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激闘編

第二百七十話 本物は映画とは違います

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 私は大殿から二つの事を教えてもらいました。
 一つ目は、ゾンビがウイルスで感染するわけでは無いという事です。
 もう一つは、頭を壊しても倒せないという事です。
 そして「柴田は、この勘違いをするはずだから、しばらく静観するように」と指示されました。
 その後に「罰だからな。ぷっ」と付け加えました。なんだか、情景を思い浮かべたのでしょうか、吹き出していました。

「あれは、あれは、人間じゃねえ。て、鉄砲隊、早く準備しねえかー!」

 柴田様が慌てています。

「まさかありゃあ、ゾンビですか? 人間は大勢いっぺんに死ぬとゾンビになるんですかねえ」

「馬鹿野郎! 前田ー!!! 『ですかねえ』じゃねえんだよ。ななな、何とかしろ気持ち悪いじゃねえか」

「ふふふ、ゾンビなど映画で良く見ていますからねえ。簡単ですよ」

「は、早くしろ気持ちわりいだろ!」

「鉄砲隊! 引きつけて、ゾンビの頭を狙えー!!」

 相手がゾンビとわかったとたんに、柴田様が役に立たなくなりました。

 大きな銃声と白煙があたりに広がります。
 鉄砲隊は良く訓練されていたのでしょう、ほとんどがゾンビの頭に命中しました。ですが火縄銃ではゾンビの頭を吹飛ばすほどの威力はありませんでした。

 ボロボロの服をきて、半分腐ったような体のゾンビは近づくのをやめません。
 頭に穴は開きましたが、何事も無く歩いて来ます。

「馬鹿野郎、なんとも無いじゃねえか!!」

「あれーー!! おかしいなあー?」

「おかしいなー? じゃねえんだよ! は、はや、はやく、何とかしねえかー!!」

「槍たーい、頭を吹飛ばせーー!! だか、気をつけろー! かまれたり、ケガをさせられるな、ゾンビがうつるぞーー!!」

 前田様が大殿の言った通りのことを言っています。
 太くて長い槍は、ゾンビの頭を易々吹飛ばします。

「うわあああーー!! 頭を切り飛ばしたのに、まだせまってくるーー!!」

 お、恐ろしい光景です。
 頭の無くなったゾンビ達が、何事も無く襲って来ます。
 落ちた頭を拾って投げつけるゾンビがいます。

「ぎゃああああーー!!! か、かまれたーー!」
「うっ、うわああああああ!!」

 かまれた兵士が現れたようです。
 パニックが起きました。

「ち、近寄るなーー!! うつるーー!! うつるうーー!! ぎゃああああ!!」
「うわあーー!!」
「ぎょわあーー!!!!」

 大殿は人が悪いです。
 きっと、これを想像していたのですね。
 柴田様も、前田様も涙目で叫んで逃げまどっています。

「槍たーーい!!! 粉々にくだけーー!! それしかねえ!!」

「やれやれですわ。そんなことをしたら、細切れになってしまいますよ。そしたら、指だけで襲って来て、真夜中寝ているときに目の中や、お尻の穴にモゾモゾ入ってきて、中をぐちゃぐちゃにしますよ」

「うわあ、何も無いところから声がしたーー!! そしてエグいことを言いやがったーー!!」

「これは、失礼しました」

 私は透明化を解除して姿を見せました。

「うおお、おっぱいがでけえ!!」

「プ。プリンプリンですね」

「なっ!! 二人そろって、ど、どこを見ているのですかー!!」

 忍者服は、真っ黒で体に密着して、ビニールのようにぴったり体の線が浮きあがります。
 腰はミニスカートの様になっています。
 透明化を解除すると、自動的に紐のエッチなパンツが装着されます。
 忍者服の上なので意味が無いように感じますが、仕様なのでしょうがありません。
 でも、すこし動くだけでチラチラ出てしまって意外と恥ずかしいんですよねー。これ。

「おぬし、忍者か!?」

「はい、木田家古賀忍軍ろ組で組頭をしています。廣瀬と申します」

「わしは、柴田だ! 顔を隠したままとは失礼であろう!!」

「はっ、も、申し訳ありません」

 私は、顔を露出させました。

「な、なんだ、ブスよりちょっとまし程度か」

「ですなあ」

 ガ、ガッカリされました。
 失礼極まります!! な、なんなんですかーー!! この二人ー!!
 私は、だまって二人を見ました。

「い、いやいや。ブスとは言っていないぞ。普通と言ったんだ」

「そーです、そーです」

 柴田様があせっています。
 そして、前田様が同調しています。
 あの言い方だと、普通の中でも下の方という事ですよねえ。

「さっき言っていたのは、本当の事か?」

 柴田様が真面目な顔になりました。

「はい。小さくしても、動ける限り動き近づいて来て襲いかかります」

「廣瀬殿。では、どうすれば良いのだ」

「はい。ゾンビは燃やすか、水に沈めるかで退治出来ます」

「水に沈める!?」

「はい。丁度、横は海です」

 大殿はこれを見越して場所をここにしたのでしょうか。
 あのお方のことです当然そうですよね。

「野郎共、ゾンビを海に落とせーー!! ついでにかまれた奴もゾンビになる一緒に落とすんだーー!!」

「ちょっと待ってください。本物は、かまれたぐらいではゾンビになりません。死んだらゾンビになるのです」

「うわああーー、し、しずむーー!!」

 甲冑を着た兵士が何人か落とされたようです。
 あれじゃあ浮けません。

「だれか、助けて上げて」

「うおっ!? 透明な何かが飛び込んだ!!」

 部下が飛び込んで助けてくれたようです。

「そうか、かまれても、ゾンビにならねーのか! そして海に落とせば良いのか!!」

 柴田様が、不敵な笑顔を浮かべると、ゾンビの中に入りました。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 柴田様が雄叫びを上げると、十体以上のゾンビが吹飛ばされます。
 そして、ドブンドブンと海の中にゾンビが落ちていきます。

「す、すごい!! 聞きしに勝る豪傑ですね」

「俺も行きますか。廣瀬さんに良いところを見せないといけませんからね」

 前田様も太い槍を持ちました。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーーりゃあああーー!!!!!」

 槍を持つと叫び声と共にゾンビの中に飛び込みます。
 前田様もすごい!!
 柴田様より三体くらい少ないですが、恐ろしい豪傑です。

「あかーん!! ぜーー、ぜーー!!」

 柴田様が戻ってきました。

「どうしました」

「は、鼻が詰まって呼吸がつらーーい」

 柴田様の鼻の穴には、真っ赤な紙が詰まっています。

「仕方が無いですねえ。これを一滴飲んでください」

 私は、柴田様に治癒の薬を手渡しました。

「うおーー!! 鼻が痛くねえ!! 廣瀬殿あんたはいったい?」

「さっさと、片付けてきてください!」

「おおっ!!」

 柴田様は、鼻にフンと空気を送ると、詰め物の紙を吹飛ばしました。
 真っ赤に汚れた紙が、足下に飛んできました。
 紙の後ろには赤いドロッとした、なまめかしい物が付いています。

「キャッ!」

 私は、思わず飛んで避けました。
 そしたら、エッチなパンツが丸出しになりました。

「す、すごい!!」

 柴田様は、パンツではなく、私のゆれる胸を見ています。
 もう、まいっちんぐです。
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