上 下
104 / 428

第百四話 真田の重装歩兵隊の実力

しおりを挟む
 真田隊は、全員しゃがみ込んだ。
 面積を小さくする為とも言えなくは無いが、ただ単に腰が抜けたようにも見える。

 コンコンカンココンカン

 銃弾が、鎧にあたり金属音を上げる。
 あのゲーム、ゼビ○スの金属板に弾が当たった時のような音がした。

「全軍ひるむな、銃弾は効かないぞ!! まずは伏兵を討ち取れーー!!」

 真田の声が響いた。

「おおーーっ!」

 短く真田の重装歩兵隊が返事をして、伏兵に突撃をする。

 カンカン

 銃弾は命中しているが、真田隊には全く効果が無かった。
 真田の部隊が伏兵の中に入った瞬間、静かになった。

「な、なんなんだあれは!!」

 その光景を見ているもの全員から声が漏れた。
 伏兵は悲鳴を上げる事も出来ず殲滅されたのだ。

 真田の重装歩兵のアダマンタイト製のブレードは、一振りで五人以上を輪切りにした。
 三百人の重装歩兵隊が、一人一振りしただけで、三百人の伏兵の体がバラバラの細切れになっていた。

「す、すごい。何てものを大殿は真田隊に与えたのだ。あんな恐ろしいものを、作ってはいけなかったのでは無いか? それにしても、絶対真田隊とは戦わないでおこう」

 北条は、寒気がするのか、気温三十度を超えているのに両手を体にまいて、寒そうにしている。

「これは、なんと言う事だ。このままでは真田の重装歩兵隊は殺戮マシーンになってしまう。以後は強敵以外にブレードを使うのを禁止しなくてはならないな」

 真田が目の前の悲惨な光景を見てつぶやいた。

「北条殿、次は俺の番だ。橋の向こうの奴らと戦ってくる」

 伊藤は、北条にそう言うと、ゆっくり手下と共に宙に浮いた。

「伊藤殿、あんた空を飛ぶのか。もう何でもありだなー」

 北条は、伊藤を止める事をしなかった。
 大殿に千人力とも言わせる男の実力に関心を持っていたのだ。

「なんなんだあいつらは。ロボの次は空飛ぶ人間かよー。全員構えろーー」

 敵兵は、ハの字になり橋の向こう側で銃を構えた。
 サイコ伊藤が橋の中程まで近づくと。

「撃てーー!!」

 パパパパパパ

 号令と共にサイコ伊藤に銃弾が飛んでくる。
 伊藤は、まるでお祈りをするように目を閉じ、手を合掌して、ゆっくりと橋の中央を進んで行く。
 弾丸は、伊藤の前で全て止まっている。

 敵の攻撃は長くは続かなかった。
 もともと、伏兵に主力の武器を持たせていたので、こっちはたいした物量が用意されていなかったのだ。
 とはいえ、サイコ伊藤のまわりは姿がよく見えなくなるほどの銃弾が止まっている。

 伊藤は右手を、ゆっくり前に出しながら拳を固めた。
 そして、手が真っ直ぐ伸びきると、ゆっくり目を開き、同時に拳を開いた。

「うぎゃあああーーーーー」

 今度は、大きな悲鳴があたりに響き渡った。
 サイコ伊藤が、宙に浮く弾丸を、橋の向こうに並んでいる敵兵に飛ばしたのだ。
 七百人の敵兵の半数が倒れ、残っている者達も大なり小なりけがを負っていた。

「ひけーーっ、ひけーーっ!!」

 敵兵は最早たたかう事をあきらめ、一目散に逃げて行った。

「な、何てことだ。真田が敵を三百人倒してすごいと思ったが、伊藤は一人で三百五十人を倒してしまった」

「総大将、追い打ちはかけなくていいのか」

 伊藤が振り返り、北条に問いかけた。

「いや、もう良いだろう。それより、死んだ者を埋めてやろう」

 伏兵は、もともと塹壕を掘っていたのでそのまま土をかけるだけだ。
 橋の向こうの兵を塹壕まで運び埋める作業を全軍で始めた。

「真田殿、さすがにあれはやり過ぎであろう」

 伊藤が半笑いで、真田に話しかけた。

「いやいや、あれは鎧がいけないのです。こんな凄いものとは思いもしませんでした」

「伊藤殿こそ、あれはやり過ぎなのでは?」

「あれでも手加減はした。敵が弱すぎたのだ。ちゃんと手加減したのだ……」

 あっ、あれで手加減したのかよーー。伊藤とも絶対戦わんぞー。
 北条は心に誓った。

「伊藤殿、あんたと、大殿はいったいどういう関係なのだ」

「俺と、大殿の関係か……」

 伊藤は、宙を見つめて笑い出した。

「ふふふ、俺は、アンナメーダーマンを殺す為の刺客だった」

「なっ、刺客だって!?」

 真田と北条が驚いて、伊藤の顔を見つめた。

「そうだ、楽勝で、簡単な仕事だと思っていたが、圧倒的な強さでねじ伏せられたよ」

「さ、さすが、大殿だ」

「俺は、大阪の邪神ハルラの魔法で、心を壊され強い力を得た。今は大殿に心の支配を受け、力を与えられている。今回は大勢死なしてしまって、ずいぶん心が痛んでいる」

「そ、そうは見えないが。まあいい、それよりハルラというのは何者なのだ」

「ああ、ハルラか。日本人、いや世界の人間を殺し尽くそうと考えている、自称邪神、俺から見れば神を名乗る悪魔だ」

「大殿とは真逆の考え方だな」

「そういう事だ。だからこそアンナメーダーマンを目の敵にしている。恐らく俺より強い刺客が次々送られてくるだろう」

「そうか。それでわかったぞ。何故あんな恐ろしい重装歩兵を作ったのか。すべてハルラの脅威から、人類を守る為と言う事なのだろう」

 伊藤、真田、北条の連合軍は、敵兵を丁重に埋葬した。
 そして、翌日の朝を待って、信濃松本勢の本拠地松本城を目指し進軍を開始した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...