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第八話 ゴミ屋敷
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「どうしたんだ。大声を出すな」
柳川の大声を聞いて、あずさちゃんが恐怖におびえている。
光の無い目が上下左右に激しく動いて、呼吸が荒くなっている。パニック寸前だ。
「どうしたんだ! じゃ、無いですよ」
柳川の視線は、あずさちゃんの体に注がれている。
あずさちゃんがゲンの手土産の服を合わせようと、自分の服を脱いでいた。
今はパンツ一丁だ。
見えている少女の背中は、青いあざだらけだった。
治りかかったあざの上に新たなあざが、内出血して赤くなっている。痛々しい。
「あずさちゃん大丈夫だから。おびえなくていいからね」
俺がやさしく落ち着く様に言った。
あずさちゃんは俺の所に駆け寄ると、しがみついた。
その体は恐怖に震えている。
「写真を撮っておきましょう」
「ば、馬鹿お前。何を言っているんだ」
俺は柳川という男に恐怖した。
「ち、違います。この子の将来、実の両親が親権を振りかざして、木田さんからあずさちゃんを奪い取ろうとするかもしれません。その時にこの状態を証拠として取っておけば、たたかう事が出来ます。分かりますか」
「でもなー」
「あずさちゃん、木田さんとずっと一緒が良いよね。その体を撮らせてもらって良いかな」
柳川が優しく言うと、あずさちゃんは俺から離れて柳川の前に立った。
こんなに小さい少女に、言っている意味が分かったのだろうか。大人しく柳川の言う通りにしている。
「これは酷いですね。……もう良いですよ」
柳川は何枚か写真を撮って、そう言った。
あずさちゃんはそれを聞くと、嬉しそうに新しい服に近寄ると中から気に入った物を出して着はじめた。
「昨日は時間が無かったから、三階を見ていない。これから見てくるよ」
あずさちゃんが服を着るのを待って、手をつないだ。
「御一緒しましょう」
三階への扉は、社長室の扉のすぐ横にある。
社長が、自宅へ最短で行けるつくりだ。
三階への扉を開けると、一階からの階段とつながっている。
外から、直接自宅へ行けるつくりになっている。
三階の自宅の入り口には、立派な扉とインターホンがある。
その扉を開けた。
「うわあ!!」
思わず声が出た。それは柳川も一緒だった。
あずさちゃんが俺の手を一瞬強く握った。
凄惨な状態だった。
俺の部屋より汚いゴミ屋敷だった。
至る所に、黒い虫がいる。
そして何匹かネズミの姿もある。
「こんな所に住んでいたんですね」
柳川があきれた様に言った。
「心が壊れていたのかもしれないな、ちょっとあずさちゃんと扉の外に出ていてくれ」
俺は、掃除を蜂蜜さんに頼んだ。
「待たせた」
「ま、待たせた。って、二秒も経っていませんよ」
「ふふふ」
「なーっ!! 何をしたのですか?」
中を見て、柳川が驚いている。
「これが俺の特技なのさ」
「どうやったのか、見せて下さい」
「それは断る。誰にも見せられないのさ」
「ふふふ、まるで鶴の恩返しだ。見てしまったら、木田さんがどこかへ行ってしまいそうです」
「アンナメーダーマン」
あずさちゃんが小さな声でつぶやいた。
俺はあずさちゃんに見える様に人差し指を口の前に置いた。
その後、柳川に車を運転してもらい、ボロアパートへ行き、部屋を綺麗にして今月で引き払う事を大家さんに伝えた。
電気、ガス、水道の契約も解除しなくてはならない。
ボロアパートを後にして、中古ショップで布団と、P○2というゲームといくつかのソフトを買って食事をして会社に帰った。
柳川は帰るのが面倒臭いと言って泊まっていく事になった。
深夜、あずさちゃんと柳川が眠ってから、俺は廃棄物の処理をした。
「すごいですね。本当にゴミが無くなっています」
翌朝、廃棄物が全て無くなっている事に、柳川が驚いている。
「まあ、俺に出来るのはこれだけなのだけどね」
「いえ、これはすごい能力です。これなら、社員に連絡して、明日からでも出勤してもらいましょう。木田さん、今日から俺もここを自宅にして、生活させてもらいますよ」
「えーーっ」
「ふふふ、よろしくお願いします」
この日から俺と、あずさちゃんは、社長室を自宅にして住み。
三階にある社長邸を、社員寮として、柳川が住む事になった。
翌日、社員が出社してくると、俺の紹介と柳川があいさつをして、仕事が始まった。
社員は、トラックの運転手の男性が四人、リフトの運転手の男性が二人、営業の男性が一人、事務員の女性パートさんが一人、経理の女性パートさんが一人の合計九人だった。
仕事が始まると俺は社長室にこもり、あずさちゃんの相手をする事を日課にした。深夜に廃棄物は処理しているが、それを知らない社員達は、俺が一日中遊んでいるとしか見えなかったようだ。
日々あずさちゃんを甘やかして生活することは、俺にとって人生ではじめて感じる充実感で心を満たしてくれた。
朝から晩まで一緒にいる俺に、あずさちゃんも心が安定したのか頭に毛が生えてきた。
しばらくすると社員の俺に対するあたりが、目に見えてきつくなって来る。
柳川は、ここ以外にも仕事をいくつも持っているらしく、週に一日くらいしか、ここには帰って来られなくなった。
社員と俺は、ギスギスが大きくなったが、逆に柳川と社員の関係は良好になっていく。
