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第二百三十七話 男湯の美女軍団

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 顔は整っている。
 黄金比というのだろうか、バランスがいい。
 目ははっきりしていて、鼻が高い。幼い可愛さは微塵も無く、洗練された美しさ、彫刻のような完成された美しさだ。
 髪は黒くて長い。そしてスタイルもいい。
 身長が高くて、腰の位置が高く足が長い。
 胸は、さほど大きくないが、スレンダーな体には丁度良い。
 山の頂は、サクラの花びらのような色で、潤んだ瞳のようにつやがある。
 下は、うむ、湯気が邪魔をしてよく見えない。
 が、何もはいていないのはわかる。
 その美女が体を隠すことも無く、悲鳴を上げるわけでも無く、優しそうな表情でこっちを見つめている。菩薩様の様だ。

「すみませーん、お邪魔しました。又来まーす!」

 俺はとりあえず、激豚パンツをはいて、そそくさとお風呂場を後にした。

「あーーー! 忘れていましたーー!!」

 俺がフロアーの廊下から、階段にさしかかった時に声がした。
「忘れていました」って何をだよ!
 そもそも誰なんだよ。

 実は俺は、まだ温泉の湯の確認はしたが入っていない。どんな泉質なのか入って確認だけはしたい。
 だが俺は、熱いお湯が嫌いなので温度調整の出来ない大浴場は通常利用しない。
 今回ばかりは仕方が無いので、大浴場に行く事にした。

 大浴場は二つ用意してある。
 それは、男性用と女性用に分ける事もそうなのだが、温泉を二種類用意するためにそうしてある。
 今は榊原温泉の湯だけだが、近いうちに飛騨が安定したら、一度飛騨に行って下呂温泉に行こうと思っている。
 片方が、榊原温泉、もう片方は下呂温泉とする予定なのだ。

 大浴場は良く確認しよう。

「男湯ヨシ!!」

 俺は、工場勤めの時のように指差呼称した。
 ここで女湯に入ったら、どんだけ裸が見たいんだよーって事になる。
 見たくないことは無いが、それは芸術を鑑賞するような感じで、下心は全くないので誤解だけは避けたい。

 服はすでに脱いで脇に抱えている。
 激豚パンツを脱ぐだけだ。
 脱衣所のカゴに全てを放り込むと、浴場に入った。

「広いなーー」

 自分で作っておきながら広いと思う。
 バブルの頃の温泉旅館より広い。

「あらあら、外れを引きましたねえ」

 全裸の古賀さんが近寄ってきた。
 少しも隠す様子がない。

「えぇーーーっ!!! ま、間違えましたーー!!」

 見えない様にするために、俺は股間を押さえて反転して走りだした。
 片手で充分治まるが、両手で押さえました。
 おかしい、男湯を確認したよなあ。

「ニャははは、間違えていないニャ」

 アドとアメリちゃんがいる。
 よかった。この二人は、見た目は幼女だが成人している。合法ロリだ。

「こっちは、私達古賀軍団の入っている方ですよ。向こうにミサさんや響子さん、あずさちゃんやヒマリちゃんがいますからね。うふふ」

 外れとか言っているが、古賀さんだって相当な美女だ。
 昔のドリフを思い出した。昭和のドリフは必ずこんなシーンがあったよなあ。なつかしい。
 脱衣所で激豚パンツをはいて、外に出て隣の浴場を見たら、こっちも男湯になっている。

「くそう、何て奴らだ」

 俺は温泉をあきらめた。
 階段を上ると上杉が歩いている。

「大殿」

「ああ、上杉。偉い目に遭ったよ」

「どうされたのですか?」

「風呂に入ろうとすると、裸の美女がいつも入っているんだ。泣けるぜ」

「そうですか」

 上杉は、風呂上がりのようだ。
 ……こいつ、どこで入ったんだ?
 まあいいか。
 俺は大阪城にこっそり作った隠し部屋小さな社長室、つまり我が家を目指した。
 我が家には、ちゃんとユニットバスがある。
 ユニットバスで体を洗った。
 最初からこうすれば良かった。

