北の魔女

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第八十一話 帰還

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わたしは、青い鞘の日本刀をイメージした。
その刀には、切れ味の強化、刀の強度の強化を付与すべくイメージした。
これは、アド正と命名した日本刀だ。

今回は、強い魔人と戦うので、これに、攻撃力強化、防御力強化、治癒に回復も付与するようにイメージした。

アド正改の誕生です。

「キキちゃん、これを持って、魔人と戦って!」

「わがったー!」

キキちゃんはわたしから刀をもぎ取ると、魔人に向かっていった。



魔人は、ペグから奪った剣でペグの首を切り落とそうと、振りかぶっていた。
その剣を振り下ろした。

キーーン
かわいた金属音がした。
キキちゃんが、アド正改を抜かずに鞘で剣を受けた。

「流石、キキちゃん。抜いたら、相手の剣を切ってしまうから」
「鞘のままで受けたんだ」

アド正改は受ける刀ではない、切るための刀で、受けようとしても、相手の武器を切ってしまい、切れた武器でケガをする恐れがある。

「なんだお前達動けたのか」
「腰抜けの餓鬼だと思って無視してやったのに」
「刃向かうなら、お前から血祭りだ」

魔人は剣を振りかぶった。

ドスッ

「ぐあああーあ」

ドカッ、ドカッ、バキッ

「ぐおおおー」

キキちゃんが、魔人の攻撃をかわし、アド正改が鞘に入ったままで魔人を叩き、突いている。

「あら、キキちゃんひょっとして、刀の使い方が分からないのかな」

殴られまくった魔人はたまらず膝を突いた。
キキちゃんは、魔人から剣を取り上げた。

その剣で胸を背中から貫くと、魔人はうつ伏せに倒れた。
キキちゃんは魔人の背中に飛び乗ると、剣をさらに深く押し込んだ。
魔人は背中から剣を、地中深く突き刺され、動けなくなった。
キキちゃんは動けなくなった魔人の背中の上でまなを見つめた。

「まなさま、キキちゃんが、こっちを見ています、ご指示を!」

「ねえ、クーちゃん、こんな時、あいちゃんならどうするかな」

「それは、助けるの一択です」

「わかりました、キキちゃん、剣を抜いて助けてあげて下さい」

キキちゃんは言われるまま、剣を抜いた。

「くそがー、許さねー、ぶっ殺す」

魔人がまなに飛びかかった。

わたしの体に手が届く瞬間、魔人の体が十以上にスライスされた。
キキちゃんが、剣で魔人を横にスライスした。

わたしに襲いかかった魔人にキキちゃんは容赦がなかった。

ばちゃー

まなに、魔人の体液が降り注ぐ。

「ぎゃーーあ」

わたしは悲鳴を上げた、魔人の体液でぐちょぐちょになったからだ。

「まな様、魔人を治癒魔法で助けることが出来ますがどうしますか」

「……」
「わたしは、あいちゃんとは違います」
「殺そうとした相手は許しません」
「正当防衛ですし、治癒はしないで下さい」

「ついでに復活出来ないよう、頭部と心臓部分を消去しておきます」

クーちゃんは、魔人の頭部と胸部の一部を消去した。

「魔人は、この状態でも復活するのですか」

「はい、復活出来る魔人はいます。魔力が多くて治癒魔法が使える魔人はしぶといです」
「この魔人がそうかどうかは、分かりませんが」

「魔人とは、凄いものですね」
「初めて、知りました」

わたしは、この世界に来て本当の死の恐怖を感じた。
魔人は日本では、その強さを比較できるものの見当が付かない。

「クーちゃんはあの魔人が、自分より弱いと知っていましたが、何故分かったのですか」
「ステータスとかですか?」

「ステータスがなにか分かりませんが、簡単ですよ」
「あの魔人がパグ様の突きを避けたとき、拳ひとつ分開いていました」
「私なら、隙間を空けずに避けられます」


「勇者様の名前はペグさんですよ……」
「単純に相手の動きで力量がわかったということですか」

「そうです、それとキキさんの斬撃は、全く見えませんでした」
「だから私には、キキさんの強さは分かりません」
「ただ、わたしが足下にも及ばないほど強いことは分かります」

「わたしには、全員の強さの違いが分かりませんでした」
「誰が、誰より、強いのか」
「これではキキちゃんや、クーちゃんを勝てない相手と戦わせる事になるかもしれません」

戦いにおいて、相手の強さが分かるというのは、すごく大切な事だと認識させられた。
この世界に来て、日本と大きく違うのは魔法があるということ。
それは、魔人という驚異的に強い存在を造り出し、その魔人は人間を目の敵にしている。
戦いは避けられない、ならばいかに安全に戦うか。

「まな様は、あい様と違って、全ての命を救おうとしないのですね」

わたしが考え込んでいると、クーちゃんが話しかけてきた。

「幻滅しましたか」

「いいえ、私は、その考え方がいいと思います」

「あいちゃんは凄いですね、全ての命を救う」
「そんな考え方が出来るなんて」

「はい、素晴らしい方です」

「クーちゃんはあいちゃんが今でも好きなんですね」

「はい、でも今は、まな様が一番です」

「えーーっ」

わたしは、クーちゃんの告白にドキドキしてくねくねしてしまった。



「た……すけて」

わたしの前、クーちゃんの背後から助けを呼ぶ声がした。
両手、両足を折られた、魔法使いの一人が震える声で助けを求めたのだ。

クーちゃんが振り返り、魔法使いの方を見る。

「ひっ」

魔法使いは、短い悲鳴を上げた。

クーちゃんが凄い表情でにらんでいるからだ。
クーちゃんの表情は、これまでの勇者一行のわたしへの非礼に対する、怒り、憎悪、そして弱さに対する蔑み、などの入り混じった表情で、魔法使いはその顔を見て恐怖し体を硬直させた。

クーちゃんはわたしから顔が見えないのをいいことに、これまでの感情を爆発させ、表情で威圧したのだ。

「まな様、治癒で治せますが」
「どうしますか」

「治す必要は、ありません」
「ヤパの王城に帰してあげましょう」
「そこで、治してもらえばいいと思います」

「わかりました」

「じゃあ、クーちゃん全員を、ノルちゃんのところへ移動して下さい」

こうして、城塞都市の調査は一つ目で終了した。
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