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第百十五話 再会

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「あずさ、分かっていると思うが、二十人の捕らえられていた女性は、凛へ。江藤達は柳川に引き渡してくれ。江藤達は国外追放だから美濃への再入国は禁止と伝えてくれ」

「はい」

「あの、私達はここにいたいです」

 坂本さんがとうさんを見つめて、頬を赤くしていいました。

「だめだ。美女に夜更かしは敵だ。美容に悪いからな。全員、今日は帰って、柔らかい布団でぐっすり眠ってくれ。あずさもだぞ」

「……はい」

 私を含めて、全員が小さな声で返事をしました。





「さてと、良く燃えているなあ」

 あたりがオレンジ色に染められ、黒い影がユラユラ揺れている。
 きっとドローンで見たら、美しいだろう。
 オレンジの炎に包まれた、真夜中の岐阜城。絵になる。
 この山にはリスがいるようだ。城の影に火から逃げてきて、隙間に入って隠れている。

「人払いはした。待ってくれてありがとう」

 俺は、山に向って声をかけた。

「ふふふ、まさかバレるとは思いませんでしたよ。益々強くなっているのですねえ」

「あんたの成長にはかなわないと思うがなあ」

 俺の前に、ガリガリに痩せた一人の男が立っていた。
 痩せているから、一見ひ弱そうに見えるが、強さが浸みだしている。
 やばい強さだ。

「ひょっとして俺が気づかなければ、そのまま帰ってくれたのか」

「いいえ、気配を殺している私に気が付かない程度ならば、後ろからこっそり近づいて殺しています」

「すごいなー。雰囲気までまるで違っている。何があったんだ」

「私は、とことんハルラ様と相性が良かったのでしょうね。強い強化魔法をかけられても、自我が保てています。相性が悪い相手は、体が巨大化して精神が保てなくて、さらに強化されると、体が破裂します」

「そうか。ガーはあれ以上強化されると爆発しちまうのか」

「そうですね。私はその限界を突破しました」

「なるほどなー。限界を突破すると体がシャープになるのか。まあ、薬でもやって、廃人になったようにもみえるがな」

 頬がこけ、見えている指は骨と皮だけになっている。
 普通なら栄養失調の状態だろう。
 だが、落ち込んでいるが目だけはやけに鋭く赤く光っている。

「恐縮ですが、一撃入れさせてもらってもよろしいですか」

 物腰がすごく柔らかい。
 これが本当の強者の余裕だと言わんばかりだ。

「ふふふ、お手柔らかにな。なんだか消し飛ばされそうだ」

 男は、声を発するでも無く無音で体を回転させて、拳を俺の顔に合わせてきた。

 ボン

 ピシィィィーーー

 ビィィィィン

 最初に男の拳が、空気の層を押しつぶし破裂音がした。
 俺はその拳を、手のひらで受けた。
 普通、手の平からの音は、パチンとかぺチンとかそんなもんだろう。
 だが、男の拳を受けた俺の手の平からは、落雷を直撃したような可愛げのない音がした。
 そして、その音は岐阜城の壁に反響して、岐阜城からしばらくビーーンという音が鳴り止まなかった。

「……」

 俺も男も黙った。
 俺は、驚いていた。
 こんな攻撃、十式戦車の砲撃並みだ。
 それは、男も同じなのだろう、恐ろしい顔を俺に向け、気持ちの悪い赤く光る目を俺に向けている。
 そして、表情が驚きの表情だ。

「あーーはっはっはっーーーーーー!!!!!」

 俺と男は大笑いした。

「どう思いますか?」

 唐突に俺に男が質問してきた。
 パンチの感想を聞いているのだろう。
 正直すごいパンチだと思うが、この数倍でもなんともない。

「すごいパンチだなー。普通の人間なら防御も関係無しに吹き飛ぶレベルだ」

「ふふふ、世界チャンピオンが日本チャンピオンに言うセリフみたいですねえ」

 ふむ、男にとっては渾身の一撃だったのだろうか。

「そんなに偉そうだったか?」

「いえいえ、自然だったのです。えらそうも何も無く、自然です。少しくらい焦ってほしかったですねえ」

「なあ、桜木。聞いてもいいか」

 男は、以前江戸城で戦った桜木だった。
 俺は、桜木がこれ以上何もしないと思い話しかけた。

「なんですか?」

「あんたは、そんなに強くなって何がしたいのだ」

「私にあるのは、忠義です。ハルラ様の命令を忠実にこなす忠誠心です。ハルラ様の命令『アンナメーダーマンを殺せ』それが私のなしとげたいことです」

「すごい忠誠心だなー。ならばあえて聞こう、あんたとなら俺は世界が救えるかもしれない。俺の配下にならないか」

 俺は、ゲームのラスボスのようなセリフを言ってみた。

「あーーーはっはっはっ!! 面白い人ですねえあなたは、そして魅力的だ。一瞬そうしたいと思いましたよ」

 ふふふ、勇者のように断りやがった。
 なんだか、ゲームの魔王になった気分だ。
 そう言えばハルラはあずさの、前世の世界では勇者だったと聞いた。
 桜木は勇者陣営ということか。
 あーーっ、そうだ、あずさ自身は魔王城のメイドだったと聞いた。
 となると俺が魔王という事になる。

「ならば、生かして返すわけにはいかねえぜ」

 俺は魔王を演じてみた。

「ここで、ハルラ様に忠義を尽くし死んでしまうのも悪くありませんね。どうぞ」

 どうぞって、すでに俺に勝てねえと判断しているのか?

「いや、やめておこう。あんたはまだまだ強くなりそうだ。強くなったあんたともう一度戦いたいからな」

「ふふふ、では、次に会ったら、また正々堂々戦いましょう」

 桜木の姿が消えた。

「さくらぎーーーっ! またなーーー!!!!」

 あいつ、正々堂々と言いやがった。
 俺は汚い真似はしません、と言っているようなもんだぜ。
 あんな忠義の男が家臣にいて欲しいもんだぜ。
 ハルラの糞野郎にはもったいねえ。
 だが、次に会ったら、勝てるかなあ。

「全く、おかしいと思ったら、やっぱりでした」

 あずさの声だ。

「ほんとうです。でも、女の人じゃ無くて良かった」

 古賀さんだ。
 五人の美女達が姿を現わした。
 全くこいつら、人の言いつけを何だと思っているんだよう。

「本当です。古賀さんが浮気だっていうから、心配しましたー」

 坂本さんが言った。
 他の全員がうなずいている。
 いやいや、そもそも、浮気にはならんだろう。

「お、お前達、来るなと言っただろーー」

「こっそり来いという、フリかと思いましたーー」

 はあーーーっ! やれやれだぜ……
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