「とうさん。私達のお風呂には、なんで来なかったの?」

 温泉ツアー、一行様を送り届けて戻って来たあずさが言った。

「いけるかーー!!」

 あずさはこういう所がずれている。
 隣の寝室で、ヒマリちゃんと上杉が眠っている。

「悪い人ですね」

 あずさが、俺の顔を見て笑った。
 すでに見透かしているようだ。
 俺は、今から安土城に行こうと思っている。
 全員には、今日は休みだと言って、油断をさせて俺だけで行こうとしているのだ。

「仕方が無いのさ。可能性は低いが安土城跡には奴がいるかもしれない」

「桜木さんですか」

「うむ」

「私も駄目ですか」

「うむ」

「では、気をつけて行って来てください」

「うむ、すぐに帰る」

「はい、朝食は一緒に食べましょう」

「うむ」

 俺はゆっくり、部屋を出た。
 その足で、真っ黒な大阪魔王城天守閣の屋根に登った。
 丹波篠山とはちがって、人々の暮らしの光はなかった。

「お前達二人の同行は許す。だが、戦闘への参加は許さん、万が一の時は城に報告を頼む」

「わかったニャ」「はっ!」

 俺もやっと、アドと桃井さんの気配がわかるようになった。
 そう言えば、桃井さんもお風呂にいたなあ。変なことを思い出した。
 ここから、安土城跡なら一時間はかからないだろう。
 俺は、ヘルメットをかぶった。
 体は黒いジャージだ。そう、正義のヒーロー、アンナメーダーマンになった。

 あまり速く走るとついてこられないかもしれないので、チータ位の速さで走る。
 途中で現地の古賀忍軍に案内してもらい、西の湖の西側を迂回して安土城跡の北、山手側についた。
 山の中の木の枝に猿のように止まり、まずは様子を見ようと目を凝らした。

「アンナメーダーマン!!」

 本当に着いてすぐだった。後ろから声がした。
 暗い深夜の木々の中で、易々と俺を捜し当てたようだ。

「桜木か? まだいたのか?」

 俺は、すでに救出が終って、桜木は居ないと想定していた。
 万が一居たらいけないので一人で来たが、どうやら悪い予感が当たってしまったようだ。

「ふふふ、うちの姫さんがだだをこねて、来てくれ無いのですよ!! こまったもんです」

 桜木は冴子さんの事を姫と表現した。
 その位、重要人物と言う事なのか。

「えっ!? 居場所はわかっているのか」

「ええ、来て下さい」

 そう言うと、木の枝の上を高速で、音も無く移動した。

「忍者顔負けだなあ」

「軽々ついて来る人に言われたくないセリフですねえ。あそこです」

 駐車場の真ん中だろうか、小屋が建てられ厳重に警備されている。

「会ったのか?」

「苦労しましたがね。そしたら、シュウが捕まっている。私が逃げたら殺されてしまう。今は逃げられないの一点張りです」

「シュウ?」

「ええ、何でも、運命の相手だそうです。俺が殺してやろうかと思っていますよ」

 ぎゃーーー!! そ、それって俺じゃねえの?

「そのシュウが羽柴に捕まって人質にされていると言う訳か?」

「ええ、京滋バイパスの戦いで、捕まった間抜けな十一番隊の兵士だそうです」

「な、なるほど」

 あー、新政府軍十一番隊足軽トダシュウの事だ。
 つまり俺の事だ。

「うちの姫は、狂ったように捜したようですよ。そして羽柴軍に捕まっている可能性が高いという事で、羽柴軍に侵入して大暴れしたようです。そこでシュウは捕らえている。暴れたらシュウを殺すと言われたそうですね」

 くそう、羽柴メーー。
 俺はここに居る。捕まえていねーだろうがよー。
 桜木にバレると殺されそうだしなー。どうすっかなー。
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