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第二百二十五話 ハルラのもとへ

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「ついてきな、アンナメーダーマン」

 男は、少しあたりを気にしながら、ニヤニヤ笑いながら言うと、ゆっくり歩き始めた。
 俺が、気が付いていないと思っているのだろうか、城に素早く移動する人影がある。
 まあ、俺じゃ無ければ気づけないのかもしれない、身体能力の高い奴らなのだろう。
 城に入り、扉を開けると先程移動していた奴らだろう、待ち構えている。

「待ちかねたぞ、アンナメーダーマン。はぁー、はぁー」

 お、おいおい。はあはあ言っているじゃねえか。
 お前達も、今来たばかりだろうがよう。なにが、待ちかねただ。うつむいた五人が立っている。
 全員全力で走ってきたのだろう、肩で息をしている。
 それがバレないように下を向いているのか。
 おかげで顔がよく見えない。

 俺を、案内してきた新政府軍十一番隊の隊長の辻は、そのまま上の階へ歩いて行った。

 そう言うことか、ハルラにあいたければ「俺達を倒せ!!」的な奴か。
 悪くねえ。
 乗ってやろうじゃねえか。

「誰から来るんだ?」

「俺からだ!!」

 真ん中の男が一歩前に出た。
 俺は、その男に一歩、二歩と近づく。

「馬鹿め、しねーー、アンナメーダーマン!!」

 俺めがけて、五人が一度に襲いかかって来た。き、きたねー。
 さすがに不意打ちの五人の攻撃は、避けきれない……。
 と、思ったが、遅い!
 なにか、企んでいるのか。

 俺は、ひとまずこいつらの攻撃を、すべて紙一重で避けた。
 そして、中央の男の後ろをとった。

「なっ、なに! はやい!!」

 中央の男は、声を出した。
 まだ、声が出せるほど余裕があると言うことか。
 俺は警戒して、もう一歩離れた。

「遊びは終わりだ。全員本気で攻撃するぞーー!!」

 警戒して正解だった。
 こいつら、まだ本気では無かったらしい。

「うおおおおーーーー!!!」「おりゃああーーー!!!」

 気合いの入ったいい攻撃だ……。
 と、思ったら気合いばかりで、いや、大声ばかりでさっきとあまり変わらない攻撃だった。
 もう一度、紙一重で避けてやった。さっきよりさらにギリギリで避けてやった。

「皆―!! 惜しいぞもう少しだ。もう少しで当たるぞーー!! やるぞーー!!」「おおおーーー!!!」

 い、いやいや。お前ら…………。
 わかれよな。
 だいたいこいつら、城の外での俺の戦いを見ていなかったのかよー。
 この調子じゃあ見ていねーよな。

「ふーーっ」

 俺はため息が出た。
 まさか、それがハルラの作戦なのか。
 俺を油断させようという魂胆なのかもしれない。
 こいつらを相手にしていると、調子が狂いそうなので、少し強めに尻をひっぱたいてやった。

「きゃあああーーー!!! セ、セクハラです」

「うわあああ、ご、ごめん。ごめん」

 今日一、あせった。俺は両手を合せて謝った。
 女が一人混じっていたようだ。まあ、五人いれば一人は女だ。そんな常識を忘れていた。
 くされ野郎のハルラでも強い奴は、女性でも特別扱いをするようだ。

「すきありーー!!」

 しゃがんでいる女性以外の奴が、俺に刃物を刺してきた。
 腰の入ったいい攻撃だ。
 四人の刃物が俺の腹にくい込んだ。
 しゃがんでいた女性も、ゆっくり立ち上がるとナイフを俺の首に当てるとグイッと押し込んできた。
 一番エグい攻撃をしてくる。

 どんな顔をしているのかと、見たら昔テレビで見た女子プロレスのダンプだか、クレーンだかの悪役レスラーの様な顔だった。

「ひゃあーーはっはっは!!」

 どうやら勝ちを確信したようだ。
 もしもこいつらが桜木クラスなら、俺もただじゃあ済まなかっただろうな。油断をしきっていた。
 もちろん、五人の攻撃が俺を傷つけることはない。

「がふっ」

 四人に掌底を合わせ吹飛ばした。
 女性には、きつーい平手打ちを、背中にお見舞いした。
 きっと、一週間は俺の手のひらの跡が消えないだろう。
 倒れた、五人を残して階段を上った。

「はっ、はやいな!」

 階段を昇ると、十一番隊隊長の辻が驚いていた。
 驚くところを見ると、あの五人は十番隊の中でも、やる方なのだろう。

「期待外れだったぞ。てめーは本当に遊び相手になるのだろうな」

 辻は応える代わりに、襲いかかって来た。

「きええええーーーーー」

 空手だろうか、武術の攻撃だ。
 だが、俺には動きが止まって見える。

「返事もしねえで攻撃かよ。あんたを倒せばハルラに会わせてくれるのだろうな?」

 よけながら話しかけた。

「くっ! 俺の攻撃など余裕と言う事か。くそう、そうだ。俺を倒して、最上階まで行けばハルラ様がお待ちかねだ」

 俺の質問にこたえながら、攻撃の手は緩めなかった。
 攻撃は、的確に人間の急所を狙ってくる。
 そうとうな達人なのだろう。
 だが、それでは、まだまだ俺には遠く及ばないよ。
 俺は、全ての攻撃を余裕でよけた。ギリギリでよけると変な誤解を与えるといけないからだ。

「ふふふ、俺程度では、歯が立たないと言う事か」

 辻は、俺からトンと後ろに飛ぶと距離を取った。

「どうした?」

「ふふふ、これ以上戦うほど往生際は悪くねえ。行ってくれ」

 辻は、顔に悔しさをにじませて、笑いながら言った。

「ふむ」

 俺は、一度うなずくと、後ろを気にしながら振り向かず、階段を昇った。
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