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第三話 逆鱗
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一週間程が過ぎた。
今の俺は、すでに秒読み段階だ。
失業保険を受給できる日数が残り四十日となった。
一日の金額は五千円を切る。
元々の給料が安いから、もらえるお金が少ない。
「さて、食費を浮かす為、日課のゴミ掃除に出かけますか」
俺は、ボロアパートを出て、街の美化の為歩きだした。
「おい、あれじゃねえか」
「おお、そうだ。間違いねえ」
「うん、情報通りだ」
「おい、あんた、木田さんだろ」
俺の後ろで声がする。四人のやばそうな男だ。
昔風に言うなら、歌舞伎者。
木田って、まさか俺の事か。
だが、俺は気付かない振りをして歩き続ける。
ゴミ拾いは念の為中断した。
「おいてめー、無視してるんじゃねえ!!」
一人が道をふさぐように、前に回り込んできた。
俺の顔に顔を近づけてくる。
――こっ、こえーーー!!
顔がやばいぐらい恐い。
他の三人もそれぞれ恐い顔をしている。
「なあ、あんた、木田だろう」
「た、たぶん、人違いです」
「なめてんのかてめーー!!」
「いやいや、舐めてません。なんで俺が木田だと思うのですかー」
「そ、そりゃあ。特徴がぴったりすぎるからだろう」
だろうって言われてもなー
「特徴がぴったり過ぎるー? ちなみにどんな特徴?」
「そりゃあ、デブで豚、黒縁メガネ、見るからにヒキニート、そして金髪ロン毛だよ」
「金髪ロン毛―!! 俺って金髪ロン毛なの」
四人がめちゃめちゃうなずいている。
俺は近くの車のミラーで確認して見た。
うわーー、金髪の豚がいる。
これが俺の地毛ってことかー。外人になった気分だ。
「ゲンさんが探している。一緒に来てくれ」
「ゲンが!?」
「て、てめーー、ゲンさんを呼び捨てにするんじゃねえ!!! ぶたーー!!」
四人がそろって大声を出した。
いやいや、ゲン本人にそう呼べって言われたんだけどね。
まあ、君達三下には、伝わってないかー。
しかし、ゲンって奴は手下が多いようだ。
恐らく色々な街でこんな奴らが俺を探しているんだろう。
どうするかなー。関わり合いたくねーなー。
一緒に行ったが最後、沼が見える。底なし沼が……。
「頼む! 一緒に来てくれ。見つけて連れて行けなかったら、何されるかわからねえんだ」
顔に悲壮感がただよっている。
俺から見たら全員恐い男達だ。
それがこんなにおびえるという事は、ゲンという男がどんな男か想像出来る。
一度しか会った事は無いが、恐かった。心の底から恐怖が湧き上がってくるような男だった。
「断りてーんだけど」
「だろーなー。テメー見てーな豚が黙ってついてくるとは思ってねー。力ずくになるが悪く思うな! おたくやろー!」
「まてっ、断れねーんなら、最初から言ってくれ、行くよ。いきゃあ良いんだろ!」
気が付くとまわりの人が、チラチラ見ている。
悪い奴らに、デブのおたくがいじめられているように映っているのかな。
だったら助けて下さいよね。
俺は十分おびえていますよ。
俺は四人に囲まれて、車に乗った。
車は、街を抜け郊外に出ると、山道に入った。
「お、おい。何処まで行くんだ」
俺は少し命の危険を感じて焦って聞いて見た。
「うるせーなー。もう少しだよ」
その言葉通り、山道に入るとすぐに目的地に着いたようだ。
「天野環境産業……」
産業廃棄物処理業者のようだ。
門を入ると、敷地は広かった。
そこに三階建ての事務棟があった。これも以外と大きくて立派だ。
廃棄物の処理って、儲かるのか?
