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第二百十話 水着と暗い話し

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「青い空、青い海、温かい風、そして、あふれんばかりのゾンビ先生! 澄んだ海には、サメ先生! 来たぞー! ハワイ!!」

 砂浜に結界を張り、ゾンビ先生を追い出して、海には金属製の柵を入れて、サメ先生の追い出しをする。
 その間に女性陣は着替えを済ませたようだ。

 スケさんとカクさんは女性の水着には興味が無い。
 テントの下でサングラスをして、アロハと短パンで横になっている。マフィアの用心棒のようだ。
 ノブは子供用の、激豚の海パンで、もう水の中に入っている。
 俺も、女性の水着には正直興味が無い。
 カクさんの横で仰向けになって横になった。

「うわあーー!!」

 ちびっちゃい、星条旗の水着が目の前に急に現れた。
 そ、その位置はまずい。
 あおりで、のぞき込むような形で、アメリちゃんの水着を見てしまった。
 つーか、相変わらず布が少ない。
 見た目が幼児のきわどい星条旗のビキニなんか見たい人がいるのかーー。

 そして、美少女軍団が出て来た。
 可哀想に全員お揃いの水着を着させられている。
 白のふわふわフリフリ付きのスライム水着だ。
 あずさが青のスライム、ヒマリちゃんが黄色、愛美ちゃんがオレンジ、エマが赤、ライが緑だ。
 よかった。ライも女の子用を着させてもらったようだ。

 ――つーか、スカートをまくって、お尻をフリフリすんなーー。

 続いて、おねーさんチームか。
 坂本さんが赤色で、ミサが青色、そして古賀さんは紫色、カノンちゃんが黄色かー。アドー! お前が何でそのグループなんだー。
 一人、幼女がまじっとるぞー!!

 ――あー、アドは二十九歳か、あってるね。

 全員、布が少ない。お尻がほとんど全部出とるぞ。
 そんで、フリフリすんなー。
 ミサはやばいだろう、激しく動いたら、ポロリしそうだー。

 そして、熟女チームか。
 はるさんに、リンさんに、響子さんか。
 紺色に、緑に、響子さんはピンクなのかよー。
 でもまあ、露出度は少ないね。丁度良い。
 お尻フリフリもしないようだ。大人だね。残念!!

「ふふふ、カクさん。赤い飛行艇を浮かべたいね」

 俺は、カクさんに話しかけた。

「それは、私も思いました」

「シュウさん。おちびさん二人は、ほとんど裸じゃねえか」

 ノブが戻って来て驚いている。

「大丈夫だ。二人ともただのロリババアだ! ごぶう!!」

 ロリババアのアメリちゃんと、アドが腹にパンチを入れてきた。
 結界まで吹飛ばされた。
 二人ともずいぶん手加減をしてくれたようだ。
 胃袋は飛び出さなかった。

「ひ、ひでえ」

 ノブが驚いている。

「ノブ、気をつけろ! あのおちびちゃんは二人とも、お前より強いはずだ」

「わ、わかった」

「なあ、ノブ!!」

「なんだい?」

「お前が、どうやって崩壊した世界で過ごしてきたのか、聞かせてくれないか?」

「そう言うことか。なんで邪魔者の俺が呼ばれたのかと思っていたのだけど、それが聞きたかったんだね」

「ち、違うぞ、邪魔者などと思っていない。男が居れば、あの女性達の、破廉恥水着を見ないですむと思ったんだ。だが、ノブは子供扱いで男には入らなかったようだ」

「だ、だれが、破廉恥水着だーー!!」

 恐い女性達が怒っている。
 また、失言したようだ。セクシー水着の方がよかったのかな。
 しかし、あいつら、よりによってビーチバレーなんか始めやあがった。

「そっちかよう。女の人って、男がいないとあんなすごい水着を着るんだなあ」

 ノブが、変なところに感心している。

「ぶふっ!!」

 スケさんと、カクさんが噴き出した。
 なにか噴き出すような所があったか。

「どこから聞きたいんだい。面白い話しは無いよ」

「そうだなー。隕石騒ぎが起きて、皆が慌てだした時からかな。実は俺は、その時の事をあまりよく知らないんだ。特に子供から見た世界が知りたいんだ」

「いいよ。うまく話せるかどうかわからないけど話すね」

「ああ頼む」

「隕石の落ちる事が発表されて、六ヶ月が過ぎた頃世界では、暴動が起っていて、毎日テレビやネットでその事が放送されていたんだ。日本は何事も起きないのかと思っていたけど、その日は突然やって来たんだ。お店から食べ物が消えたんだ。スーパーもコンビニも食べ物が何も無くなったんだよ。その日から転売ヤーがカップ麺を一個五千円で売り出した。次の日には一万円になったんだ。お父さんは『これは大変な事になる』そう言ってお風呂に水をためて、手分けしてお店を回ったんだ。やっぱりお店には食べ物は売っていなかった。そんな時に僕が、自販機に気が付いてミネラルウォーターを買い集めたんだ」

「すごいな。頭が良い」

「ふふ、でも、三日目には電気が来なくなって、水道もガスも来なくなったんだよ。電気が止まった時は夜で、近所から悲鳴が上がったんだ。それからしばらくは家族四人で、静かに家で暮らしたんだ。お父さんは会社に行くことも出来ないし、僕も妹のノゾミも学校には行けなかったんだ。最初は、『なんだかキャンプみたいで楽しいね』なんてのんきに言っていたんだ。まだその時には、近所に人はいたのだけど、その内に親戚の家や、実家が心配と言って出て行く人が多くなって、近所から人の気配がだんだん少なくなったんだ。食べ物は節約して食べていたけど、十日くらいで残りがわずかになってしまったんだ」

「うん、だろうな」

「お父さんと、お母さんは食糧を捜してくると言って、家の中のお金を全部持って、車で出かけたんだよ。僕とノゾミはその日から二人きりになっちゃったんだ。あんまり仲はよくなかったけど、この日からはいつも一緒さ。昼間は子供部屋で、二人で過ごして、夜は一緒のベットで眠ったんだ。お風呂の水が少なくなった時、雨が降ったんだ。二人ともパンツ一丁になって、まずはバケツや洗面器で雨ドイの水をためて、手分けしてお風呂に貯めたんだ。その後は二人で、外で体を洗いあったんだよ。なんだか楽しかった。近所からは人の気配がどんどん無くなって、もう世界にはノゾミと僕しかいないのじゃ無いかと思ったんだ」

「うん、そうか」

「うん、でもね。妹がいたから全然寂しくなかった。『今日はマヨネーズ定食』なんて言って、小さなお皿にマヨネーズとケチャップを出して、それをなめるだけの日とか、砂糖をスプーン一杯ずつの日とか、もう食べる物が本当に無くなって来たんだ。でも、僕達は何処へも行けなかったんだ。だって、お父さんとお母さんがいつ帰ってくるかわからないだろ。仕方が無いから僕は、近所の誰もいない家に忍び込んで、食べ物を捜したんだ。ふふふ、どこも一緒さ、食べ物なんて何も無いんだ」

「だろうな」

「そんな時、大変な事が起きたんだ。僕と妹の子供部屋は二階にあるのだけど、一階で人の声がしたんだ。『さがせーー、食い物をさがせーー!!』誰かが泥棒に入ってきたんだ。『恐い!』妹が小さな声を出すと僕にしがみついてきたんだ」

「そ、それで」
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