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第二百五十話 アマノウズメ大作戦
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美術館のロビーに、大きめのテーブルが用意されて椅子がセットされました。
「では、お願いします」
全員が座るとあずさちゃんが言いました。
あずさちゃんは、きっと前世が偉い人だったのだと思います。
すでに王様のような雰囲気があります。
「あ、あの……」
大人のくノ一が、おどおどして話し出せないでいます。
「続けて」
見かねて、古賀さんが声をかけました。
「は、はい。これが今の和歌山城の状態です。赤い線が熊野衆の作ったバリケードです。内側に櫓が作られていて、そこに銃を配置しています」
和歌山城の拡大図と周辺の地図の二つが机の上におかれています。
拡大図の堀の無い側に、赤い線がかき込まれています。
こうしてみると堀の無い城に防御力がそれほどあるように見えません。
「ありがとうございます。でも、その前にお名前を教えて下さい」
「は、はい。失礼しました。古賀忍軍ろ組、組頭廣瀬と申します」
「うふふ、廣瀬さん、お城に立てこもる熊野衆は何名ほどいますか」
「はい、二千弱かと」
「食糧はどうですか」
「はい、お米だけになっているようですが、お米はまだ充分あるようです。朝と晩におにぎりにして食べています」
「清水様なら力攻めですぐに落とせそうな気がしますが、何故それをしないのでしょうか」
つい、疑問を口にしてしまいました。
「死者を出すのが、いやだったのでしょうね」
古賀さんがうれしそうに教えてくれました。
「とうさんの不殺ですか?」
「そうですね。清水様が、そのような考え方が出来るようになるとは思いませんでしたけど」
「ほんとうに」
私と古賀さんの知っている清水様なら今頃皆殺しです。
「古賀さん、もう一つ質問良いですか?」
「はい、どうぞ」
「地図を見ると、川の中に緑地があります。橋を落とせば、ここの方が守りやすいと思いますけど」
「きっと、カンリ一族の強さを信じているのでしょう。清水の兵士などすぐに全滅すると思ったのじゃ無いでしょうか」
「カンリ一族とは、それほどなのですか」
「普通の兵士なら恐らく今頃、皆殺しになっているのではないでしょうか」
「と、とうさんは大丈夫なのでしょうか」
私は急に不安になりました。
「大丈夫です。もし、カンリ一族がいるのなら、ここに来る間に襲われているはずです」
あずさちゃんは、平然と言いました。
「そ、そうですね」
「では、皆さん。私達は私達で、やるべき事をやりましょう」
その言葉を聞くと、ミサさんと坂本さん、そして古賀さんが椅子から一斉に立ち上がりました。
そして、お揃いの上着を羽織りました。
「えーーーっ」
三人と同じ上着をあずさちゃんも羽織りました。
私は四人の上着を見て驚きの声を上げてしまいました。
四人の上着は、全体が水色で背中に大きな白丸、その中にはなんと……。
赤字で。
なんと。
祭の文字がーーーー!!
書いてあります。
「はい、ヒマリちゃんの分」
「あの、何ですかこれは」
「これが、私の立てた作戦です」
「さ、さくせん」
「作戦名、アマノウズメです」
「あまのうずめ」
私が言うとあずさちゃんが真剣な顔をして大きくうなずきました。
「皆さんは気付いていたのですか」
「うふふ、はい。だから用意して来ました」
大人の三人が一緒に言いました。
ある意味凄いです。
私はいまだに何の事かわかりません。
「ですが、これは遊びではありません。作戦です。失敗は許されません。ヒマリちゃん覚悟をしてください」
「は、はい」
私は、真剣な表情をする、あずさちゃんの言葉にゴクリとツバを飲み返事をしました。
「作戦の説明は、いりますか?」
「はい」
「では、坂本さんお願いします」
「かしこまりました。まず、城に閉じこもる熊野衆を、天の岩戸に引きこもるアマテラスオオミカミに見立てます。熊野衆の頼みの綱であるカンリ一族は旦那様がなにかの方法で手出し出来なくしてくれました。後は熊野衆を城から出てこさせるだけです。アマテラスオオミカミはアマノウズメの踊りと、やおよろずの神々の笑い声が楽しそうでおびき出されました。私達は、ピーツインのコンサートとまつりで、熊野衆を城からおびき出そうというわけです」
「ピ、ピーツインは、いるのでしょうか」
「ふふふ、遊ぶときは盛大にやらないといけません。絶対にいります」
あずさちゃん、今、おもいっきり遊びって言いましたよ。
やれやれです。
これは付き合わなければいけないようです。
私は祭りのはっぴを羽織りました。
「でも、屋台とかは大丈夫なのですか」
「大丈夫です。こんなこともあろうかと、こんなこともあろうかと。仙台で屋台は全部私がもらっておきました。仙台くらいの露店はすぐに準備出来ます。店員はここにいる六百六十人のクザクとシュザクに任せます」
「マグロ祭りですね」
「ちっ、ちっ、ちっ」
あずさちゃんが人差し指を立てて、左右に振ります。
「えっ、じゃあ。なんですか」
三人の大人もこれは予想できなかったようです。
私もわかりません。
「牛肉祭りです」
「えーーーーーっ」
「安さはうまさだーー!! の、牛丼も作ります」
「えーーーーーーっ!!」
もはや、口の中に牛肉の味が次から次へと湧いてきます。
「ス、ステーキもあるのですか?」
「はい、ハンバーグもありますよ」
もはや、ステーキのかおりまでしてきました。
「うおおおーーー!!!」
なんだか姿を消している、忍者軍団まで歓声を上げているようです。
