底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
上 下
253 / 428

第二百五十三話 まがまがしい来客

しおりを挟む
 私がお替わりのハンバーグに、取りかかったときに異変が起きました。
 メイドのフォリスさんの体が緊張してビクンと反応しました。
 視線が玄関に固定されます。
 何か良からぬ者が来たのでしょうか。

 古賀さんもミサさんも坂本さんも、玄関に意識を集中します。
 あずさちゃんだけはハンバーグに意識を集中しています。

「カンリ一族でしょうか? 妙な気配がします」

 古賀さんが険しい顔でいいました。
 私達は緊張しました。
 玄関が開くと、闇の中に人影がうっすら浮かび上がりました。前列が三人、その後ろに五人、さらに後ろにゾロゾロ大勢いるようです。

「オイサスト! シュヴァイン!」

 古賀さんと、坂本さんが変身しました。
 その位の重々しい雰囲気です。

「やー、ごめん、ごめん。驚かしてしまったかな?」

「ほーさーーん!!」

 あずさちゃんは気が付いていたみたいです。
 残りのハンバーグを口に放り込むと駆け出しました。
 私の手を握ると、私を引っ張るように走ります。
 これは、とうさんに抱きつくイベントですか。
 あずさちゃんが女神の様に感じられます。
 歩いて来るとうさんが、少しずつ光に照らされて姿がはっきりしてきます。

 とうさんを真ん中にして、左側に歳が良くわからないけど、かわいい感じのする女性がぴったりひっついて歩いています。
 右側にはなんだか、凄く人相の悪い痩せた男性が同じようにひっついて歩いています。
 ちょっと待って下さい。このまま走って行くと、あずさちゃんが女の人、私が恐ろしい顔をした男の人とぶつかります。

「あずさちゃーん!! まっ、まってください」

「ぷひゅっ!」

 あずさちゃんが、笑いをこらえたのでしょうか、空気が口から漏れました。

 ――うっうう、あずさちゃんが死神に見えてきました。

 でもやるしかありません。
 恐い男の人の顔を見ないようにして走ります。

「おおぶっ」

 どうやら、恐い男の人にはぶつからずに済みました。
 とうさんが一歩前に出て、あずさちゃんと私を受け止めてくれました。
 あずさちゃんの当たりが強すぎて、とうさんが変な声を出しました。

「とーさーん!!」

 私もあずさちゃんのまねをして、しっかり抱きつきます。
 とうさんの体から腐った豚肉の匂いがします。
 加齢臭と言う奴なのでしょうか。
 でも、私はこの匂いが嫌いではありません。むしろ好きです。
 私が九十歳くらいのおばあさんになって、腐った豚肉の匂いを嗅いだら、きっと、とうさんの事を思い出して懐かしむのでしょうね。

「まあ、何だろうね。この可愛らしい二人の少女は?」

 この女の人は、若く見えますが、おばあさんなのでしょうか?
 言い方が年寄り臭いです。
 でも、二人と言ってくれました。
 きっといい人だと思います。

「あの、その方達は?」

 坂本さんが質問しました。

「あぁ、カンリ一族だ。こっちが族長のオオエ。そして左近だ」

 私とあずさちゃんは、とうさんの体から素早く飛びのくと身構えました。

「こらこら、カンリ一族は木田家の一員となった。失礼はよしなさい」

「えーーっ!!」

 早すぎます。
 全員が驚きました。
 カ、カンリ一族って、皆が恐れている、あのカンリ一族ですよね。
 それを、本当に数日で従えてしまいました。
 そんな大仕事をしたのに、いつも通りです。なんて凄い人なのでしょうか。
 かっこよすぎます。

 私は、もう一度とうさんにしがみつきました。
 横にうるんだ瞳のあずさちゃんがしがみついています。
 そして、チラリと私の方を見るとニヤリと笑いました。
 きっと、私もあずさちゃんと同じ瞳をしているのでしょうね。
 なんだか、ポゥっと頬がほてってきます。
 あずさちゃんの頬も赤くなっています。それを見ると、私もニヤリと顔が、にやけてしまいました。

「そうだ!!」

 とうさんが、ミサさんと古賀さんと坂本さんを見て言いました。

「どうしました」

 とうさんの横の、族長と紹介されたオオエさんが言いました。

「オオエ、この三人を禁足地へ連れて行きたいのだが駄目か?」

「おやじ様、一族の者しか無理でございます」

 オオエさんは冷たく言い放ちました。
 言われた三人は、顔を見合わせるとうなずいています。
 そして、嬉しそうな顔をして言いました。

「私達は、木田とうの奥方衆ですよ」

 関所で言われたことを、そのまま使用したようです。

「お、奥方衆。であれば大丈夫です」

 オオエと呼ばれた女性は一瞬驚いた表情をしましたが、とうさんを見て笑っています。

「置く型集? 置き型集??」

 とうさんだけは何の事か、分かっていないようです。

「あの、そこには何があるのですか」

 古賀さんが首を傾けながら言いました。

「カノンちゃん、こっちへ」

 とうさんの後ろには、上杉様とお母様、スケさんとカクさん、カノンお姉様が……。

「ああああっ!! 若返っています」

 前に出てきたお姉様が、私と同じ位の少女になっています。

「カンリ一族の里には不思議な力がある。三人のパワーアップのため、カンリの里に行ってもらいたい。行くと、ついでに五年程度若返るようだ」

「行きます。今すぐ行きます!!!」

 三人が必死で言いました。

「ふふふ……」

 オオエさんがその必死さを見て苦笑しています。

「その前に、良い匂いがしているじゃねえか。ホリス、皆に食べさせてやってくれねえか」

「おおおっ」

 後ろにいる人達からパチパチと拍手が起りました。

「とうさん! この人は、ホリスでは無くてフォリスです」

「おお、そうなのか。じゃあ、フォリス準備を頼む」

「はい」

 フォリスさんが、料理の準備に消えました。

「ヒマリ。本当はヒマリも行かしてやりたいが、ヒマリが行くと幼児になってしまう。あと十年たってからだな」

 とうさんは、私の頭を優しく撫でてくれます。

「はい。あの、とうさん、お願いがあります」

 私は頭を撫でられながら、今日見た黄ばんだおにぎりを思い出しました。

「んんっ!?」

 とうさんは、私の顔をのぞき込んでとても嬉しそうにしてくれます。

「お城の人達にお水をあげて下さい」

「わかった」

 えーーっ。
 まだ、何も言っていませんよ。
 なんで、わかってしまうのですかー。

「あの、敵なのですがいいのですか」

「ヒマリが心配するほど、不足しているのだろう。断れないさ。それに敵じゃ無い同胞だ。少ーし駄々をこねているだけだ」

「はい!!」

 私は、とうさんの優しさに感動しています。

「あずさ」

「なーに、とうさん」

「三人の替わりに俺が働きたいのだが、何をしたらいい。状況を教えてくれ」

「はわわわ」

 うわあー。
 あずさちゃんがあからさまに動揺しています。
 やっぱり、戦争の最中にお祭りはやり過ぎと、自覚しているようです。
 きっと、五日はかかると思っていたのでしょうね。
 どうするつもりでしょうか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少年少女たちの日々

原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。 世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。 しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。 世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。 戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。 大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。 その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...