底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
上 下
182 / 428

第百八十二話 再会

しおりを挟む
 損害の確認が終ると、ただちに部隊の編成が行われた。
 この時爺さんは、奪った階級章を監察の隊員に渡したようだ。

 敵の体勢が整わないうちに戦いたいのだろう、このまま再度出陣が決まった。目標は瀬田川にかかる橋のようだ。
 敵の主力が京都にいるため、留守番の兵だけと考え、一気に奪うつもりのようだ。
 ここを奪われれば、物資の補給が出来なくなるので、羽柴軍は京都からの撤退を余儀なくされる。重要な任務だろう。

「また出陣かー」

 爺さんがぶつくさ言っている。
 俺達は、相変わらず集団の後ろの方でゆっくり進む。
 前方で少し喚声が上がったが、すぐに静かになり、京滋バイパスの橋はすぐに奪い終った様だ。
 俺達のようなやる気の無い奴らは留守番に選ばれ、京滋バイパスの守備を命じられた。

「金城ー! 金城ー!」

 十一番隊の副隊長が誰かを探している。

「おい、じじい!! お前が金城じゃねえのか!」

 副隊長が、爺さんを怒鳴りつけた。

「おお、そうじゃ。そうじゃった。わしが金城だった忘れておった」

 そ、そんな奴はいないだろう。
 自分の名前がわからないなんてよー。ありえねーー。

「頼りねーなー。まあいい! ここの守備は金城に任せる。ほれ階級章だ付けておけ」

「えっ!?」

「えっ、じゃねえ。あんたは手柄を上げた。軍曹に昇進だ。丁度ここを任せる奴もいねーしな。ここの守備を任せるということだ。失敗は十一番隊の全滅を意味する。重要な役目だ! 頼むぞ」

「はぁーーっ、無理じゃ、出来ん」

「無理じゃねえ、命令だ。わかったな。頼んだぞ」

「まっ、待ってくれ」

「ふふふ、心配なら、その新人を副官にすればいい」

 そう言うと行ってしまった。
 残ったのは、一番役に立たそうな、数十人だった。
 ブルとチンの姿もあった。

「アンちゃんどうする?」

 ど、どうすると言われてもなーー。
 だが、副隊長は何で俺に手伝えと言ったんだ。
 まさか、爺さんを助けるところを見られていたのか。
 たいしたことは、していないつもりだったけど、目立ってしまったのか。

「じゃあ、バリケードの修復でもしましょうか」

「そうじゃな! よーーい!! 全員立てーー!! 全員バリケードの補修をするんだー」

「なにーーっ、爺! なんでてめーが指図しているんだ」

「はっはっ、これを見よ。わしがここの指揮官じゃ。お前達の上官様だー!」

 すげー、この爺さんも、偉くなると手に負えなくなるタイプだ。
 さっきまでの羽柴軍の陣だった所を、手直しして新政府軍の陣として使用する。

「アンちゃん行くぞ」

 そう言うと、爺さんは足軽を働かせたまま宿舎に向った。
 足軽用の物より上等なテントが、一張りだけ有って目立っている。
 中には上等な机と椅子がある。
 爺さんはそこにふんぞりかえって座った。

「ひゃはは、一度やってみたかったんじゃ」

 爺さんは、上機嫌だ。
 机の引き出しを次々開けて中を見る。

「ちっ、しけとるのー。食い物が入っとらん」

 机の上に地図が開いて置いてあった。
 見たら、この橋の北にも橋が有り、そちらの方が重要性は高そうだ。
 恐らく、この橋は見捨てられて何事も起きないだろう。
 さっきのは副隊長の脅かしの様に思える。

 爺さんはと言うと、椅子にふんぞり返って座ってはいるが、手がアル中の様に震えている。
 まあ、面白いので教えてやらないでおこう。
 そんなに、最重要な所を俺達みたいなものに任せるはずもない。
 当たり前の、はなしだ。

 最前線では喚声が止まない。羽柴軍も必死なのだろう、犬飼隊長の苦労が伝わってくる。
 だが、我が金城隊は何事もなくのんびりしている。
 爺さんは、緊張が解け、震えも止まり、とうとう居眠りを始めた。



 日が傾きかけた時、若い隊員が飛び込んできた。

「た、大変です」

「うおっ、おはようございます」

 爺さんは、居眠りからさめて、とっさにあいさつをしている。

「ぷっ」

 入ってきた若い隊員が笑っている。

「どうしました?」

 仕方が無いので爺さんのかわりに俺が聞いてやった。

「はっ、兵士がやって来ました」

「なななっ……」

 爺さんに緊張が走り、どんぐり眼の目玉が、さらに見開かれ落ちそうだ。それに加え、両手が信じられないほど震えている。
 まるで、手を洗った後で水を吹き飛ばしているように見える。

「何人ぐらいですか?」

「はっ、千人は超えています」

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁーーー!!!! 死ぬーー! 死ぬのは嫌じゃーー!!!!!」

 おいおい、爺さん、あんたが一番長生きしたはずだろー。

「ぶっ」

 また、若い隊員が噴き出した。
 敵兵が来たにしては落着いている。

「おい! 出迎えが遅い!!!」

 怒りながら男が入ってきた。

「井上隊長!!」

 入ってきたのは十二番隊の井上隊長だった。

「シュ、シュウさん」

 遅れて入って来たのは、スケさんとカクさん、響子さんとカノンちゃんだった。

「ど、どうぞ」

 爺さんは席を立ち、井上隊長に席を譲った。

「何故ここへ」

「ははは、犬飼からの依頼だ。それに、街道の守備はもともと十二番隊の仕事だ。ご苦労、ここはまかせて前線に戻って良いぞ」

「へっ!?」

 爺さんの目玉が落ちそうなほど飛び出した。
 思わず若い隊員が、爺さんの目玉を受けとめようと手を差し出した。
 せっかく楽が出来ると思ったのに、半日で終ってしまったようだ。
 だが爺さん、あんたに班長は無理だ。
 あんなにいちいち、うろたえていたら、寿命が縮んじまうぜ。

「なるほど」

 井上隊長は、机の地図を見て何かを感じたようだ。

「ここはスケさんに任せる。足軽は百人でいいだろう」

「カクさんと響、カノンはこの爺さんと一緒に残りの足軽を連れて前線に入ってやってくれ。俺は木津川へ戻る」

「はっ!」

 カクさんが代表をして、返事をした。
 響子さんとカノンちゃんの目玉がぴょんぴょん弾んでいる。
 声を出していないのだが、目玉がうるさい。

 井上隊長は数人お供を連れて、すぐに宿舎を出た。
 さすがは隊長を任されることはある。状況判断が的確で速い。
 カクさんは、井上隊長がいなくなるのを確認して戻って来た。

「シュ、シュウ様!!」

 響子さんとカノンちゃんが抱きついて来た。

「ま、まだ、数日しかたっていませんよ」

「ふふふ、一日千秋と言う言葉もございます。あいとうございました」

 なーーっ、響子さんかわいいなー。
 って、おい。俺みたいなもんに、そんなことを言っちゃあ本気にしちまうぜ。
 大体免疫がねえからよー。

「あんちゃんとあんたらは知り合いなのか」

「そうです」

「よかったのう。再会出来て」

 爺さんは涙ぐんでいる。
 憎めない爺さんだぜ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...