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第二十八話 帰還
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俺はひっそりと、四階から抜け出して、五階の社長室兼自宅に移動した。
「やっぱり行く気ですか」
柳川がすぐに気が付き追いかけてきた様だ。
一緒にあずさとミサ、藤吉も付いてきた様だ。
「いや、ぼっちな豚は騒がしいのが苦手だからね。逃げ出したのさ。行くのは明日の朝、日が出てからにするよ」
「良かった」
あずさが言いながら俺に近づいてくる。
俺が応接の椅子に座ると、あずさが俺の横に体をぴったりひっつけて座った。
俺の顔をじっと見つめる。
やばい、なにか恥ずかしい。
「ところで、そちらの女性は?」
柳川はミサを見ながら質問してきた。
「ああ、俺の命の恩人だ。ミサがいなければ俺は……たぶんこの世にいなかった。帰ってこられたのはミサのおかげだ」
「ふふふ、そういう事。どうぞ」
ミサは、名刺を柳川と藤吉に渡している。
「あなたが、あの天地の会の教祖様ですか」
柳川は天地の会を知っている様だった。
何でも、知っているなー。
藤吉も知っている様子だった。
ミサが俺の横に座った。
三人掛けの椅子の真ん中に座ったのがいけなかった。
あずさが横に来ると思って、座ったのだが、ミサまでくるとは。
こいつ、俺が気持ち悪くないのか。
そう考えたら、ムッとした顔でにらんできた。
「柳川、教えてくれ、地球に何があった?」
「ふふふ、それだけ心配するという事は、薄々気が付いているのでしょ」
「予想はしている。だが、聞いておきたい」
「わかりました。説明しましょう。――二ヶ月前でした。政府は安全な場所に避難する様に発表しました。ふふふ、巨大な隕石が衝突して地球が無くなるのに、どこに安全な場所があるのでしょうか。国民の不安はマックスになり、店から食料品が消えました。全てはここから、買えない人の暴動から始まりました。奪い合い、殺し合いです。イナゴの群れの様に、人間の群れが、人口が集中する都市を目指します。昔見たゾンビ映画のような光景が広がりました。違うのは、銃で撃たれるのが、ゾンビでは無く、普通の人だったという事です。俺たちは都会を捨てて、ここへ来ました。ここは都心から離れていますので、今のところ安全です」
「俺のせいだ! 俺がもう少し早く隕石を消していたのなら! 俺が……」
俺が頭を抱え泣きそうになっていたら、あずさとミサが抱きついて来た。
「とうさん! 違う。違うよ。とうさんがいたから、地球が助かったの!!」
「……」
柳川と藤吉が驚いてこの光景を見ている。
「やっぱり、木田さんがやってくれたんですね。さすがだ」
柳川が感心している。
藤吉が柳川の言葉を聞いてさらに驚いた顔をしている。
「柳川さん、これを見て」
ミサが、胸の谷間から細く立て折りにした写真を出した。どこに入れているんだー!!
「31ヒーローズ?」
柳川が写真を見ながら、つぶやいた。
藤吉もそれを横からのぞいている。
「あの隕石を破壊しようとしていた人達です。あんな場所に行けるだけでもすごい人達よ。顔を覚えて会ったら逃げなさい」
「と言う事は、三十一人で壊したのですか?」
藤吉が質問した。
「そうね。でも、ほとんど木田さんがやった様なものね。あれは」
「すごい。あんな物を破片一つも出さずに消滅させるなんて、考えられない」
藤吉は無事でいられるとは思っていなかった様だ。
「うふふ」
藤吉の素直な感想に、ミサが気をよくして笑っている。
「ところで、この写真に木田さんが写っていないようですが」
藤吉が聞くと、柳川が「激豚」を指して教えている。
まあ、そう、見えるわな。
その時、俺は意識を失っていたからな。
待てよ俺って、なんで海パンはいていたんだ。
「吸収された時に、服が残って飛んで行ったから。あずさちゃんがあわてて海パンだけ形見としてとって置いたのよ」
「海パンまで脱げていたのなら再生した時は、裸だったのか」
やばい、見られた。
「あずさちゃんと私で、はかせました。無重力だから案外簡単でした」
はー、がっかりだぜ。
「ところで木田さん、ここはすごいですね。こんな事があると想定して作ったのですか」
藤吉が目をキラキラさせて、子供の様に聞いて来た。
案外良い奴なのか。
「隕石が落ちるなんて事は、想定していないさ」
「そうですか。でも、ここがあるおかげで、避難してきたゲン一家が飢えずにすんでいます」
あー、そういえば、賞味期限切れの食品とか、米とかは大量にあるし、玉子とキャベツは大量に生産している。
電気代を安くする為に太陽光発電も進めているしな。
「玉子とかは余っているのじゃ無いか。もったいない事をしたな」
「いいえ、あずさちゃんが時々戻って、収納してくれていますから、ちゃんともったいない事はしていません」
柳川が教えてくれた。
はーーっ、あずさの奴たまに、戻っていたのかよー。
俺が、寝ている間だな。まあ、別に怒る様なことじゃないか。
俺は動けなかったしな、内緒にしてくれたのか。
話している最中に、あずさとミサが居眠りを始めた。
二人とも疲れていたんだな。お疲れ様。
それを見て、柳川と藤吉は気を使って話しを切り上げてくれた。
ゆっくり眠ってくれ。
まあ俺は眠りすぎで、眠くないのだけどね。
翌朝、俺は、ミサと都心に向う事にした。
あずさと行かないのは、子供は見ちゃ駄目な物があると、想定出来るからだ。
「じゃあ、行くか!」
「ちょっと、まったー!!」
ミサが声をあげる。
いったい何なんだ。
「やっぱり行く気ですか」
柳川がすぐに気が付き追いかけてきた様だ。
一緒にあずさとミサ、藤吉も付いてきた様だ。
「いや、ぼっちな豚は騒がしいのが苦手だからね。逃げ出したのさ。行くのは明日の朝、日が出てからにするよ」
「良かった」
あずさが言いながら俺に近づいてくる。
俺が応接の椅子に座ると、あずさが俺の横に体をぴったりひっつけて座った。
俺の顔をじっと見つめる。
やばい、なにか恥ずかしい。
「ところで、そちらの女性は?」
柳川はミサを見ながら質問してきた。
「ああ、俺の命の恩人だ。ミサがいなければ俺は……たぶんこの世にいなかった。帰ってこられたのはミサのおかげだ」
「ふふふ、そういう事。どうぞ」
ミサは、名刺を柳川と藤吉に渡している。
「あなたが、あの天地の会の教祖様ですか」
柳川は天地の会を知っている様だった。
何でも、知っているなー。
藤吉も知っている様子だった。
ミサが俺の横に座った。
三人掛けの椅子の真ん中に座ったのがいけなかった。
あずさが横に来ると思って、座ったのだが、ミサまでくるとは。
こいつ、俺が気持ち悪くないのか。
そう考えたら、ムッとした顔でにらんできた。
「柳川、教えてくれ、地球に何があった?」
「ふふふ、それだけ心配するという事は、薄々気が付いているのでしょ」
「予想はしている。だが、聞いておきたい」
「わかりました。説明しましょう。――二ヶ月前でした。政府は安全な場所に避難する様に発表しました。ふふふ、巨大な隕石が衝突して地球が無くなるのに、どこに安全な場所があるのでしょうか。国民の不安はマックスになり、店から食料品が消えました。全てはここから、買えない人の暴動から始まりました。奪い合い、殺し合いです。イナゴの群れの様に、人間の群れが、人口が集中する都市を目指します。昔見たゾンビ映画のような光景が広がりました。違うのは、銃で撃たれるのが、ゾンビでは無く、普通の人だったという事です。俺たちは都会を捨てて、ここへ来ました。ここは都心から離れていますので、今のところ安全です」
「俺のせいだ! 俺がもう少し早く隕石を消していたのなら! 俺が……」
俺が頭を抱え泣きそうになっていたら、あずさとミサが抱きついて来た。
「とうさん! 違う。違うよ。とうさんがいたから、地球が助かったの!!」
「……」
柳川と藤吉が驚いてこの光景を見ている。
「やっぱり、木田さんがやってくれたんですね。さすがだ」
柳川が感心している。
藤吉が柳川の言葉を聞いてさらに驚いた顔をしている。
「柳川さん、これを見て」
ミサが、胸の谷間から細く立て折りにした写真を出した。どこに入れているんだー!!
「31ヒーローズ?」
柳川が写真を見ながら、つぶやいた。
藤吉もそれを横からのぞいている。
「あの隕石を破壊しようとしていた人達です。あんな場所に行けるだけでもすごい人達よ。顔を覚えて会ったら逃げなさい」
「と言う事は、三十一人で壊したのですか?」
藤吉が質問した。
「そうね。でも、ほとんど木田さんがやった様なものね。あれは」
「すごい。あんな物を破片一つも出さずに消滅させるなんて、考えられない」
藤吉は無事でいられるとは思っていなかった様だ。
「うふふ」
藤吉の素直な感想に、ミサが気をよくして笑っている。
「ところで、この写真に木田さんが写っていないようですが」
藤吉が聞くと、柳川が「激豚」を指して教えている。
まあ、そう、見えるわな。
その時、俺は意識を失っていたからな。
待てよ俺って、なんで海パンはいていたんだ。
「吸収された時に、服が残って飛んで行ったから。あずさちゃんがあわてて海パンだけ形見としてとって置いたのよ」
「海パンまで脱げていたのなら再生した時は、裸だったのか」
やばい、見られた。
「あずさちゃんと私で、はかせました。無重力だから案外簡単でした」
はー、がっかりだぜ。
「ところで木田さん、ここはすごいですね。こんな事があると想定して作ったのですか」
藤吉が目をキラキラさせて、子供の様に聞いて来た。
案外良い奴なのか。
「隕石が落ちるなんて事は、想定していないさ」
「そうですか。でも、ここがあるおかげで、避難してきたゲン一家が飢えずにすんでいます」
あー、そういえば、賞味期限切れの食品とか、米とかは大量にあるし、玉子とキャベツは大量に生産している。
電気代を安くする為に太陽光発電も進めているしな。
「玉子とかは余っているのじゃ無いか。もったいない事をしたな」
「いいえ、あずさちゃんが時々戻って、収納してくれていますから、ちゃんともったいない事はしていません」
柳川が教えてくれた。
はーーっ、あずさの奴たまに、戻っていたのかよー。
俺が、寝ている間だな。まあ、別に怒る様なことじゃないか。
俺は動けなかったしな、内緒にしてくれたのか。
話している最中に、あずさとミサが居眠りを始めた。
二人とも疲れていたんだな。お疲れ様。
それを見て、柳川と藤吉は気を使って話しを切り上げてくれた。
ゆっくり眠ってくれ。
まあ俺は眠りすぎで、眠くないのだけどね。
翌朝、俺は、ミサと都心に向う事にした。
あずさと行かないのは、子供は見ちゃ駄目な物があると、想定出来るからだ。
「じゃあ、行くか!」
「ちょっと、まったー!!」
ミサが声をあげる。
いったい何なんだ。
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