217 / 428
第二百十七話 静かな夜明け
しおりを挟む
「せ、せんえつながら」
古賀さんが、俺の作業を見て声をかけてきた。
「どうしました」
古賀さんに対してはどうしても丁寧に話してしまう。
聖母のような女性にいつもの様には話せない。
心も穏やかになっている。癒やされているのだろうか。
「ゴーレム魔法を使うのでしたら、服の形に成型しなくてもよいのではないでしょうか」
「ああ、それですか。そうですね。立方体で出して、ゴーレム化しても結果は同じかも知れません」
「では何故?」
「ふふふ、そうですね。俺が死んで魔力が切れたとき、ひょっとすると立方体に戻ってしまうかもしれません。そのとき装着していた人はどうなるのでしょうか」
「……!? つぶれて死んでしまう……」
「可能性があります。なので、最初から着たときの形にしています。力を入れるとパカッと二枚貝のように開くようにしてあるんですよ」
「も、申し訳ありません。やはりシュウ様はすごいお方です。そしてお優しい」
うーむ、シュウさんからシュウ様になってしまった。
人命優先は当たり前の事だと思うのですが。
「そんな、たいしたことではありません。当たり前の事です」
「いいえ、いいえ」
首を大きく振ると、うるうるした目で頬を赤らめて見つめてきます。
アドまで俺の顔をのぞき込んで来た。
その後は、二人と十二人が静かにそれでいて熱い視線で俺をみつめています。
「あの、退屈じゃありませんか」
「いいえ……はっ、お邪魔でしたか?」
「それこそいいえです。古賀さんの様な美人に見守られていれば、疲れ知らずで頑張れます」
「まぁ……」
古賀さんが赤くなって照れていると、アドが指で背中をツンツンしてきた。
アドの指は小さくて細いので、力は入れていないのだろうけど、なにげに突き刺さってきて痛い。
「かわいいアドに、見守られていると疲れも吹飛ぶよ」
吊り目の子猫のようなアドが赤くなってくねくねしている。
かわいいんだよ。滅茶苦茶かわいいんだけど、お前二十九歳だからなあ。
まあいいか。
俺は作業に時間がかかりそうなので、退屈そうな古賀忍軍に窓の目張りをたのみ、外に光が漏れないようにしてもらった。
当然一人、外から確認もしてもらった。
こんな所で俺達の存在が新政府軍にばれては意味が無い。
忍者装備が二百体出来上がった頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。
「ほう、美術館の司令部ですか」
古賀さん達と、お茶を飲んで休憩していると、伊達が入って来た。
その後に続いて上杉と、スケさんとカクさん響子さんカノンちゃんが入って来た。
机と椅子を増設して全員が座れるようにすると、伊達の言うように軍司令部の作戦会議室のようになった。
「一人になりたいって、言っていたと聞きましたが!!」
遅れて入って来たミサがプリプリ怒っている。
「俺は、そのつもりだったが、最近ではそれも無理だったようだ」
「ふふふ、それは残念でした」
しばらく打ち合わせというお茶会をして、平城宮跡の大和解放軍本部へ、ミサのテレポートで移動した。
このまま古賀さんが配下と使用したいというので、美術館の木田軍司令部は古賀さんとリルに任せる事にした。
翌日一月二十九日
平城宮跡の大和解放軍本部に、続々木田家の部隊が入ってくる。
最初に上杉軍続いて伊達軍が移動してきた。
伊達、上杉軍は千五百ずつの緑色の機動陸鎧だ。
上杉は天地と名付け、伊達は天竜と名付けている。
そして、指揮官機が二体、上杉専用機と伊達専用機だ。
「かっけー、ロボだー。ロボー!!」
ノブが大喜びしている。
遠距離の部隊から先に移動させた。先に入り三十日を休日にして、ゆっくり休養を取ってもらうためだ。
翌、三十日
真田隊、重装歩兵三百と真田の指揮官用機動陸鎧。
尾張から、黒い具足隊百、加藤の指揮官用機動陸鎧。
同じく尾張から、東隊が黒い具足隊百、指揮官用機動陸鎧。
そして、今川家尾野上隊、黒い具足隊千に尾上隊長用指揮官用機動陸鎧。
さらに藤堂隊、黒い具足隊が五百、指揮官用機動陸鎧。
以上の部隊が順次到着した。
平城宮跡の大和解放軍本部の広場に、全軍が整列すると圧巻だった。
「これが、木田家全軍ですか?」
解放軍の柴井班長が俺の横に来て聞いて来た。
「そうですね。今回の戦に参加するのはこれだけです」
「うちのアンナメーダーマン、シールドより、強そうですなー」
「いいえ、本気のアンナメーダーマンシールドは、一対一なら、互角以上のはずです」
「そ、そんなに強いのですか?」
「まあ、全体がアダマンタイト製で質量が多いですからね。それにアンナメーダーマンですから」
「な、なるほど」
「ミサ、俺を美術館の司令部へ移動してくれ、その後指揮官を移動してきてくれ、兵士は、三十一日深夜までは休養だ」
「はい」
こうして、美術館の軍司令部で最終の打ち合わせを済ませた。
翌三十一日
深夜より軍備を整え、翌二月一日、夜明けに布陣を終えるよう木田軍は静かに行動を開始した。
俺は、一月三十一日の夕方から通天閣に登り、地図に明日の布陣を作ると、大阪城の横の不夜城の明かりを見つめていた。
俺の横には、古賀さんとアドとミサの姿があった。
時間を忘れて見つめていると、東の空が少し明るくなってきた。
いよいよ、大阪の荒野に木田軍が突如現れる瞬間がやって来た。
