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第十二話 別れは突然やってくる
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別れは突然やってくる。
それは、あずさ十歳の誕生日だった。
誕生日までのあずさちゃんはいつも俺にべったりだった。
宿題をする時も、何もする事が無い時もあずさちゃんは、俺の体に触れていないと正常ではいられなかった。
いつだったか、柳川の奴が「あずさちゃん、可愛くなったねー。俺のお嫁さんにならないか」と言ったら「嫌!!」と即答されていた。
ゲンに聞かれた時は「だめ、とうさんと結婚するから」と言っていた。
嬉しいのだが俺は父親だから無理だ。
「あずさちゃんは小さいから、とうさんと結婚するのは無理だよ」
と、やさしく言った
「じゃあ、大きくなったら」
「あずさちゃんが、大きくなった時には、とうさんはおじいちゃんだ。無理だと思うなー」
俺が言うと、頬をぷくっとふくらまして言った。
「じゃあ、どうしたらお嫁さんにしてくれるのー」
ここで無理というのは簡単だが、どうせならあずさちゃんにとって有意義な事をしてもらおうと考えた。
「そうだねー、国立大学に入ってくれたら、かな」
「わかった」
すごく簡単に分かってくれた。
この日から、あずさちゃんは自主的に勉強をはじめた。
俺は、高卒だ。
高卒でも、成功者はいる。でも俺みたいな半端者には無理だ。
この時点で負け組に片足を突っ込んでいた。
その後は見るも無惨な転落負け組人生だ。
だからこそ、あずさちゃんには、国立大学にいって勝ち組人生を進んで欲しいと思ったのだ。
国立大学を卒業して、公務員や大会社の社員に新卒で入社してほしい。つらい事や、納得出来ない事があるだろう、だがそれらを乗り越えて定年まで勤め上げれば、きっと人生の勝ち組になれるはずだ。俺は本気でそう思っている。
新卒で入った会社で、頑張っている人は本当にすごいと思う。
派遣で大きな会社に行った事もあるけど、若い社員さんは皆やめたがっていた。やめていく社員さんを何度見たことか。
でも、やめた先は多くの場合負け組人生です。
精神を病まない程度に、耐えて勤め上げて欲しいと、負け組底辺の俺は強く思います。まあ、最低でも俺の様にならないで欲しい。
――何の話だ。
そう、あずさちゃんは勉強をはじめた。
俺がゲームをしていると、コントローラーを持つ右手と左手の間に頭を突っ込んできて、教科書を開いて勉強をはじめる。
おーーい、画面も見にくいし、ゲームがやりにくい。
しかたがないのでゲームを諦めて、勉強している姿を見つめる。
静かにしていると、時々俺の方を見て、にこりと笑う顔がたまらなく可愛かった。
そんな、あずさちゃんとお別れする日が、やってきたのだ。
それは、あずさ十歳の誕生日だった。
誕生日までのあずさちゃんはいつも俺にべったりだった。
宿題をする時も、何もする事が無い時もあずさちゃんは、俺の体に触れていないと正常ではいられなかった。
いつだったか、柳川の奴が「あずさちゃん、可愛くなったねー。俺のお嫁さんにならないか」と言ったら「嫌!!」と即答されていた。
ゲンに聞かれた時は「だめ、とうさんと結婚するから」と言っていた。
嬉しいのだが俺は父親だから無理だ。
「あずさちゃんは小さいから、とうさんと結婚するのは無理だよ」
と、やさしく言った
「じゃあ、大きくなったら」
「あずさちゃんが、大きくなった時には、とうさんはおじいちゃんだ。無理だと思うなー」
俺が言うと、頬をぷくっとふくらまして言った。
「じゃあ、どうしたらお嫁さんにしてくれるのー」
ここで無理というのは簡単だが、どうせならあずさちゃんにとって有意義な事をしてもらおうと考えた。
「そうだねー、国立大学に入ってくれたら、かな」
「わかった」
すごく簡単に分かってくれた。
この日から、あずさちゃんは自主的に勉強をはじめた。
俺は、高卒だ。
高卒でも、成功者はいる。でも俺みたいな半端者には無理だ。
この時点で負け組に片足を突っ込んでいた。
その後は見るも無惨な転落負け組人生だ。
だからこそ、あずさちゃんには、国立大学にいって勝ち組人生を進んで欲しいと思ったのだ。
国立大学を卒業して、公務員や大会社の社員に新卒で入社してほしい。つらい事や、納得出来ない事があるだろう、だがそれらを乗り越えて定年まで勤め上げれば、きっと人生の勝ち組になれるはずだ。俺は本気でそう思っている。
新卒で入った会社で、頑張っている人は本当にすごいと思う。
派遣で大きな会社に行った事もあるけど、若い社員さんは皆やめたがっていた。やめていく社員さんを何度見たことか。
でも、やめた先は多くの場合負け組人生です。
精神を病まない程度に、耐えて勤め上げて欲しいと、負け組底辺の俺は強く思います。まあ、最低でも俺の様にならないで欲しい。
――何の話だ。
そう、あずさちゃんは勉強をはじめた。
俺がゲームをしていると、コントローラーを持つ右手と左手の間に頭を突っ込んできて、教科書を開いて勉強をはじめる。
おーーい、画面も見にくいし、ゲームがやりにくい。
しかたがないのでゲームを諦めて、勉強している姿を見つめる。
静かにしていると、時々俺の方を見て、にこりと笑う顔がたまらなく可愛かった。
そんな、あずさちゃんとお別れする日が、やってきたのだ。
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