40 / 208
第四十話 王都へ
しおりを挟む
「うっ、うっ、うっ」
ルチョウさんが僕とイルナの話、フォリスさんの身の上話を聞いて、泣いている。
コデルさんが満足そうにうなずいている。
「アスラ様が魔王であることも、前魔王とは違うこともわかりました。このルチョウ、魔王様の陣営に加わり犬馬の労もいとわず、全力で働かせていただくことを誓います」
「は、はい、よろしくお願いします」
何故か、僕の身の上話は魔王国に広まっていく。
そして、何度も話す僕の身の上話と、フォリスさんの身の上話は、イルナの身の上話にかき消されていく。
そのため、イルナの話しは独り歩きをして、可哀想な魔王の娘イルナの話しとして、魔人の国中に広まることになる。
その後魔人達の心は、いつしか聖女イルナを人間の世界から、助けてやりたいと、思うようにまでなるのだ。
「では、僕たちはオウブさん達が心配ですので、リョウメイ領へ行きます」
「待って欲しい、私も行く」
「えっ」
「私は、魔王都の社交界で何度もリョウメイとは会っておる。私が行った方が話しは、はやいだろう」
「では、街の門の前に移動する、準備はいいな」
コデルさんが移動魔法を使った。
目の前に門の壊れた、城塞都市が現れた。
その、門の前に人垣が出来ている。
「ふむ、わかった。魔王様に一度あわせてくれ」
門の前で、まわりの兵士より一際美しい甲冑を着けている人が、魔王に会わせてくれと言っている。
まさか丁度良いところに、着いてしまったのだろうか。
でも、ここで、軽々しく「僕が魔王です」というのも軽すぎて嫌なので黙っておいた。
「おお、猛将オウブ殿ではないか」
「おお、ルチョウ殿」
「もう戦いは終ってしまったのか。さすがオウブ殿ですな」
「いやあ、シュブさんのおかげです」
「んっ、シュブ?」
つい声が出てしまった。
オウブさんが、自分の横のシュザクをシュブと呼んだのだ。
「おお、アスラ様、俺のシュザクに、シュブと勝手に名前を付けてしまいました。はははは」
「ふふふ、俺のシュザクはシュカイと名付けた」
オウブさんとチョカイさんは、シュザクに名前を付けてくれたようだ。
良く見ると、シュブさんとシュカイさんの腰に剣が刺さっている。
武人は、戦の時には戦場に、命の次に大事な愛剣を持ってくる。
それを、シュザクに与えたのだ。
それは、シュザクを自分の命の次に、大切な物として扱ってくれるということなのだ。
二人の心意気を感じて僕は感動してしまった。
「オウブさん、チョカイさん、シュザクに名前を付けてくださいまして、ありがとうございます」
僕は、二人が椅子に座っているので、両手を一杯に広げて抱きついてしまった。
その時、鼻水が少し出たので、すすった。
「うおおおーー、アスラ殿――」
オウブさんとチョカイさんが抱きついて来た。
「リョウメイ、これが魔王様だ。配下のシュカイに名前を付けたことに感動して泣いて下さるような、そんなお方なのだ」
え、僕は泣いてはいませんよ。
鼻水が垂れたからすすっただけです。
「うおおおおおーーー、魔王様ーー、このリョウメイ感動いたしました。今日より忠誠を誓い、誠心誠意お仕えいたします」
なんだかわかりませんが、リョウメイさんが忠誠を誓ってくれました。ありがたいことです。
「リョウメイ、忠誠を誓うならこれも聞いておけ、どうぞ魔王様!」
ルチョウさんが、僕の生い立ちの話しと、イルナの話しをせがんできた。
仕方がないので、僕が受けてきた濡れ衣の話しや、それを誰も聞いてくれなかった話し、イルナとの幸せに感じていた暮らし、そして突然のイルナとの別れを話した。
そして、フォリスさんが家族を奪われ、領主に理不尽なめにあった話しをした。
「うおおおおおおおーーー」
凄い泣き声になった。
周りにいた五千を超える兵士、暇で城壁の上から様子を見ていた市民の方々が全員泣いている。
コデルさんやルチョウさんまで泣いている、あなた達は初めてじゃ無いでしょ!