そして俺と、あずさちゃんの関係もどんどん良好になっていった。
「た、大変です!!」
柳川があせって、俺の所にやってきた。
いったい何事だろうか。
柳川の大声を聞いて、あずさちゃんが恐怖におびえている。
光の無い目が上下左右に激しく動いて、呼吸が荒くなっている。パニック寸前だ。
「どうしたんだ! じゃ、無いですよ」
柳川の視線は、あずさちゃんの体に注がれている。
あずさちゃんがゲンの手土産の服を合わせようと、自分の服を脱いでいた。
今はパンツ一丁だ。
見えている少女の背中は、青いあざだらけだった。
治りかかったあざの上に新たなあざが、内出血して赤くなっている。痛々しい。
「あずさちゃん大丈夫だから。おびえなくていいからね」
俺がやさしく落ち着く様に言った。
あずさちゃんは俺の所に駆け寄ると、しがみついた。
その体は恐怖に震えている。
「写真を撮っておきましょう」
「ば、馬鹿お前。何を言っているんだ」
俺は柳川という男に恐怖した。
「ち、違います。この子の将来、実の両親が親権を振りかざして、木田さんからあずさちゃんを奪い取ろうとするかもしれません。その時にこの状態を証拠として取っておけば、たたかう事が出来ます。分かりますか」
「でもなー」
「あずさちゃん、木田さんとずっと一緒が良いよね。その体を撮らせてもらって良いかな」
柳川が優しく言うと、あずさちゃんは俺から離れて柳川の前に立った。
こんなに小さい少女に、言っている意味が分かったのだろうか。大人しく柳川の言う通りにしている。
「これは酷いですね。……もう良いですよ」
柳川は何枚か写真を撮って、そう言った。
あずさちゃんはそれを聞くと、嬉しそうに新しい服に近寄ると中から気に入った物を出して着はじめた。
「昨日は時間が無かったから、三階を見ていない。これから見てくるよ」
あずさちゃんが服を着るのを待って、手をつないだ。
「御一緒しましょう」
三階への扉は、社長室の扉のすぐ横にある。
社長が、自宅へ最短で行けるつくりだ。
三階への扉を開けると、一階からの階段とつながっている。
外から、直接自宅へ行けるつくりになっている。
三階の自宅の入り口には、立派な扉とインターホンがある。
その扉を開けた。
「うわあ!!」
思わず声が出た。それは柳川も一緒だった。
あずさちゃんが俺の手を一瞬強く握った。
凄惨な状態だった。
俺の部屋より汚いゴミ屋敷だった。
至る所に、黒い虫がいる。
そして何匹かネズミの姿もある。
「こんな所に住んでいたんですね」
柳川があきれた様に言った。
「心が壊れていたのかもしれないな、ちょっとあずさちゃんと扉の外に出ていてくれ」
俺は、掃除を蜂蜜さんに頼んだ。
「待たせた」
「ま、待たせた。って、二秒も経っていませんよ」
「ふふふ」
「なーっ!! 何をしたのですか?」
中を見て、柳川が驚いている。
「これが俺の特技なのさ」
「どうやったのか、見せて下さい」
「それは断る。誰にも見せられないのさ」
「ふふふ、まるで鶴の恩返しだ。見てしまったら、木田さんがどこかへ行ってしまいそうです」
「アンナメーダーマン」
あずさちゃんが小さな声でつぶやいた。
俺はあずさちゃんに見える様に人差し指を口の前に置いた。
その後、柳川に車を運転してもらい、ボロアパートへ行き、部屋を綺麗にして今月で引き払う事を大家さんに伝えた。
電気、ガス、水道の契約も解除しなくてはならない。
ボロアパートを後にして、中古ショップで布団と、P○2というゲームといくつかのソフトを買って食事をして会社に帰った。
柳川は帰るのが面倒臭いと言って泊まっていく事になった。
深夜、あずさちゃんと柳川が眠ってから、俺は廃棄物の処理をした。
「すごいですね。本当にゴミが無くなっています」
翌朝、廃棄物が全て無くなっている事に、柳川が驚いている。
「まあ、俺に出来るのはこれだけなのだけどね」
「いえ、これはすごい能力です。これなら、社員に連絡して、明日からでも出勤してもらいましょう。木田さん、今日から俺もここを自宅にして、生活させてもらいますよ」
「えーーっ」
「ふふふ、よろしくお願いします」
この日から俺と、あずさちゃんは、社長室を自宅にして住み。
三階にある社長邸を、社員寮として、柳川が住む事になった。
翌日、社員が出社してくると、俺の紹介と柳川があいさつをして、仕事が始まった。
社員は、トラックの運転手の男性が四人、リフトの運転手の男性が二人、営業の男性が一人、事務員の女性パートさんが一人、経理の女性パートさんが一人の合計九人だった。
仕事が始まると俺は社長室にこもり、あずさちゃんの相手をする事を日課にした。深夜に廃棄物は処理しているが、それを知らない社員達は、俺が一日中遊んでいるとしか見えなかったようだ。
日々あずさちゃんを甘やかして生活することは、俺にとって人生ではじめて感じる充実感で心を満たしてくれた。
朝から晩まで一緒にいる俺に、あずさちゃんも心が安定したのか頭に毛が生えてきた。
しばらくすると社員の俺に対するあたりが、目に見えてきつくなって来る。
柳川は、ここ以外にも仕事をいくつも持っているらしく、週に一日くらいしか、ここには帰って来られなくなった。
社員と俺は、ギスギスが大きくなったが、逆に柳川と社員の関係は良好になっていく。
そして俺と、あずさちゃんの関係もどんどん良好になっていった。
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