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第六十七話 ゴルドの反撃
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多くの人々が昼食を取り出した頃
ゴルド一家は異変に気づいた。
「ゴルド様、オオリの部下から大量の子分共が、捕まっていると報告がありました」
「いくつかのアジトから襲われたと報告があります」
「くそう!」
ゴルドは血走った目で歯ぎしりをした。
「ゴルド様」
「なんだ!」
「広場から貴族の馬車が移動してきます」
マイの乗る馬車である。
マイは中央公園ではなく、北西の広場に移動し、街を見物しながら、領主邸へ入ろうとしていた。
だが、このコースこそがゴルド一家の本拠地の、最も近くを通るコースなのである。
マイは一応の警戒のため警備の兵を五人連れていた。
だが、これもいけなかった。
歩兵であったため、その速度は徒歩の速度で、ゴルドが準備を整え襲撃をするのに好都合となった。
ゴルドはこの馬車こそが敵の親玉であると睨んでいた。
「どこの馬鹿貴族が、ゴルド一家に手を出したのか、思い知らせてやる」
「俺たちの本拠の場所も知らねーくせに、喧嘩を売るとは、身の程知らずも大概にしろ」
ゴルドは、もし本拠の場所を知っていたならここを通らないはず、この事から、本拠は敵に知られていないことを確信した。
「捕らえて、生かして返すな」
「女なら、好きにして良い」
「行けっ!」
「はっ」
マイは何も知らず馬車に乗っていた。
ガッターーン
ブヒヒヒーーン
馬車に大きな衝撃があり馬が嘶き急停車する。
「ぎゃーーあ」
「何をする、ぐはっ」
外で御者の悲鳴が聞こえる。
続いて兵士の声がする。
いくらマイでも異変を感じ恐怖が走る。
「クロさん」
「……」
「クロさん」
「……」
クロを呼んだが返事がない。
ゴルド一家の本拠地のまわりには強い結界が張ってあり、クロの分体は通り抜けられなかった。
どうしよう、窓から様子を見ようかしら。
でも、それで中に私がいることがばれたら。
結局様子見はせず、隠れることにした。
バターン
馬車の扉が荒々しく開けられ数人の足音が聞こえる。
「小頭、誰もいません」
「うむ、なにかの偽装か罠か」
「何か罠があるかもしれねー、慎重に探せ」
恐い、だれか入って来た。
うう、体が震える、止まってばれちゃう。
マイは体をできるだけ小さくして、震える体を、震える手で抱えた。
「この座席が怪しい外せ」
バキバキッ
乱暴に座席が外される。
中に人一人分の空間がある。
だが、中には誰もいなかった。
「何もいません!」
「なら、こっちだ」
「もうここ以外、隠れる場所はねえ」
「覚悟しろ、捕まえたら、たっぷりかわいがってやる」
馬車には座席が二列あり、残る座席は一つだけである。
マイは震えていた、近づく男達の足音、会話、いくら勝ち気な少女でもこの状況がいかに危ういものかわかり、ツーッと、涙が流れ落ちた。
バキー
座席が外された。
男達は、外された座席の中をのぞき込む。
「……」
「あれ、誰もいません」
「小頭、網棚の上、大きな鞄がありますぜ」
座席の上に人が一人入れるほどの鞄が四つ乗っていた。
「ちーっ、こっちに隠れているのか」
「もう居場所は分かっている」
「今出て来たら、殺さねえ、助けてやるから出てこい」
男達は、鞄に向かって声をかける。
もちろん出て来ても、助ける気などない。
恐い、恐い、恐い
暗い闇の中、マイは心で助けが来るのを願っていた。
お願い、誰か助けて、心の中で叫んでいた。
もう涙が止めどなく流れていた。
それでも、泣き声一つ出せずに息を殺していた。
「もう出てきても殺すからな」
「ひーっひひ」
下衆な笑い声を上げ一つ目の鞄を下に叩き下ろす。
ガーン
大きな音を上げ鞄が落ちる。
「軽いですぜ」
「念のためだ開けろ」
「何ですかねー、白い三角の布きれと、目隠し見てーな布きれが入ってやす」
「そんな物放っておけ」
「次だ」
「今度も軽いですぜ」
「念のためだ、開けろ」
「服でやす」
「次だ」
「やはり服でやす」
「次だ」
「小頭、こいつは人ぐらいの重さがあります」
