒いもやの様な物が見えます。
 目の錯覚かもしれませんが、不気味です。
 ゆらりゆらりと歩き、柴田様の前に少し間隔を開けて立ち止まりました。
 後ろに弟の慶次郎が立ちます。

 ――大きい!!

 柴田様より一回り大きくて不気味です。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!! か、体がうごかねえ!!!!」

 柴田様が叫びました。
 一益が何かをやったのでしょうか?

「てめーふざけるなー! なめているのかー! まだ何にもやってねーだろうがよう」

「ひひひ、見えねえからよう。わからなかった。ふひひひ」

 柴田様が不気味に笑います。どうやら、一益を挑発していますね。
 なんだか悪党同士の戦いを見ているみたいで、気持ち悪くて恐いです。

「ぐぬぬぬ、慶次郎! お前の力をこの馬鹿に見せつけてやれ!」

「ひゃあーはっはっはっ、慌てるな。おめーの相手はそこの張高がする」

「張高?」

「ふふふ、俺ですよ。俺は張高と名前を変えました」

 前田様が、三間槍を右手と左手に一本ずつ持って前に進み出ました。

「なめるなーっ!! 前田ごときが慶次郎に勝てると思っているのかーー!!!! どいつもこいつもなめやがってーー!!!! 慶次郎かまわねえ、ぶっころせーー!!」

「ほらよ!」

 張高様が片方の槍を慶次郎に投げました。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 慶次郎が槍を受け取ると雄叫びを上げます。
 島中がビリビリ震えるような大声です。
 海の表面までがザワザワしています。
 島にいた鳥が、驚いてバサバサ飛び立ちました。

 恐ろしいほどのはげしい怒りですね。いえ憎悪でしょうか。
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