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第四十話 五百点満点

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「そんなことを言ったって、二十二点は二十二点じゃねえか」

 受験生の中から声がしました。
 どうやら、私のアンチのようですね。
 私は自分でもわかる位シュンとしてしまいました。

「チマちゃん……」

 イサちゃんが小声でチマちゃんを呼びました。
 チマちゃんは、イサちゃんの耳元で事のいきさつを、ささやいているようです。
 ついでにゾングさんも盗み聞きをしている様です。

「なるほど、分かった……レイカ姉!」

「は、はい」

「この平らな大地の果てはどうなっているんだっけ?」

「えっ??? それは、前にも説明したとおり、この大地は平らじゃなくて球なのよ」

「ぎゃはは、球だってそんな訳があるかーー!!」
「どう見たって平らじゃないかーー」
「ひゃはははははーー!!!!」

 受験生がザワザワしています。

「うふふ、そう思うのも無理はありません。この大地はとてつもなく大きな球体だから平らに感じるのです。高い山に登って地平線か水平線を見てご覧なさい。少し丸く見えるはずです。港に戻る船を見てください。平らならだんだん大きくなるだけのはずでしょ。船はマストの頂点から見えてくるはずですよ。それが証拠です」

「……」
「な、なんでそんなことがわかるんだ……」

 どうやら、この世界には地球という言葉もないみたいです。

「レイカ姉はそれ以外にも、美味しい唐揚げや、とんかつも知っている。お前達が食べたことも無いような、とんでも無く美味しい料理だ。お前達の中にヤマト村のことを知っている者はいるのか? 場所さえも知らないだろうどうだ? レイカ姉がサイシュトアリ国の事など知らないのは当たり前の事だ。そもそも興味が無いのだからな」

「…………サイシュトアリ国の事に興味が無い……」

「鎧鉄人!! レイカ姉を抱っこして、この街を最速で一周回ってくれ!!」

 イサちゃんが言うと、鉄人はうなずき私を抱っこして全速で飛び立ちました。

「うおおーーー!!!! と、飛んだーー!!!!」

 鉄人はあっという間に王都を一周するとイサちゃんの前に立ちました。

「どうだ、この中の誰かでこれより速く王都を一周出来る奴はいるのか?」

「馬鹿なのか、それはその鉄人が速いだけじゃねえかーー!!」

 さっきから抵抗している、目つきの悪い私のアンチの受験生が言いました。

「ふふっ!! レイカ姉少し横へ移動してください」

 私が鉄人の側を離れるとイサちゃんは、紫の大剣を背中の鞘から引き抜き正面に構えました。

「キエエエェェェェェーーーーーーーー!!!!!」

 気合い一閃、鉄人を頭から真っ二つに切り裂いた。
 鉄人はゆっくり二つに割れ崩れ落ちていく。

「わあああああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

 悲鳴が上がりました。
 中から死体が飛び出すとでも思ったのでしょう。
 切り口から見えているのは、ただの金属の断面です。とても美しい断面です。
 真っ平らで、なぎの水面のように輝いています。

「はあーはっはっは!!!! 見ろこの鉄人を、これはレイカ姉の魔法で動いているただの鉄の塊だ。人間は入っていない」

「えええええっーーーーーーー」

 私は二つに分かれて倒れている鉄の塊に手をかざしました。
 鉄の塊は、最初に二つの水たまりの様になり、その水たまりが一つになるとそこから鉄人が立ち上がりました。
 足元の魔石は、こっそり拾って手の中に隠しました。

「…………」

 受験生はポカンと口を開けたまま鉄人に見とれています。
 今回の鉄人は、頭は完全防備で露出ゼロですが、体は女性にしてビキニアーマーにしました。
 少し弱そうですが、でも性能は変わりません。

「この鉄人と戦ってみたい者はいるかーー!! フト国神将ドウカンより強いぞーー!!!! 俺より弱いけどなーー!!」

「…………ド、ドウカンより強い……」

 受験生だけでなく試験官や兵士、隊長まで驚いています。

「次の試験は……的の試験かー。的はあれか!? 鉄人火魔法であの的を破壊してくれ!!」

 イサちゃんが言うと、鉄人は右手を前に出すと、火の玉を出しました。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 受験生から悲鳴が上がりました。
 鉄人はチマちゃんの火魔法より強力な魔法を出しました。
 もはや破片すら飛び散りません。
 何もかも燃え尽きてしまいました。
 石畳の表面まで少し溶けたようです。

「こ、こういうことだったのですね」

 試験官が青ざめて言いました。

「ふふっ、おいそこの兵士、もう一つ的を用意しろ!! レイカ姉あの的を壊せないようにしてくれ」

「は、はい」

 私は、イサちゃんの言うとおり、的にゴーレム魔法をかけて、的ゴーレムに防御魔法をかけさせました。

「おい、おまえ達全員で、あの的を壊してみろ!! ふふふ、どんな方法でも良いぞ!! もし出来たら、その箱の中のレンカの宝刀をくれてやる!!」

 レンカの宝刀と聞いて、受験生達の目の色が変わりました。
 箱の中をよく見ると、左手と左足の他にレンカの宝刀が入っています。
 ああ、そうかドウカンの使っていた物ですね。
 武器で攻撃する者、魔法で攻撃する者、受験生は全力を出しているようですが誰一人疵さえ付ける事が出来ませんでした。

「あの、レイカ様」

 ゾングさんが私に恐る恐る声をかけてきました。

「はい、なんですか?」

「まさか、フト国のゲンシン大帝の横に、いつも寄り添って護衛をしている鉄人二体はレイカ様の作った物ですか?」

「そーいえば、最初にあげた気がします。でも、あれは旧式で、今はご覧の通り魔法を使えるようになっていますよ」

「げえぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!! あの二体の鉄人は敵軍数万を倒した実力があるとゲンシン大帝が言っていました。それが旧式……レイカ様は恐ろしすぎる」

 ゾングさんが恐ろしい表情で驚いています。
 恐らく恐怖の表情なのでしょうが、その表情が恐ろしくて私が恐怖しました。
 貴方の顔の方が恐ろしすぎますよ。

「ふふふ、誰も出来ないじゃ無いか!! この試験はすべて出題の仕方に問題があるな。レイカ姉は、五百点満点だ!!」

 ふふふ、イサちゃんは、的に対する防御魔法の試験まで追加してしまいました。
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