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第百九話 深夜の金華山

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「じゃあ、あずさ四人を帰してやってくれ」

「えっ!?」

 四人が驚いている。

「えっ!?」

 その驚きに、今度は俺が驚いた。
 いやな予感しかしねーー。

「あの、私はとうさんの娘ですよ。帰る場所はここです」

「ふ、ふむ」

 言われて見れば、ヒマリの言う事は確かに筋が通っている。

「私は、そのヒマリ様の護衛兼お世話係です」

「う、うむ」

 言われて見れば、古賀さんの言う事は確かに筋が通っている。

「うふふ、私は、大田大の家内です。お忘れですか」

「そ、それは……」

 まあ、演技とは言え、坂本さんほどの美人が嫁を演じてくれるのは悪くない。

「私は、その坂本さんの、お世話され係です」

「なっ」

 愛美ちゃん。お、お世話され係って何だよ!

「あのー……」

 階段からニョッキリ榎本の首が出て来た。

「そろそろ、食事の用意が出来ました」

 続いて加藤が中をのぞいてきた。

「ばっ、ばっきゃーろー!! ノックをしろと言っているだろー! 何回言ったらわかるんだー!!」

「うわああーーー!! と、殿が女を連れ込んでいる」

 榎本と加藤が大声を出した。

「なっ、なんだってーー! お前さんもう浮気かい!!」

 だーめんどーくせーー!!
 凛が下にいるようだ。

「えーーっ!! お前さんですって!!! あなた! もう浮気ですかーー!!」

 坂本さんまで。

「あわわわわ、違うんだーー」

 くっ、何故か俺は慌ててしまった。

「な、何を慌てているんですか、冗談ですよ」

 坂本さんと凛の声がそろった。
 くそーーなんてこったーー。
 浮気って言われると、男は本能的に慌てるようだ。

「か、からかうんじゃねえよー」

「人数が増えたから、食事の用意を増やさないとねえ」

「それには及びません。私が用意します。愛美ちゃん。うな重で良いかしら?」

「は、はい! 来て良かったーー!!」

 どうやら、あずさがうな重を用意するようだ。

「なあ、あずさ、ホイホイうな重を出しているけど、補充はされないのだろ?」

「もう、とうさん忙しいのだから……」

 あずさは、食事の準備が忙しいようだ。
 叱られてしまった。

「すっ、すまん」

「うふふ。補充されないので減るだけです。最後には無くなります」

「そうか、じゃあ、大事にしないとな」

「はい。でも、前世の魔王国の動員兵の数が三十万人、その数回分を用意してありますので、まだ余裕はあります」

 はああーーーっ!!
 あずさの奴、何十万食も持っていたのかよーー。

「他の食事もなのか?」

「はい」

 こうして、四人が名古屋城の住人となった。
 食後に、俺は榎本、加藤、東を交え、柳川と今後について深夜まで話し合った。



 深夜の名古屋城の屋根の上に、四つの影が集まっています。

「うふふ、これなら、金のシャチ鉾も簡単に盗めますね」

 ヒマリちゃんが金のシャチ鉾をペチペチ叩いています。

「せっかく、忍者になったのですから、殿の役に立たなくてはいけません」

 愛美ちゃんまでノリノリです。
 どうやら首謀者はこの二人の様です。
 二人がやると言えば、坂本さんと古賀さんは従うしかありません。

「すごい景色です」

 ヒマリちゃんが金シャチの上に乗り、右の手の平を額に当てて遠くを見ています。
 夜だから、暗くて何も見えませんよ。

「そうですね。それにしてもこのコスチュームは、すごいですね。夜なのによく見えます」

 古賀さんが感心しています。
 どうやら、コスチュームの性能で夜でも目が見えるようです。

「では、尾張忍軍は、殿の為、攻略対象美濃の調査を開始します」

 あーあ、とうさんに、釘を刺されていたのに、どうやらこの四人は、美濃へ忍者ごっこに出かけてしまうようです。
 まあ、コスチュームの性能確認の為と思えば丁度良いのかもしれません。
 とうさんの話では、岐阜城は今、誰も住んでいないので安全なはずです。

「クザン、私達は見つからないように四人を追いかけますよ」

 クザンは話せないので、声を出さずにうなずいた。
 私も、金のシャチの上に乗って遠くを見た。
 天守閣の窓からの景色とは、位置が少し高くなっただけなのですが、全然違う景色に感じます。
 昼間見た景色はとても美しく感動的でしたが、深夜のどこにも人工の光が無い景色は、とても気味が悪く感じます。

 びゅうううーーーーー

 いやな風が下から私の体を押し上げます。
 春から着る予定のセーラー服のスカートがまくり上げられ、お尻が丸出しになりました。
 うふふ、大丈夫です。安心して下さい、水着を着ています。

 そんなことより、髪の毛が巻き上げられ後頭部が丸出しになりました。
 こっちは大丈夫ではありません。
 唇型の大きなハゲがあります。
 大好きなとうさんの唇の形のハゲです
 せっかく丸出しなのに、見せびらかすことが出来ませんでした。
 ガッカリです。

「あまりのんびりしていると、見失ってしまいます。そろそろ追いかけましょうか」

 私は、四人の後を追いかけた。
 四人が思ったよりも速いので、私は途中で変身して、アンナメーダーマンになりました。
 三十分程で、金華山に着きました。
 四人は、警戒もせずに山を登って行きます。
 まあ、心配は必要ないと思いますが。

「な、何者だーーー!!」

「気を付けろーー!! 侵入者だーーー!!!」

 おかしい、誰もいないはずなのに……。
 見つかったのは、私じゃ無い。
 四人は大丈夫なのでしょうか。
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