魔王

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第二百七話 究極魔法発動

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「な、何だここはーーー!!!」

「うるせー奴だな。ここは地獄の入り口だ。テメーはこれから地獄へ行くんだよ」

僕は、調子が良い、昔の口調が戻ってくる。
そして、勇者ハルラを挑発してあの魔法を使わせなくてはならない。
確実に自分より強い者の命を奪う究極魔法オフスウィータ。魔力すら必要としない代わりに命を消費する魔法だ。

だが、ハルラはクズだ。
命を消費するという事は、確実に自分も死ぬという事。
いざとなると死ぬのが恐くて使えないかもしれない。

――挑発して激高させないと。

「ひっ、ひっ、ひひひ、ガキが調子付くんじゃねえ」

ハルラは可愛い少年の僕に躊躇無く拳を向けてきた。

パーーーン!!

僕はその拳を避けて、平手打ちを右頬に入れた。

「全く子供を殴ろうとするなんて、最低の大人だね」

「くそーー!! 何なんだテメーは!?」

「まだ分からないかなー。俺ですよ。俺! アスラですよ」

「なっ、何だと。全くおもかげねーじゃねーか。わかるかー! そんなもん!!」

ハルラはニヤリと笑うと剣を出し、ゆっくり鞘から抜いた。

「しねーー!!!」

そのまま僕に斬りかかってきた。

パン!パン!パン!

僕はそれを避けながら、平手打ちを入れていく。
ハルラの顔が見る見る腫れていく。
顔が倍ぐらいの大きさになっている。
痛そうだ。

しかし、ハルラの攻撃が異常に遅い。
僕には止って見える。
弱くなっていないか。

――違う。

僕は勘違いしていた。
僕が成長した時、想像上のハルラも成長させていた。
でも、このハルラは、全然成長していねーー。

――一瞬、こいつなら放って置いても良さそうに感じた。

駄目だ。勇者は普通の人間とは違う。
それにこいつの中身は腐っている。
生かして置いたらまた何人死者が出るか。

「治癒! テメーはぜってー許さん。くらえーー」

ハルラは、治癒を使うともう一度斬りかかってきた。
最早、こんな攻撃当たるわけが無い。
もう一度、平手打ちを六発お見舞いした。

「くそーー、いでーー」

「お前も勇者ならあの魔法を使ったらどうだ。ステータスシフト」

全てのステータスを攻撃力にし、必殺の一撃をくり出す魔法。
勇者のもう一つの究極魔法。

「てめーはーーーー!! 分かって言ってんだろーー!!! ぜってー許さん。許さんぞーーーー!!!!」

「あー、もう使っていたんだね。よっわー!」

「くそーーー!!!」

そう言い終ると、ハルラの目は真っ赤に充血した。
呼吸が荒々しくなり、ハアハア言っている。
興奮状態の様だ。
もう一押しでいけそうな気がする。

ゆっくり近づき殴っていく。
力を入れすぎると死んでしまうので、手に止った蚊を叩くより、少し弱いくらいの力で。

「ぐあああーーーーー。くそおおーー!!!」

「いてーだろうなー。もう防御力もねーんだから」

ふー、見物人がいたら悪い大魔王が、正義の勇者をいたぶっているようにしか見えませんね。

「ぐおおーーーっ、許さん。許さんぞーーー!! アスラーー!!!」

心の底から出ている憎悪の声です。
勇者ハルラから、はじめて恐怖を感じました。
思えば、なんでこの勇者は、こうも僕を目の敵にしていたのでしょうか?

「おい、ハルラ!」

「オフスウィーーーターーーーー!!!!」

「あ、馬鹿! 少し会話しようとしたのにこのタイミングかよー!!!」
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