俺は少しわくわくしている。
なぜなら就職先として考えているからだー。下心丸出しだ。
でも通勤が大変そうだな。
俺、マイカー持ってねーし。
やっぱ条件的に無理かー。そうなるよなーー。
事務棟の一階は駐車場、二階が事務所、三階は自宅かな。
四人に連れられて、階段を上がり事務所の扉を開け中に入った。
「な、何をしているんだーー。てめーらーー!!」
事務所の中は机が脇によけられ、部屋の中央に両腕を後ろ手に拘束され、体をガムテープでグルグル巻きにされた中年の男女がいる。
口には声を出せないようにガムテープが貼られている。
その横に一人の子供が呆然と立っている。
二人の子供だろうか。
その三人を取り囲んで人相の悪い奴が六人、こっちを見てニヤニヤしている。
俺は三人の姿を見て思わず声を出してしまった。
やばいなー。俺の言葉を聞いて、全員の顔色が変わっている。
「おめーよー。何勘違いしてるんだよー」
「な、なにをいっている」
「テメーを連れてこいと言われたが、痛めつけるなとは言われてねーんだよー! あーー!!」
この十人のリーダーだろうか、あきらかに強さのランクが、上そうな男があごをクイっともち上げた。
その合図を見て、一番格下そうな男が近づいてきた。
――ありがたい。一人で来た。
俺は、ゲンを助けた日から、こんなこともあろうかと、チューブな動画で戦い方を研究した。瞬歩とか、徹の付く武術だ。体の体重移動で相手を倒す技だ。
もちろん付け焼き刃だ。
しかも今だに人を殴るのは恐いので、掌底で相手を押そうと思っている。
「お前、震えているじゃねーか。木田ちゃんよー」
あっ、当たり前だー。おめーらは恐――んだよ。顔から態度、しゃべり方まで、何から何までー!!
「俺が震えているのは、お前達にけがをさせるのが、こえーからだよー!」
「言ってろ、おたくチャーシュー!!」
拳を固め殴りかかってきた。
「てめーー!!、豚はいいが、チャーシューは許さーーん!!!!」
人間、なにで沸点を超えるか分からない。
俺の逆鱗はチャーシューだった。
今の俺は、すでに秒読み段階だ。
失業保険を受給できる日数が残り四十日となった。
一日の金額は五千円を切る。
元々の給料が安いから、もらえるお金が少ない。
「さて、食費を浮かす為、日課のゴミ掃除に出かけますか」
俺は、ボロアパートを出て、街の美化の為歩きだした。
「おい、あれじゃねえか」
「おお、そうだ。間違いねえ」
「うん、情報通りだ」
「おい、あんた、木田さんだろ」
俺の後ろで声がする。四人のやばそうな男だ。
昔風に言うなら、歌舞伎者。
木田って、まさか俺の事か。
だが、俺は気付かない振りをして歩き続ける。
ゴミ拾いは念の為中断した。
「おいてめー、無視してるんじゃねえ!!」
一人が道をふさぐように、前に回り込んできた。
俺の顔に顔を近づけてくる。
――こっ、こえーーー!!
