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第二百二十八話 敵は新政府

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 大阪城は石垣が残るだけで、城は跡形も無くなっている。
 近くに残っていた建物も木も爆風で全て消え去り、荒野感が増してしまった。
 まるで俺が荒野大阪の仕上げをしたような感じになっている。
 足下の城の残骸を拾ってみる。
 そして、それを吸収した。
 城もこうなってしまえばただのゴミだ。あたりのゴミも綺麗に掃除した。

「徳川家康は燃える大阪城を見て、何を思ったのだろう? やれやれこれで日本はわしの物になったと思ったのだろうか」

 俺は、日本を自分の物にしたいなどと思った事は無い。
 底辺に生活する人を救いたいだけだ。
 政治家は、自分たちの給料を上げたいが為に、すぐに公務員の給料をあげ、大企業の給料を上げる。そして物価があがる。
 残された大半の日本人の給料は上がらず、物価が上がった分、収入が減ったのと同じになる。苦しい生活が余計に苦しくなる。

「違うだろ! 最初に底辺の人の給料が上がり、それから公務員や政治家の給料だろ! そして物価だろうがよー! 上がる順番が違うんだよ! 底辺の人の給料が上がらんうちは、物価はそのままを維持させるんだよ政治家が!」

 俺の時計は大阪城落城から隕石が落ちる前に移ったようだ。

「全くその通りですね!」

「!?」

「新政府は、鈴木という首相の独裁政治になっています。新政府の幹部は色々な所の議員の生き残りが集り運営しています。まずは自分たちが、どう贅沢をするのかから話が始まります。政治家とは自分のことしか考えない生き物なのだと良くわかりましたよ。裏金なんて当たり前だと良くわかります」

「教えてくれ桜木、ハルラは何故日本をほしがるのだ」

「あははは。あの方はそんなことには関心がありませんよ」

「えっ」

「ふふふ。あの方は、酒と女だけ新政府から一番の物を提供されています。それ以上は望んでいません」

「なっ、なんだって」

「あの方も、前の人生で色々あったみたいで、憎まれ役を新政府に押しつけようとしていますね」

「なんだって、救える命も救わないで、好き勝手やっているのはハルラじゃ無いって事なのか?」

「そうですね」

 なんてことだ。
 俺は、憎む相手を間違えていたのか。
 いや、心ある者なら飢える子供に手を伸ばし、泣いている女性を救うはずだ。
 それをしないのは同罪だ。

「桜木、お前は何をしに来たんだ」

「ふふふ、私は一人の女性を捜しに来た所です。まさか、アンナメーダーマンに会うことが出来るとは思いませんでした。そう言えばとびきりの美少女がいましたがあれは?」

 俺は大阪城爆発の後裸になり、その後にもう一度アンナメーダーマンの格好をしている。
 この姿であずさ達に会ったのは無防備すぎたか。
 まさか、桜木に見られるとは。

「とうとう、見られてしまったなあ。あれは俺の命より大事な娘だ」

「恐い恐い、脅しが入っていますよ」

 命より大事と言ったことで分かってくれたようだ。
 まあ、桜木になら知られても大丈夫だろう。
 そう言えば、桜木の奴、前回会ったときはガリガリに痩せていたのだが、体が太くたくましくなっている。
 さらに強くなっているのが、にじみ出ている。
 こいつはどこまで強くなるんだか。

「ふふ。所でその女性と言うのは、どういう女性なんだ」

「ええ、冴子という、かわいい女性です。ハルラ様のお気に入りでしてね。行方不明なのですよ」

「な、なんだって」

「知っているのですか?」

「な、名前を聞いたことがあるだけだ。ハルラのもとにいないとなると。まさか、羽柴に捕まっているのか」

「ほう、大阪にはいないと言うことですか。では、京都を調査してみます」

「もう行くのか」

「こうしている間にも、冴子さんが酷い目に遭っているといけませんからね。それに、あの罠で無傷の人に、戦いをいどむ気にはなれませんよ」

 桜木はまだ俺の方が、強いと思ってくれている様だ。
 桜木から漏れ出る強さは相当なものだ。やってみなけりゃあ、わからんと思うのだが、負けるといけないので、言うのをやめておいた。

「そうか。じゃあな」

 冴子さんにはノブが救われた恩がある。無事だといいな。
 桜木が行くのなら大丈夫だろうが、俺の方でも調査して見るか。

 さっきから、考え事の邪魔が入って、何を考えていたのか分からなくなった。
 そうだ。物価だ。
 物価は、底辺の人が豊かになる前は、上げちゃあいかん。
 玉子は百円だ。キャベツも百円。
 木田家のスーパーはこれを守っているぞ。

 俺は、日本中の人が、百円でどこに住んでいても玉子が買えるようにしたい。腹一杯飯が食えるようにしたい。
 だから、戦うのか。少なくとも新政府は倒さなくてはならんと、考えを新たにした。

 ……なんで、俺見てーな底辺おじさんが、こんな事を考えているんだー! いつから……。なんでこうなった?
 くそう、俺は、普通の底辺おじさんだぞー。

 ――はやく普通の底辺おじさんになりたーーい!!



「とうさん! まだこんな所にいたの?」

 あずさが戻って来た。

「ああ、はやかったなあ」

「何を言っているのですか。こっちは助けた女性に、うな重を食べさせてデザートのお茶会までして帰って来たのですよ。ほら」

 あずさが空を指さした。
 空には星が出ている。

「皆は?」

「美術館で眠っています」

「そうか。なら良かった」

 俺はニヤリとした。
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