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第二百二十二話 想定外

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「くそーー!! 畜生ー!! なんなんだ! あのロボはよう! 本物じゃねえかーー! 次ぎ会ったときは落とし穴に落として、生き埋めにしてやるからなーー!! くそがーー!! 憶えていろ!!」

 明智さんが吐き捨てるように言うと、明智軍は死者を残して撤退を開始しました。
 この状況を見てもまだ、次に戦って勝つつもりのようです。
 機動陸鎧の指揮官機は飛べますし、機動陸鎧天地の跳躍力はちょっとやそっとの穴の深さでは、すぐに飛び出てしまいますよ。
 大丈夫でしょうか?

 上杉様の指揮官用陸凱天紫改のハッチが開きヨロヨロと上杉様が降りてきました。
 そして、取り残された明智軍の兵士を見て手を合せました。

「大切な日本人の命を大勢奪ってしまった。これでは大殿に合わせる顔が無い……」

 目から大粒の涙をポロポロ落として言いました。
 血行まで悪くなっているのでしょうか、唇が紫色になり小刻みに震えています。
 敵軍を打ち倒し、撃退したのだから大勝利です。でも、上杉様の姿はまるで敗軍の将です。

「最早、死んでお詫びするしか無いのか……」

 静かに言った一言は心の底からの本気を感じます。
 私は全速で上杉様に駆け寄ります。

「ごめん!!」

 上杉様は短刀を喉に突き立てました。

「いけません!!」

 短刀の先をつかみ何とか刺さる直前で止めることが出来ました。
 私は姿を現わすと、上杉様の頬を叩きました。

 パーーーン!!

 かなり手加減したつもりですが、大きな破裂音と共に上杉様の体が、少しよろけました。
 見ると上杉様の口から一筋血が流れ、驚きのためか目が大きく見開かれています。

「貴様ー! 殿に何をする!!」

 上杉様の家臣の陸鎧が駆け寄り拳を上げました。

「本庄! よい、控えろ!!」

 上杉様は、手の平を上げると駆けつけた家臣を止めて下さいました。

「はっ!」

「あなたは?」

「は、はい。私は古賀忍軍、い組、組頭の桃井梅香と申します」

「桃井さんですか」

「はい。先程は失礼いたしました」

「いいえ、何故止めたのですか」

「はい。上杉様も貴重な日本人の一人です。これ以上死んでもらっては困ります」

「うふふ、そうですか。大殿ならそう言いそうですね」

 こ、この方は、ひょっとすると女性なのでは無いでしょうか。
 いいえ、女性です。大殿を思い浮かべてか女性の表情になっています。太陽がまるで照明のように上杉様を照らします。
 後れ毛がキラキラ光り、白い肌に潤んだ瞳がとても美しいです。

「はい。大殿に報告し、判断をお任せするのがよろしいかと思います」

 私は、上杉様の美しい顔に見とれていましたが、何とか我に返り言いました。

「そうですね。大殿に……。最早、合わせる顔はありませんが、それでもお会いした方がよいのでしょうね」

「はい」

「本庄! 後を任せる。私は大殿の所へ行って来る」

「はっ!」

「ゾノちゃん、私も上杉様に同行します。しばらく待機して下さい」

 私は、すぐ横で控える若園ちゃんに指示を出しました。

「はい。わかりました」

 そして、上杉様と共に木田軍本陣、通天閣へ急ぎました。





 ことごとく俺の想定外の事が起っている。
 ふふふ、まあそうだろう。
 将棋をしても、俺はとても弱い。
 王手飛車取りの場合、俺は迷わず飛車が逃げる。

「おいおい、王が取られたら負けだぞ」

「馬鹿を言うな。王が取られたら飛車が次の王様だ」

 これが通る相手ならそのまま続けて、駄目だと言われればそのまま負けを選択するような男だ。
 俺の目の前には、将棋盤の様に格子が書かれた地図がある。

「ほ、報告します」

「うむ。どうした」

「上杉軍、敵明智軍より銃撃を受け戦闘状態に入りました」

 明智軍の駒と上杉軍の駒を動かしそれをぶつけた。
 ここからは、直接明智軍と上杉軍の姿は見えない。丁度大阪城の影になり見えないのだ。
 古賀忍軍の報告では明智軍は五千、対する上杉軍は千五百、数の上では圧倒的に不利だ。

 しかも報告では、明智軍は火縄銃を装備しているとのこと。
 火縄銃はあれで結構優秀な武器だ。射程五十メートル位の所でなら三ミリの鉄板を打ち抜くほどの威力を持っている。
 上杉軍が無事なら良いのだが。

「大殿、ようやく尾野上隊長の陣に女性達が移動を開始しました」

 古賀さんが教えてくれました。
 ここでも、俺の想定外が起きている。
 冴子さんがいると思っていたのだが、いなかったのだ。
 一体どこにいることやら。
 しかも、女性達は裸で捕らえられていて、俺の大事なコレクションを取られてしまった。まさかコレクションを一度に失うなんて考えてもいなかった。

「そうですか。真田隊もうまく戦ってくれていますね」

 この上は、避難している女性のパンツでも見てやろうと思いますが、ここには古賀さんもミサもいます。
 見ている事をバレないようにしないといけません。
 エロい気持ちはありませんが、芸術として美しさは感じるのです。

「大殿! 上杉様がいらっしゃいました」

「えっ!?」

 なんで上杉が来ているのだろうか。
 まさか玉砕したなどということは無いと思いますが。

「どうしましょう?」

 古賀さんが聞いて来ます。
 まさかパンツを見たいから、後にしろとは言えないだろうなあ。

「すぐに通して下さい」

「はい」

 重々しい感じの二人が入って来ました。
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