顔がやばいぐらい恐い。
他の三人もそれぞれ恐い顔をしている。
「なあ、あんた、木田だろう」
「た、たぶん、人違いです」
「なめてんのかてめーー!!」
「いやいや、舐めてません。なんで俺が木田だと思うのですかー」
「そ、そりゃあ。特徴がぴったりすぎるからだろう」
だろうって言われてもなー
「特徴がぴったり過ぎるー? ちなみにどんな特徴?」
「そりゃあ、デブで豚、黒縁メガネ、見るからにヒキニート、そして金髪ロン毛だよ」
「金髪ロン毛―!! 俺って金髪ロン毛なの」
四人がめちゃめちゃうなずいている。
俺は近くの車のミラーで確認して見た。
うわーー、金髪の豚がいる。
これが俺の地毛ってことかー。外人になった気分だ。
「ゲンさんが探している。一緒に来てくれ」
「ゲンが!?」
「て、てめーー、ゲンさんを呼び捨てにするんじゃねえ!!! ぶたーー!!」
四人がそろって大声を出した。
いやいや、ゲン本人にそう呼べって言われたんだけどね。
まあ、君達三下には、伝わってないかー。
しかし、ゲンって奴は手下が多いようだ。
恐らく色々な街でこんな奴らが俺を探しているんだろう。
どうするかなー。関わり合いたくねーなー。
一緒に行ったが最後、沼が見える。底なし沼が……。
「頼む! 一緒に来てくれ。見つけて連れて行けなかったら、何されるかわからねえんだ」
顔に悲壮感がただよっている。
俺から見たら全員恐い男達だ。
それがこんなにおびえるという事は、ゲンという男がどんな男か想像出来る。
一度しか会った事は無いが、恐かった。心の底から恐怖が湧き上がってくるような男だった。
「断りてーんだけど」
「だろーなー。テメー見てーな豚が黙ってついてくるとは思ってねー。力ずくになるが悪く思うな! おたくやろー!」
「まてっ、断れねーんなら、最初から言ってくれ、行くよ。いきゃあ良いんだろ!」
気が付くとまわりの人が、チラチラ見ている。
悪い奴らに、デブのおたくがいじめられているように映っているのかな。
だったら助けて下さいよね。
俺は十分おびえていますよ。
俺は四人に囲まれて、車に乗った。
車は、街を抜け郊外に出ると、山道に入った。
「お、おい。何処まで行くんだ」
俺は少し命の危険を感じて焦って聞いて見た。
「うるせーなー。もう少しだよ」
その言葉通り、山道に入るとすぐに目的地に着いたようだ。
「天野環境産業……」
産業廃棄物処理業者のようだ。
門を入ると、敷地は広かった。
そこに三階建ての事務棟があった。これも以外と大きくて立派だ。
廃棄物の処理って、儲かるのか?
俺は少しわくわくしている。
なぜなら就職先として考えているからだー。下心丸出しだ。
でも通勤が大変そうだな。
俺、マイカー持ってねーし。
やっぱ条件的に無理かー。そうなるよなーー。
事務棟の一階は駐車場、二階が事務所、三階は自宅かな。
四人に連れられて、階段を上がり事務所の扉を開け中に入った。
「な、何をしているんだーー。てめーらーー!!」
事務所の中は机が脇によけられ、部屋の中央に両腕を後ろ手に拘束され、体をガムテープでグルグル巻きにされた中年の男女がいる。
口には声を出せないようにガムテープが貼られている。
その横に一人の子供が呆然と立っている。
二人の子供だろうか。
その三人を取り囲んで人相の悪い奴が六人、こっちを見てニヤニヤしている。
俺は三人の姿を見て思わず声を出してしまった。
やばいなー。俺の言葉を聞いて、全員の顔色が変わっている。
「おめーよー。何勘違いしてるんだよー」
「な、なにをいっている」
「テメーを連れてこいと言われたが、痛めつけるなとは言われてねーんだよー! あーー!!」
この十人のリーダーだろうか、あきらかに強さのランクが、上そうな男があごをクイっともち上げた。
その合図を見て、一番格下そうな男が近づいてきた。
――ありがたい。一人で来た。
俺は、ゲンを助けた日から、こんなこともあろうかと、チューブな動画で戦い方を研究した。瞬歩とか、徹の付く武術だ。体の体重移動で相手を倒す技だ。
もちろん付け焼き刃だ。
しかも今だに人を殴るのは恐いので、掌底で相手を押そうと思っている。
「お前、震えているじゃねーか。木田ちゃんよー」
あっ、当たり前だー。おめーらは恐――んだよ。顔から態度、しゃべり方まで、何から何までー!!
「俺が震えているのは、お前達にけがをさせるのが、こえーからだよー!」
「言ってろ、おたくチャーシュー!!」
拳を固め殴りかかってきた。
「てめーー!!、豚はいいが、チャーシューは許さーーん!!!!」
人間、なにで沸点を超えるか分からない。
俺の逆鱗はチャーシューだった。
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