「準備は四日しかありません。皆さん準備に入りましょう」
「おーーー!!!」
こうして、アマノウズメ大作戦の準備が始まりました。
「では、お願いします」
全員が座るとあずさちゃんが言いました。
あずさちゃんは、きっと前世が偉い人だったのだと思います。
すでに王様のような雰囲気があります。
「あ、あの……」
大人のくノ一が、おどおどして話し出せないでいます。
「続けて」
見かねて、古賀さんが声をかけました。
「は、はい。これが今の和歌山城の状態です。赤い線が熊野衆の作ったバリケードです。内側に櫓が作られていて、そこに銃を配置しています」
和歌山城の拡大図と周辺の地図の二つが机の上におかれています。
拡大図の堀の無い側に、赤い線がかき込まれています。
こうしてみると堀の無い城に防御力がそれほどあるように見えません。
「ありがとうございます。でも、その前にお名前を教えて下さい」
「は、はい。失礼しました。古賀忍軍ろ組、組頭廣瀬と申します」
「うふふ、廣瀬さん、お城に立てこもる熊野衆は何名ほどいますか」
「はい、二千弱かと」
「食糧はどうですか」
「はい、お米だけになっているようですが、お米はまだ充分あるようです。朝と晩におにぎりにして食べています」
「清水様なら力攻めですぐに落とせそうな気がしますが、何故それをしないのでしょうか」
つい、疑問を口にしてしまいました。
「死者を出すのが、いやだったのでしょうね」
古賀さんがうれしそうに教えてくれました。
「とうさんの不殺ですか?」
「そうですね。清水様が、そのような考え方が出来るようになるとは思いませんでしたけど」
「ほんとうに」
私と古賀さんの知っている清水様なら今頃皆殺しです。
「古賀さん、もう一つ質問良いですか?」
「はい、どうぞ」
「地図を見ると、川の中に緑地があります。橋を落とせば、ここの方が守りやすいと思いますけど」
「きっと、カンリ一族の強さを信じているのでしょう。清水の兵士などすぐに全滅すると思ったのじゃ無いでしょうか」
「カンリ一族とは、それほどなのですか」
「普通の兵士なら恐らく今頃、皆殺しになっているのではないでしょうか」
「と、とうさんは大丈夫なのでしょうか」
私は急に不安になりました。
「大丈夫です。もし、カンリ一族がいるのなら、ここに来る間に襲われているはずです」
あずさちゃんは、平然と言いました。
「そ、そうですね」
「では、皆さん。私達は私達で、やるべき事をやりましょう」
その言葉を聞くと、ミサさんと坂本さん、そして古賀さんが椅子から一斉に立ち上がりました。
そして、お揃いの上着を羽織りました。
「えーーーっ」
三人と同じ上着をあずさちゃんも羽織りました。
私は四人の上着を見て驚きの声を上げてしまいました。
四人の上着は、全体が水色で背中に大きな白丸、その中にはなんと……。
赤字で。
なんと。
祭の文字がーーーー!!
書いてあります。
「はい、ヒマリちゃんの分」
「あの、何ですかこれは」
「これが、私の立てた作戦です」
「さ、さくせん」
「作戦名、アマノウズメです」
「あまのうずめ」
私が言うとあずさちゃんが真剣な顔をして大きくうなずきました。
「皆さんは気付いていたのですか」
「うふふ、はい。だから用意して来ました」
大人の三人が一緒に言いました。
ある意味凄いです。
私はいまだに何の事かわかりません。
「ですが、これは遊びではありません。作戦です。失敗は許されません。ヒマリちゃん覚悟をしてください」
「は、はい」
私は、真剣な表情をする、あずさちゃんの言葉にゴクリとツバを飲み返事をしました。
「作戦の説明は、いりますか?」
「はい」
「では、坂本さんお願いします」
「かしこまりました。まず、城に閉じこもる熊野衆を、天の岩戸に引きこもるアマテラスオオミカミに見立てます。熊野衆の頼みの綱であるカンリ一族は旦那様がなにかの方法で手出し出来なくしてくれました。後は熊野衆を城から出てこさせるだけです。アマテラスオオミカミはアマノウズメの踊りと、やおよろずの神々の笑い声が楽しそうでおびき出されました。私達は、ピーツインのコンサートとまつりで、熊野衆を城からおびき出そうというわけです」
「ピ、ピーツインは、いるのでしょうか」
「ふふふ、遊ぶときは盛大にやらないといけません。絶対にいります」
あずさちゃん、今、おもいっきり遊びって言いましたよ。
やれやれです。
これは付き合わなければいけないようです。
私は祭りのはっぴを羽織りました。
「でも、屋台とかは大丈夫なのですか」
「大丈夫です。こんなこともあろうかと、こんなこともあろうかと。仙台で屋台は全部私がもらっておきました。仙台くらいの露店はすぐに準備出来ます。店員はここにいる六百六十人のクザクとシュザクに任せます」
「マグロ祭りですね」
「ちっ、ちっ、ちっ」
あずさちゃんが人差し指を立てて、左右に振ります。
「えっ、じゃあ。なんですか」
三人の大人もこれは予想できなかったようです。
私もわかりません。
「牛肉祭りです」
「えーーーーーっ」
「安さはうまさだーー!! の、牛丼も作ります」
「えーーーーーーっ!!」
もはや、口の中に牛肉の味が次から次へと湧いてきます。
「ス、ステーキもあるのですか?」
「はい、ハンバーグもありますよ」
もはや、ステーキのかおりまでしてきました。
「うおおおーーー!!!」
なんだか姿を消している、忍者軍団まで歓声を上げているようです。
「準備は四日しかありません。皆さん準備に入りましょう」
「おーーー!!!」
こうして、アマノウズメ大作戦の準備が始まりました。
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