「可哀想―、イルナちゃん、イルナちゃーーん!!」
イルナはここにはいませんよ。
なんだか、イルナが凄い人気になっている。
「と、こんな感じです」
回りの人達が、泣きながら臣下の礼を取ってくれました。
「次はアルアド領ですな。このリョウメイ先陣つかまつります」
「はい、では、オウブさん、チョカイさん、リョウメイさん、アルアド領の攻略をお願いいたします」
「はっ」
「あ、そうだ、リョウメイさん、ルチョウさんにも、シュザク一人、スザク十人をそれぞれに預けます。いろいろ役に立ってくれると思います。よろしくお願いします」
「はっ」
「ルチョウさんには、仕事をお願いします」
「何でしょうか」
僕は地図を出した。
そして、辺境五領と、魔王都の中央を指さした。
ここに僕の城を作って下さい。
「え、ここは、魔王直轄地です」
「ならば、問題ないでしょう。僕は魔王です」
「ふふふ、そうですな」
「はい、そうです。城の形は大きな、かっこいい船のような形にして下さい。完成したら、その船の甲板で、親子三人星空を見るのです。きっと、船酔いはしません」
「うわあーーん」
フォリスさんが声を出して泣き出してしまった。
それを見て、まわりの魔人達まで、もらい泣きしている。
このあたりの魔人達は、いい人ばかりなのかもしれない。
「う、ぐっ、わ、わかりました、このルチョウ、最高の魔王家族の居城を作りたいと思います」
涙を拭うこと無く、ルチョウさんが引き受けてくれた。
「アルアド領を、素早く落とし、我らもすぐに参加いたします」
オウブさんが言うと、チョカイさんもリョウメイさんもうなずいている。
「では、お願いします。僕は一度、魔王都を下見に行きたいと思います」
「えっ」
皆が、驚いていたが、僕は魔王都へ行くことを決心していた。
ルチョウさんが僕とイルナの話、フォリスさんの身の上話を聞いて、泣いている。
コデルさんが満足そうにうなずいている。
「アスラ様が魔王であることも、前魔王とは違うこともわかりました。このルチョウ、魔王様の陣営に加わり犬馬の労もいとわず、全力で働かせていただくことを誓います」
「は、はい、よろしくお願いします」
何故か、僕の身の上話は魔王国に広まっていく。
そして、何度も話す僕の身の上話と、フォリスさんの身の上話は、イルナの身の上話にかき消されていく。
そのため、イルナの話しは独り歩きをして、可哀想な魔王の娘イルナの話しとして、魔人の国中に広まることになる。
その後魔人達の心は、いつしか聖女イルナを人間の世界から、助けてやりたいと、思うようにまでなるのだ。
「では、僕たちはオウブさん達が心配ですので、リョウメイ領へ行きます」
「待って欲しい、私も行く」
「えっ」
「私は、魔王都の社交界で何度もリョウメイとは会っておる。私が行った方が話しは、はやいだろう」
「では、街の門の前に移動する、準備はいいな」
コデルさんが移動魔法を使った。
目の前に門の壊れた、城塞都市が現れた。
その、門の前に人垣が出来ている。
「ふむ、わかった。魔王様に一度あわせてくれ」
門の前で、まわりの兵士より一際美しい甲冑を着けている人が、魔王に会わせてくれと言っている。
まさか丁度良いところに、着いてしまったのだろうか。
でも、ここで、軽々しく「僕が魔王です」というのも軽すぎて嫌なので黙っておいた。
「おお、猛将オウブ殿ではないか」
「おお、ルチョウ殿」
「もう戦いは終ってしまったのか。さすがオウブ殿ですな」
「いやあ、シュブさんのおかげです」
「んっ、シュブ?」
つい声が出てしまった。
オウブさんが、自分の横のシュザクをシュブと呼んだのだ。
「おお、アスラ様、俺のシュザクに、シュブと勝手に名前を付けてしまいました。はははは」
「ふふふ、俺のシュザクはシュカイと名付けた」
