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第百七十五話 最強の戦い
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この戦いは、ゴルド軍を追いかけるオリ国軍も、逃げるゴルド国軍も、国境を守るヤパ国軍もじっと動けずに見つめていた。
ファン国の国境を守る守備軍にたった一人で飛び込むキキ。
その後ろでそれを命じたまなが立っている。
マナの体からは相変わらず白い光の柱が雲を突き抜け上空へ立ち上っている。
ファンの兵士は悲惨であった。
キキは手当たり次第に、兵士を投げ飛ばしていた。
キキは人を軽々と、上空へ投げ飛ばす。
その高さは十メートル以上で、落ちる本人も下敷きになる人にもダメージを与えていた。
時々後ろから、攻撃を加える者がいるのだが、その攻撃がキキにダメージを与えることは無かった。
すでにキキは何千という兵士を動けなくしている。
この光景をじっと見つめるあいは、セイに不自由な言葉で頭を保護するように指示していた。
布をギュッと固めると、それをへこんだ頭に押しつけ、しっかりとした革のベルトで固定した。
その固定が終ると、物見台から飛び降り走り出した。
カーーーン
それは、この場にいた多くの兵士全員に聞こえるほどの、大きなそして甲高い金属音の様な音だった。
その音はファンの兵士の中から聞こえた。
だが、兵士の人混みの中から聞こえた為に、なにが起きたか誰にも分らなかった。
ドン、ドン、ドン
音の後、キキの体がファンの兵士の中から弾き飛ばされるように飛び出し、大地でボールの様に弾んでまなの足下に転がった。
その顔は、大きく腫れあがり歯が数本折れていた。
「ザワザワ」
シンと鎮まっていた、兵士の間からざわめきが起った。
キキの強さは、ヤパで行われた武術大会で知れわたっている。
そのキキを一撃で吹き飛ばしたのだ。
そして、ファン国の兵士の間から歓声があがった。
「おか様だー!」
「おか様だーー!!」
その言葉が響いている間にあいは、もう一度走り出す。
その先には、白く輝くまなの姿があった。
あいの壊れた脳は、まなが誰なのかあいに教えてくれてはいなかった。
拳を固め後ろに振りかぶるあいを、まなは悲しそうな顔をしてじっと見つめていた。
「だめーー!」
セイがあいとまなの体の間に自分の体を入れる。
まなはあえてあいの攻撃を受けようと思っていた。
それで少しでも自分の事を思いだしてくれればと思っていた。
あいの頭が治らないのは、あいが心を閉ざしているからだと思っていたのだ。
だが、まなはセイが割って入った為に、とっさにセイの体を守ってしまった。
セイの体を守る為セイに覆い被さってしまったのだ。
パーーン
大きな破裂音の後、あいの体が大きく吹き飛ばされた。
まなはあいの攻撃を受け入れようと思っていたが、セイを守りたいと思い直しをしてしまった。
そのため、強大な魔力が二人の体を勝手に守っていたのだ。
あいの手は、はじけ飛び、皮膚が少し残るだけとなって意識を失っていた。
「おかあ様―」
セイが駆け寄った。
まなは、この光景を見て少し冷静になっていた。
「セイちゃん、何があったのですか」
静かにセイに尋ねた。
ファン国の国境を守る守備軍にたった一人で飛び込むキキ。
その後ろでそれを命じたまなが立っている。
マナの体からは相変わらず白い光の柱が雲を突き抜け上空へ立ち上っている。
ファンの兵士は悲惨であった。
キキは手当たり次第に、兵士を投げ飛ばしていた。
キキは人を軽々と、上空へ投げ飛ばす。
その高さは十メートル以上で、落ちる本人も下敷きになる人にもダメージを与えていた。
時々後ろから、攻撃を加える者がいるのだが、その攻撃がキキにダメージを与えることは無かった。
すでにキキは何千という兵士を動けなくしている。
この光景をじっと見つめるあいは、セイに不自由な言葉で頭を保護するように指示していた。
布をギュッと固めると、それをへこんだ頭に押しつけ、しっかりとした革のベルトで固定した。
その固定が終ると、物見台から飛び降り走り出した。
カーーーン
それは、この場にいた多くの兵士全員に聞こえるほどの、大きなそして甲高い金属音の様な音だった。
その音はファンの兵士の中から聞こえた。
だが、兵士の人混みの中から聞こえた為に、なにが起きたか誰にも分らなかった。
ドン、ドン、ドン
音の後、キキの体がファンの兵士の中から弾き飛ばされるように飛び出し、大地でボールの様に弾んでまなの足下に転がった。
その顔は、大きく腫れあがり歯が数本折れていた。
「ザワザワ」
シンと鎮まっていた、兵士の間からざわめきが起った。
キキの強さは、ヤパで行われた武術大会で知れわたっている。
そのキキを一撃で吹き飛ばしたのだ。
そして、ファン国の兵士の間から歓声があがった。
「おか様だー!」
「おか様だーー!!」
その言葉が響いている間にあいは、もう一度走り出す。
その先には、白く輝くまなの姿があった。
あいの壊れた脳は、まなが誰なのかあいに教えてくれてはいなかった。
拳を固め後ろに振りかぶるあいを、まなは悲しそうな顔をしてじっと見つめていた。
「だめーー!」
セイがあいとまなの体の間に自分の体を入れる。
まなはあえてあいの攻撃を受けようと思っていた。
それで少しでも自分の事を思いだしてくれればと思っていた。
あいの頭が治らないのは、あいが心を閉ざしているからだと思っていたのだ。
だが、まなはセイが割って入った為に、とっさにセイの体を守ってしまった。
セイの体を守る為セイに覆い被さってしまったのだ。
パーーン
大きな破裂音の後、あいの体が大きく吹き飛ばされた。
まなはあいの攻撃を受け入れようと思っていたが、セイを守りたいと思い直しをしてしまった。
そのため、強大な魔力が二人の体を勝手に守っていたのだ。
あいの手は、はじけ飛び、皮膚が少し残るだけとなって意識を失っていた。
「おかあ様―」
セイが駆け寄った。
まなは、この光景を見て少し冷静になっていた。
「セイちゃん、何があったのですか」
静かにセイに尋ねた。
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