底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
上 下
103 / 428

第百三話 伏兵

しおりを挟む
「あーーーっ!!!」

「どうなされました?」

 東が心配そうに聞いて来た。

「う、うむ。熱田の親分のけがを治すのを忘れてしまった」

「はぁーーっ、そんなことはどうでも良いではありませんか」

「どうでも良くはない。万が一感染症にでもかかったりしては、かわいそうだ。クザン追いかけて、眠ったらその場所を教えてくれ。眠っているうちに、こっそり治してやろう」

「ふふふっ」

 東と榎本と加藤が微妙な顔をして笑っている。

「あーーーーっ!!!!」

「こ、今度は何ですか」

 東の顔がだんだん疲れた家老の顔に見えてきた。
 そう言えば、少し「東はち○う」に似ている気がする。

「まだ、名古屋城にはいっていねえ。加藤案内をしてくれ」

 俺は色々ありすぎて目の前の、尾張名古屋は城でもつの名城、名古屋城の中に入っていねー!

「はっ、ですが汚れていますよ」

「なっ、なにーーーっ」

 い、いいじゃねえか。
 ゴミ屋敷のように汚い方が俺は喜んじゃうぞ。このやろーー!!

「こちらへ」

 加藤は俺を先導して名古屋城に案内してくれた。

「なっ、なんだこれはーーっ!!!」

「ど、どうなされました」

「き、綺麗じゃねえか」

「はい、城は一応掃除しています」

 一応なんてもんじゃねえ。しっかりやってあるじゃねえか。
 あれかーー。
 お土産を持って来てつまらない物ですが、とか、粗茶ですが、とかいう、謙遜とかいうやつかー。
 いらねーーんだよ! そんな事は!!
 俺のこの、がつーーんと喜んでしまった気持ちはどこへ持って行けば良いんだよ。

「ちり一つ無いんだね」

「はっ、恐縮です」

 褒めてないんだけどね。
 むしろゴミ屋敷の方が俺は喜んだんだけどね。

「すごーーい」

 いつの間についてきたのか、あずさが最上階からの景色を見て喜んでいる。
 最初に北を見た。この高さからだとあまり農地は分からない。
 遠くに美濃の山が見える。
 あのどこかが金華山で、岐阜城があるのだろう。

 所々に見える巨大なビルが、かつての人間の繁栄を物語っている。
 今ではその全てが廃墟だ。

「みてーー!!」

 あずさの指の先には、白い丸い物が見える。
 名古屋ドームだ。なんか別の名前もあったきがする。
 はしゃぐあずさとは裏腹に、俺の心は重く沈んでいった。

「榎本と加藤そして東、明日から名古屋の生き残りを探してくれ、その後は、名古屋北部、そして知多半島だ。美濃の様子も知りたい。三人で手分けをして、担当してくれ」

「はっ」

「いっぱい、生き残りがいてくれるといいなあ」

「……」

 三人は、返事をせず俺の豚顔を黙って見ている。





 その頃、真田と北条の連合軍は甲斐で中央道に入り、長野自動車道を通り、塩尻のインターチェンジの手前のパーキングエリアで野営を準備していた。
 真田が手勢三百人を連れ、北条は四百人で行軍している。
 七百人は少ないと北条が言ったのだが、柳川がそれで十分と人数を決めたようだ。

「まだ、食事は始まっていませんね。間に合って良かった」

「おお! 柳川殿」

 柳川はUFOから降りてくると、格納庫を開いた。

「北条さん、大殿からの差し入れです」

「こ、これはすき焼きですか」

「そうです。栄養をつけてくれとの事です。それともう一つ。伊藤さんこちらへ」

 言われてUFOから降りてきたのは、サイコ伊藤とその部下九人だった。

「私は伊藤と申します。よろしくお願いします」

 伊藤が、丁寧に頭を下げてあいさつをする。
 この姿からは、浜松にいた時の悪党の姿は、まるで想像出来なかった。
 物腰の柔らかい紳士のようである。

「真田です」

「俺は北条だ」

「北条さん、この伊藤さんは大殿が言うには千人力だそうです。手柄を上げさせてやってくれとのお言葉です」

「ほう、たのもしい。明日にでも手柄を上げてもらいましょう」

「という事は」

「ええ、物見の話しでは、塩尻インターチェンジの先で、陣をひいています。向こうもこっちの事は、分かっているようで七百人で橋の向こうで待ち構え、俺達を橋の上で討ち取るつもりです」

「そうですか」

「まあ、心配は無いと思いますが、気を付けて下さい。吉報をお待ちしています」

 柳川は夕食の片付けが終ると引き上げた。

 翌朝、朝食を済ますと、真田北条の連合軍はすぐに行軍を始めた。
 塩尻のインターチェンジを降りると北条は全軍の足を止めた。
 橋の向こうに、信濃松本衆の姿が見える。

 全軍の最後尾で、真田と北条と伊藤が状況を確認している。
 敵は、橋を渡った所で銃を構え、橋の上に来た連合軍を十字砲火で殲滅するつもりで待ち構えているようだ。

「では、先鋒は我ら真田が承ります。大殿の重装歩兵がどんな物か確認させてもらいます」

 そう言うと真田が、専用機動戦闘鎧天夕改に入り、真田隊に合流した。
 真田隊は、三百の重装歩兵である。
 赤いオリハルコン製の重装歩兵と天夕改が集まると真っ赤な集団が出来上がった。

「いいかー、敵の銃弾が雨のように発射される。念の為ブレードを胸の前に立て体を守りながら敵軍に突っ込む」

 黒いブレードは、アダマンタイト製で幅が広い。
 中央に構えればブレードが頭と心臓の銃弾をはじき返す、それ以外の場所で鎧に銃弾が当たり、鎧を貫通しても致命傷は免れると真田は考えていた。

「よし、……」

 真田隊三百人がブレードを体の前に立て準備を完了した。
 真田は、銃弾が雨のように飛んで来る所へ突っ込む事に緊張を感じていた。
 冷たい汗が、頬をつるんと流れた。

「真田隊! 突撃ーー!!!」

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 三百人が雄叫びを上げた。
 橋まで二百メートルというところで、国道の横の茂みから敵の伏兵が立ち上がった。
 その数三百。一斉に発砲した。

 パパパパパパッ

「なっ!!!」

 突然の横からの銃撃に、真田隊は全く対応出来なかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

少年少女たちの日々

原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。 世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。 しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。 世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。 戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。 大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。 その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...