オウブさんとチョカイさんは、シュザクに名前を付けてくれたようだ。
良く見ると、シュブさんとシュカイさんの腰に剣が刺さっている。
武人は、戦の時には戦場に、命の次に大事な愛剣を持ってくる。
それを、シュザクに与えたのだ。
それは、シュザクを自分の命の次に、大切な物として扱ってくれるということなのだ。
二人の心意気を感じて僕は感動してしまった。
「オウブさん、チョカイさん、シュザクに名前を付けてくださいまして、ありがとうございます」
僕は、二人が椅子に座っているので、両手を一杯に広げて抱きついてしまった。
その時、鼻水が少し出たので、すすった。
「うおおおーー、アスラ殿――」
オウブさんとチョカイさんが抱きついて来た。
「リョウメイ、これが魔王様だ。配下のシュカイに名前を付けたことに感動して泣いて下さるような、そんなお方なのだ」
え、僕は泣いてはいませんよ。
鼻水が垂れたからすすっただけです。
「うおおおおおーーー、魔王様ーー、このリョウメイ感動いたしました。今日より忠誠を誓い、誠心誠意お仕えいたします」
なんだかわかりませんが、リョウメイさんが忠誠を誓ってくれました。ありがたいことです。
「リョウメイ、忠誠を誓うならこれも聞いておけ、どうぞ魔王様!」
ルチョウさんが、僕の生い立ちの話しと、イルナの話しをせがんできた。
仕方がないので、僕が受けてきた濡れ衣の話しや、それを誰も聞いてくれなかった話し、イルナとの幸せに感じていた暮らし、そして突然のイルナとの別れを話した。
そして、フォリスさんが家族を奪われ、領主に理不尽なめにあった話しをした。
「うおおおおおおおーーー」
凄い泣き声になった。
周りにいた五千を超える兵士、暇で城壁の上から様子を見ていた市民の方々が全員泣いている。
コデルさんやルチョウさんまで泣いている、あなた達は初めてじゃ無いでしょ!
「可哀想―、イルナちゃん、イルナちゃーーん!!」
イルナはここにはいませんよ。
なんだか、イルナが凄い人気になっている。
「と、こんな感じです」
回りの人達が、泣きながら臣下の礼を取ってくれました。
「次はアルアド領ですな。このリョウメイ先陣つかまつります」
「はい、では、オウブさん、チョカイさん、リョウメイさん、アルアド領の攻略をお願いいたします」
「はっ」
「あ、そうだ、リョウメイさん、ルチョウさんにも、シュザク一人、スザク十人をそれぞれに預けます。いろいろ役に立ってくれると思います。よろしくお願いします」
「はっ」
「ルチョウさんには、仕事をお願いします」
「何でしょうか」
僕は地図を出した。
そして、辺境五領と、魔王都の中央を指さした。
ここに僕の城を作って下さい。
「え、ここは、魔王直轄地です」
「ならば、問題ないでしょう。僕は魔王です」
「ふふふ、そうですな」
「はい、そうです。城の形は大きな、かっこいい船のような形にして下さい。完成したら、その船の甲板で、親子三人星空を見るのです。きっと、船酔いはしません」
「うわあーーん」
フォリスさんが声を出して泣き出してしまった。
それを見て、まわりの魔人達まで、もらい泣きしている。
このあたりの魔人達は、いい人ばかりなのかもしれない。
「う、ぐっ、わ、わかりました、このルチョウ、最高の魔王家族の居城を作りたいと思います」
涙を拭うこと無く、ルチョウさんが引き受けてくれた。
「アルアド領を、素早く落とし、我らもすぐに参加いたします」
オウブさんが言うと、チョカイさんもリョウメイさんもうなずいている。
「では、お願いします。僕は一度、魔王都を下見に行きたいと思います」
「えっ」
皆が、驚いていたが、僕は魔王都へ行くことを決心していた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる