上 下
109 / 428

第百九話 深夜の金華山

しおりを挟む
「じゃあ、あずさ四人を帰してやってくれ」

「えっ!?」

 四人が驚いている。

「えっ!?」

 その驚きに、今度は俺が驚いた。
 いやな予感しかしねーー。

「あの、私はとうさんの娘ですよ。帰る場所はここです」

「ふ、ふむ」

 言われて見れば、ヒマリの言う事は確かに筋が通っている。

「私は、そのヒマリ様の護衛兼お世話係です」

「う、うむ」

 言われて見れば、古賀さんの言う事は確かに筋が通っている。

「うふふ、私は、大田大の家内です。お忘れですか」

「そ、それは……」

 まあ、演技とは言え、坂本さんほどの美人が嫁を演じてくれるのは悪くない。

「私は、その坂本さんの、お世話され係です」

「なっ」

 愛美ちゃん。お、お世話され係って何だよ!

「あのー……」

 階段からニョッキリ榎本の首が出て来た。

「そろそろ、食事の用意が出来ました」

 続いて加藤が中をのぞいてきた。

「ばっ、ばっきゃーろー!! ノックをしろと言っているだろー! 何回言ったらわかるんだー!!」

「うわああーーー!! と、殿が女を連れ込んでいる」

 榎本と加藤が大声を出した。

「なっ、なんだってーー! お前さんもう浮気かい!!」

 だーめんどーくせーー!!
 凛が下にいるようだ。

「えーーっ!! お前さんですって!!! あなた! もう浮気ですかーー!!」

 坂本さんまで。

「あわわわわ、違うんだーー」

 くっ、何故か俺は慌ててしまった。

「な、何を慌てているんですか、冗談ですよ」

 坂本さんと凛の声がそろった。
 くそーーなんてこったーー。
 浮気って言われると、男は本能的に慌てるようだ。

「か、からかうんじゃねえよー」

「人数が増えたから、食事の用意を増やさないとねえ」

「それには及びません。私が用意します。愛美ちゃん。うな重で良いかしら?」

「は、はい! 来て良かったーー!!」

 どうやら、あずさがうな重を用意するようだ。

「なあ、あずさ、ホイホイうな重を出しているけど、補充はされないのだろ?」

「もう、とうさん忙しいのだから……」

 あずさは、食事の準備が忙しいようだ。
 叱られてしまった。

「すっ、すまん」

「うふふ。補充されないので減るだけです。最後には無くなります」

「そうか、じゃあ、大事にしないとな」

「はい。でも、前世の魔王国の動員兵の数が三十万人、その数回分を用意してありますので、まだ余裕はあります」

 はああーーーっ!!
 あずさの奴、何十万食も持っていたのかよーー。

「他の食事もなのか?」

「はい」

 こうして、四人が名古屋城の住人となった。
 食後に、俺は榎本、加藤、東を交え、柳川と今後について深夜まで話し合った。



 深夜の名古屋城の屋根の上に、四つの影が集まっています。

「うふふ、これなら、金のシャチ鉾も簡単に盗めますね」

 ヒマリちゃんが金のシャチ鉾をペチペチ叩いています。

「せっかく、忍者になったのですから、殿の役に立たなくてはいけません」

 愛美ちゃんまでノリノリです。
 どうやら首謀者はこの二人の様です。
 二人がやると言えば、坂本さんと古賀さんは従うしかありません。

「すごい景色です」

 ヒマリちゃんが金シャチの上に乗り、右の手の平を額に当てて遠くを見ています。
 夜だから、暗くて何も見えませんよ。

「そうですね。それにしてもこのコスチュームは、すごいですね。夜なのによく見えます」

 古賀さんが感心しています。
 どうやら、コスチュームの性能で夜でも目が見えるようです。

「では、尾張忍軍は、殿の為、攻略対象美濃の調査を開始します」

 あーあ、とうさんに、釘を刺されていたのに、どうやらこの四人は、美濃へ忍者ごっこに出かけてしまうようです。
 まあ、コスチュームの性能確認の為と思えば丁度良いのかもしれません。
 とうさんの話では、岐阜城は今、誰も住んでいないので安全なはずです。

「クザン、私達は見つからないように四人を追いかけますよ」

 クザンは話せないので、声を出さずにうなずいた。
 私も、金のシャチの上に乗って遠くを見た。
 天守閣の窓からの景色とは、位置が少し高くなっただけなのですが、全然違う景色に感じます。
 昼間見た景色はとても美しく感動的でしたが、深夜のどこにも人工の光が無い景色は、とても気味が悪く感じます。

 びゅうううーーーーー

 いやな風が下から私の体を押し上げます。
 春から着る予定のセーラー服のスカートがまくり上げられ、お尻が丸出しになりました。
 うふふ、大丈夫です。安心して下さい、水着を着ています。

 そんなことより、髪の毛が巻き上げられ後頭部が丸出しになりました。
 こっちは大丈夫ではありません。
 唇型の大きなハゲがあります。
 大好きなとうさんの唇の形のハゲです
 せっかく丸出しなのに、見せびらかすことが出来ませんでした。
 ガッカリです。

「あまりのんびりしていると、見失ってしまいます。そろそろ追いかけましょうか」

 私は、四人の後を追いかけた。
 四人が思ったよりも速いので、私は途中で変身して、アンナメーダーマンになりました。
 三十分程で、金華山に着きました。
 四人は、警戒もせずに山を登って行きます。
 まあ、心配は必要ないと思いますが。

「な、何者だーーー!!」

「気を付けろーー!! 侵入者だーーー!!!」

 おかしい、誰もいないはずなのに……。
 見つかったのは、私じゃ無い。
 四人は大丈夫なのでしょうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...