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第百十一話 賭け

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「!?」

 古賀さんは、そのこぶしが当たると思った瞬間、目にも止まらぬ速さで後ろに下がりかわしました。
 よかった!!
 当たったと思いました。

「てめーー!! 避けるんじゃねえ。次、避けたら女を殺すぞ!」

 ガーがこぶしを引き戻し、古賀さんに向けて前に突き出しました。

「きゃああーーー!!!」

 古賀さんが甲高い悲鳴を上げました。
 こぶしが胸に直撃しています。
 でも、一瞬のことでしたがコスチュームが少し膨らんだように感じました。まるでエアバッグのように。
 古賀さんは何か武術の上級者のようです。きっちりダメージを受け流すように受け身を取っています。

 えっ!?
 良く見ると、コスチュームからスプリングの様な物が体の着地点に出てダメージを吸収しているみたいです。
 ゴロゴロ転がっていますが、悲鳴ほどダメージはないと思います。

「ひゃあはっはっはーー!!」

 角刈りの隊長が、手を叩いて喜んでいます。

「でええーーい」

 古賀さんは体勢を整えて、すごいスピードでガーに突進します。
 やはりダメージはほとんど無かったようです。
 そのまま、ガーに頭から飛び込んで、胸に頭突きを合せました。

 ボン

「ガハッ」

 低い破裂音がすると、ガーは口から空気を吐き出して倒れ、動かなくなりました。

「やったーー!!」

 坂本さんが喜んでいます。

「貴様あー、何攻撃しているんだよー! 無様に負けていれば良かったんだ! くそがあああーーー!!! てめーら、人質を半分ぶち殺せーーーーー!!!」

「まって、約束が違う! 一対一で勝ったら人質は開放してくれるはずじゃ無かったのですか!」

 坂本さんが慌てている。

「てめーら、俺はそんなアホな約束をしたかーーー?」

「へへへへへ」

 手下達は不気味に笑っている。

「もし勝ったら、人質を半分ぶち殺すって言ったんだよなーーー!!」

「ひゃあーーはっはっはーー」

 手下達が一際大きな声で笑い出した。
 坂本さん、もうこいつらには何を言っても無駄みたいです。
 私は怒りと、自分のふがいなさに、涙が止まらなくなりました。

「やれーーー!!!」

「まっ、待ってほしい。私はどうなっても構わない。人質の命だけは助けて欲しい」

 坂本さんは、ふたたび土下座をして懇願した。

「ひゃあーーはっはっはーー!!!!」

 全員で馬鹿笑いをしている。

「何でもすると言う事か!!」

 土下座をする坂本さんの前に角刈りは数歩近づいた。
 そして、いやらしい目つきで坂本さんを見下ろして、ジロジロ体をなめ回すように見ている。

「どうせ、てめーみてーな、あばずれはゴリラみてーな顔なんだろうけどな、顔を見せろ!!!」

「くっ! アプザーゲ」

 坂本さんは、変身を解除した。
 当然その体は、真っ赤な露出の多いビキニです。

「ぎゃあーはっはっ!! てめーは、なんて下着をつけているんだ。俺達を誘惑するつもりかよ! おいっ!!! いつまでそうしているつもりだーー!! 顔を上げて、さっさとツラをみせねえか!!」

 坂本さんは、下に向けていた顔をゆっくり上げていく。

「……」

 馬鹿笑いをしていた、男達から笑いが消えた。

「て、てめーー、綺麗じゃねえか」

 坂本さんの髪はショートです。出来る美人秘書のような感じの女性です。
 ただ、ここの男達を黙らせる位の美貌です。
 その坂本さんが、瞳に涙をためて、男達の方を見ました。

「おい、そっちのテメーも、顔を見せろ!!」

 角刈りの隊長は、古賀さんにも顔を見せるように要求してきました。
 古賀さんも、命令通り姿を現しました。
 古賀さんは、柔らかな長い髪にウエーブをかけています。
 顔は、優しそうで、保育士さんのような感じがします。
 古賀さんは呆然と立っていたので、変身を解除するとそのまま顔が見えました。
 体は紫の競泳用の水着です。

「おおおおーーーっ」

 坂本さんより、古賀さんの方が好みだったのでしょうか、男達からどよめきが起りました。
 坂本さんも古賀さんも恥ずかしそうに、胸の前と足の付け根に手を置いて震えています。

「おい、赤い下着。おめーから脱げ」

「ぎゃあーはははーー」

 手下が大喜びをしています。

「やめてーー!!」

 これ以上、坂本さんを辱められるのは我慢が出来ません。
 私は、セーラー服になり、二人の前に出ました。

「なっ、なんだてめーは!?」

 角刈りの隊長が驚いています。
 私は二人の前に辱めを受ける覚悟をしました。
 それが、ふがいない何も出来ない私、木田とうの娘の仕事だと思ったからです。

「私は、二人の仲間です。私が先に裸になります」

「なにー! テメーごときの裸など……」

 角刈りの隊長が私の顔を見て、言葉を失いました。

「な、なんて、美少女だ。この美女二人がどうでも良くなった。ちょっと待ちな」

 私はこの言葉に、なにか淡い期待をしてしまいました。

「てめーら、このちびに毛が生えているかどうか、賭けるぞーー」

「俺は、生えている方に、米一升だ」

「俺は、生えてねえ方に、酒一升だーー!!」

 男達の賭けがはじまりました。
 私は我慢していた、涙がこぼれました。

「てめーーガキー!! 泣くんじゃねえ! ブスになるじゃねえか!」

 角刈りの隊長の怒声が飛んできました。
 こぼれた涙は仕方がありません、次の涙をこらえ、とびきりの笑顔になりました。

「ひゃあーはっはっーーー!! それでいいんだよ! さあ、もういいぜ、さっさと脱げーーーー!!!!」
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