古賀さんが、俺の作業を見て声をかけてきた。
「どうしました」
古賀さんに対してはどうしても丁寧に話してしまう。
聖母のような女性にいつもの様には話せない。
心も穏やかになっている。癒やされているのだろうか。
「ゴーレム魔法を使うのでしたら、服の形に成型しなくてもよいのではないでしょうか」
「ああ、それですか。そうですね。立方体で出して、ゴーレム化しても結果は同じかも知れません」
「では何故?」
「ふふふ、そうですね。俺が死んで魔力が切れたとき、ひょっとすると立方体に戻ってしまうかもしれません。そのとき装着していた人はどうなるのでしょうか」
「……!? つぶれて死んでしまう……」
「可能性があります。なので、最初から着たときの形にしています。力を入れるとパカッと二枚貝のように開くようにしてあるんですよ」
「も、申し訳ありません。やはりシュウ様はすごいお方です。そしてお優しい」
うーむ、シュウさんからシュウ様になってしまった。
人命優先は当たり前の事だと思うのですが。
「そんな、たいしたことではありません。当たり前の事です」
「いいえ、いいえ」
首を大きく振ると、うるうるした目で頬を赤らめて見つめてきます。
アドまで俺の顔をのぞき込んで来た。
その後は、二人と十二人が静かにそれでいて熱い視線で俺をみつめています。
「あの、退屈じゃありませんか」
「いいえ……はっ、お邪魔でしたか?」
「それこそいいえです。古賀さんの様な美人に見守られていれば、疲れ知らずで頑張れます」
「まぁ……」
古賀さんが赤くなって照れていると、アドが指で背中をツンツンしてきた。
アドの指は小さくて細いので、力は入れていないのだろうけど、なにげに突き刺さってきて痛い。
「かわいいアドに、見守られていると疲れも吹飛ぶよ」
吊り目の子猫のようなアドが赤くなってくねくねしている。
かわいいんだよ。滅茶苦茶かわいいんだけど、お前二十九歳だからなあ。
まあいいか。
俺は作業に時間がかかりそうなので、退屈そうな古賀忍軍に窓の目張りをたのみ、外に光が漏れないようにしてもらった。
当然一人、外から確認もしてもらった。
こんな所で俺達の存在が新政府軍にばれては意味が無い。
忍者装備が二百体出来上がった頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。
「ほう、美術館の司令部ですか」
古賀さん達と、お茶を飲んで休憩していると、伊達が入って来た。
その後に続いて上杉と、スケさんとカクさん響子さんカノンちゃんが入って来た。
机と椅子を増設して全員が座れるようにすると、伊達の言うように軍司令部の作戦会議室のようになった。
「一人になりたいって、言っていたと聞きましたが!!」
遅れて入って来たミサがプリプリ怒っている。
「俺は、そのつもりだったが、最近ではそれも無理だったようだ」
「ふふふ、それは残念でした」
しばらく打ち合わせというお茶会をして、平城宮跡の大和解放軍本部へ、ミサのテレポートで移動した。
このまま古賀さんが配下と使用したいというので、美術館の木田軍司令部は古賀さんとリルに任せる事にした。
翌日一月二十九日
平城宮跡の大和解放軍本部に、続々木田家の部隊が入ってくる。
最初に上杉軍続いて伊達軍が移動してきた。
伊達、上杉軍は千五百ずつの緑色の機動陸鎧だ。
上杉は天地と名付け、伊達は天竜と名付けている。
そして、指揮官機が二体、上杉専用機と伊達専用機だ。
「かっけー、ロボだー。ロボー!!」
ノブが大喜びしている。
遠距離の部隊から先に移動させた。先に入り三十日を休日にして、ゆっくり休養を取ってもらうためだ。
翌、三十日
真田隊、重装歩兵三百と真田の指揮官用機動陸鎧。
尾張から、黒い具足隊百、加藤の指揮官用機動陸鎧。
同じく尾張から、東隊が黒い具足隊百、指揮官用機動陸鎧。
そして、今川家尾野上隊、黒い具足隊千に尾上隊長用指揮官用機動陸鎧。
さらに藤堂隊、黒い具足隊が五百、指揮官用機動陸鎧。
以上の部隊が順次到着した。
平城宮跡の大和解放軍本部の広場に、全軍が整列すると圧巻だった。
「これが、木田家全軍ですか?」
解放軍の柴井班長が俺の横に来て聞いて来た。
「そうですね。今回の戦に参加するのはこれだけです」
「うちのアンナメーダーマン、シールドより、強そうですなー」
「いいえ、本気のアンナメーダーマンシールドは、一対一なら、互角以上のはずです」
「そ、そんなに強いのですか?」
「まあ、全体がアダマンタイト製で質量が多いですからね。それにアンナメーダーマンですから」
「な、なるほど」
「ミサ、俺を美術館の司令部へ移動してくれ、その後指揮官を移動してきてくれ、兵士は、三十一日深夜までは休養だ」
「はい」
こうして、美術館の軍司令部で最終の打ち合わせを済ませた。
翌三十一日
深夜より軍備を整え、翌二月一日、夜明けに布陣を終えるよう木田軍は静かに行動を開始した。
俺は、一月三十一日の夕方から通天閣に登り、地図に明日の布陣を作ると、大阪城の横の不夜城の明かりを見つめていた。
俺の横には、古賀さんとアドとミサの姿があった。
時間を忘れて見つめていると、東の空が少し明るくなってきた。
いよいよ、大阪の荒野に木田軍が突如現れる瞬間がやって来た。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる