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第二十七話 再会

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「……下界……一緒に……」

「……もし、それをのぞんで……」

 遠くで話し声が聞こえる。
 一つはミサの声、もう一つは蜂蜜さんなのか?

「ねえ、気が付いたんでしょ。だったらシャンとしなさいよ」

「ミサなのか」

 どうやらこれは、俺の心の中の様だ。
 ミサが入って助けてくれているようだ。

「ふふ、やっと話せた。本当に長かった。あずさちゃんが待っているわ」

「あずさ!!」

 俺はパッと正気になり目を開いた。
 宇宙空間に、シャボン玉の様な結界があり、その中で俺は目覚めた。

「とうさん、お帰り」

「あんた、私に感謝しなさいよ。もう少しであっちの世界へ行くところだったんだから!」

「あっちの世界?」

「よかったー!!」

 あずさが泣きながら抱きついて来た。

「他の皆は?」

「ほら!」

 ミサが一枚の写真を渡してきた。
 A4の用紙にカラーでプリントされた写真だ。
 そこに海パン一丁のデブのお尻が、アップになって左半分を埋め尽くしている。お尻にはあの「激豚」の二文字がある。
 あー、俺の尻だ。

 そして残り半分に二十九人の笑顔の超能力者達が写っている。
 あずさの姿が無いから、写真を写したのがあずさなのだろう。
 31ヒーローズと下に書かれている。

「これは?」

「あんたの姿が戻った時に撮った写真。印刷はあずさちゃんが日本の木田産業のパソコンで印刷したそうよ。皆はこの写真を撮ったら、国へ帰ったわ。あんたに一言あいさつがしたかったと残念そうに言っていたわよ」

「俺は長く眠っていたのか?」

「そうね、一ヶ月半以上ね。隕石衝突の予定日は過ぎてしまったわ」

「ち、地球は?」

「ふふふ、見た目の変化は無いわ。後は自分の目で確かめた方が良いと思うわ」

「あずさちゃん、帰りましょう」

「はい」

 あずさが両目の涙を拭いた。
 その顔は、嬉しそうなとびきりの笑顔だった。
 そうだ、俺はこの笑顔が見たかったんだ。
 かわいい、うつくしい、天使のようだ。
 もう、何も思い残す事はない。死んでも良い。

「あんたは、馬鹿なの。今帰って来たばっかりじゃない。もうちょっと私の苦労も考えなさい」

「な! ミサ、俺の心を読んだな」

「当たり前でしょ。そういう超能力者なんだから」

 やべー、こいつの前では、うかつな事を考える事ができねーー。

「馬鹿なの、そんなに四六時中人の心なんか読まないわよ」

「いま、また読んだじゃねえかよー」

「ふふふ」

 ミサが嬉しそうに笑った。
 こうしてみるとミサは、笑顔が可愛い美女なんだよなー。
 あ、しまった。余計な事を考えてしまった。
 ミサが赤い顔をしている。

 また人の心を読んだ様だ。





「よう、兄弟」

 木田産業の四階の半分を占める大きな会議室に戻った。
 そこには、ゲンと柳川の姿があった。

「やあゲン。珍しいねゲンがここにいるなんて」

「なんだ兄弟、あずさちゃんからなにも聞いていねえのか。俺の一家は木田シティーに全員住んでいる」

 変だ。ゲン一家が全員こんな田舎に住む必要は無いはずだ。
 俺は疑問を感じて、窓際に走り寄り外を見た。

 ――暗い

 夜だから暗いのは当たり前だが、そこにはあるはずの物が無い。
 街灯や、家の照明、そして遠くに見える都市の輝く光が全くない。
 真っ暗闇だ。

「文明は終っちまった。兄弟のおかげでここだけはまだ、近代的な暮らしが出来ている」

「ミサ、これが自分の目で確かめろと言う事なのか」

「そうね。都心部へ行ったらもっと凄いものが見られるわ」

 俺は窓を開けすぐに飛び出そうとした。

「まてまて、兄弟! そんなにあわてるな。相変わらずだなー。何も逃げやしねーし、何より今は夜だ何も見えやしねえ。まずは、今日ぐれーゆっくりしてくれ。いま、皆を集めている。じきに幹部や、ダーやポンも来る。会ってやってくれ」

「すまない。ちょっと胸騒ぎがしたもんだから」

「まあ、座ってくれ」

 会議室の中央の席が三人掛けになっていて、その一番右にゲンが座った。
 その隣にちゃっかりあずさが座った。俺はあずさの隣に座る。
 そして、俺たちの前に長く机が並んでいる。
 俺の後ろに椅子に座らないでミサが立っている。
 部外者だから、遠慮して座らないのだなと思った。
 俺の前に柳川が座った。

 遅れてダーとポンがゲンの前に座った。
 そして、柳川の隣に小男でずる賢そうな男が座った。
 こいつも目つきが鋭くて、俺は恐怖を感じて背筋に冷たい物が流れた。

「藤吉(フジヨシ)と言います。以後お見知り置きを」

 藤吉と名乗った男は、深々と頭を下げた。
 この並びからすると、こいつがゲン一家の現在のナンバー4という事になる。
 良い奴であって欲しいな。
 他の幹部が席を埋め終っても次々人が入ってくる。

 あっという間に会議室が人で一杯になった。
 全員にジョッキが配られる。
 あずさだけは、ジュースだ。
 お酌を、綺麗な女性が大勢で手分けしている。
 どこの女の人だと、思っていると。

「この、女達は俺たちの店で働いていた水商売の女です」

 柳川が教えてくれた。
 おーい、お前も心が読めるのかよーう。

「プッ」

 ミサにうけた。
 お前は、人の心を完全に読んでるよなー。

「いっぱい来たなあ」

「許してやってくれ兄弟。こんな時でも無いと酒が飲めねえんだ」

 この後、酒宴が始まり全員楽しそうに酒を飲んだ。
 だが、俺は都心部がどうなっているのか気になってしょうが無かった。
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