「よしそれだ、慎重に下ろせ」
「ひーーひっひ」
「いま、出て来たら、許してやる」
「どうした、恐くて出てこれねえのか」
「よっし」
「あけろ!」
とうとう鞄の蓋が開けられた。
「……」
「こ、小頭、防具と、武器が入っているだけでやす」
「防具と武器じゃねーんだよ」
「じゃあなんだ、武器と防具に出て来たら許してやるとか言っていたってのか」
「このばかやろー」
「これだけ探してもいねーんだ」
「いくぞ!」
馬車から男達がでていった。
マイは、ほっと胸をなで下ろしていた。
だが、しばらくは様子見のためじっとしていた。
マイは馬車の座席の下の二重底に隠れていたのだ。
男達は外した座席の下を、もっと良く見ておけばよかった。
隅にほんの数ミリだが、マイの今日着ている翡翠色のドレスの端っこが出ていたのだ。
数分隠れていたが、気配がなくなったので、ゆっくり、マイは顔をだした。
まわりを見渡したが、誰もいなかった。
それを見て急に気が緩んだ。
投げ出された鞄を見て
「もー、私のぱんつとぶらじゃーこんなにちらかしてー」
拾い上げ鞄に詰めだした。
ゴルド一家の小頭は、引き上げると言いながら、馬車から見えない位置に隠れていた。
だが、十分程待ったが、何も変化がなかったので、引き上げようと思い、引き上げの合図を送ろうとした。
その瞬間、馬車がガッタっと揺れた。
マイが、下着の入った鞄を網棚に戻したのだ。
そして、馬車から顔を出し、外を見回した。
賊の姿はなかった。
あったのは、御者の死体と護衛の死体、馬車の車輪に突っ込まれた丸太だけだった。
安心して馬車から降りた。
「ひっ!」
マイは小さく悲鳴を上げてしまった。
建物の影から次々賊が姿を現わしたのだ。
「ひーひっひひー」
賊は皆、薄笑いを浮かべている。
ガツッ!
マイは背後に衝撃をうけ気絶してしまった。
ゴルド一家は異変に気づいた。
「ゴルド様、オオリの部下から大量の子分共が、捕まっていると報告がありました」
「いくつかのアジトから襲われたと報告があります」
「くそう!」
ゴルドは血走った目で歯ぎしりをした。
「ゴルド様」
「なんだ!」
「広場から貴族の馬車が移動してきます」
マイの乗る馬車である。
マイは中央公園ではなく、北西の広場に移動し、街を見物しながら、領主邸へ入ろうとしていた。
だが、このコースこそがゴルド一家の本拠地の、最も近くを通るコースなのである。
マイは一応の警戒のため警備の兵を五人連れていた。
だが、これもいけなかった。
歩兵であったため、その速度は徒歩の速度で、ゴルドが準備を整え襲撃をするのに好都合となった。
ゴルドはこの馬車こそが敵の親玉であると睨んでいた。
「どこの馬鹿貴族が、ゴルド一家に手を出したのか、思い知らせてやる」
「俺たちの本拠の場所も知らねーくせに、喧嘩を売るとは、身の程知らずも大概にしろ」
ゴルドは、もし本拠の場所を知っていたならここを通らないはず、この事から、本拠は敵に知られていないことを確信した。
「捕らえて、生かして返すな」
「女なら、好きにして良い」
「行けっ!」
「はっ」
マイは何も知らず馬車に乗っていた。
ガッターーン
ブヒヒヒーーン
馬車に大きな衝撃があり馬が嘶き急停車する。
「ぎゃーーあ」
「何をする、ぐはっ」
外で御者の悲鳴が聞こえる。
続いて兵士の声がする。
いくらマイでも異変を感じ恐怖が走る。
「クロさん」
「……」
「クロさん」
「……」
クロを呼んだが返事がない。
ゴルド一家の本拠地のまわりには強い結界が張ってあり、クロの分体は通り抜けられなかった。
どうしよう、窓から様子を見ようかしら。
でも、それで中に私がいることがばれたら。
結局様子見はせず、隠れることにした。
バターン
馬車の扉が荒々しく開けられ数人の足音が聞こえる。
「小頭、誰もいません」
「うむ、なにかの偽装か罠か」
「何か罠があるかもしれねー、慎重に探せ」
恐い、だれか入って来た。
うう、体が震える、止まってばれちゃう。
マイは体をできるだけ小さくして、震える体を、震える手で抱えた。
「この座席が怪しい外せ」
バキバキッ
乱暴に座席が外される。
中に人一人分の空間がある。
だが、中には誰もいなかった。
「何もいません!」
「なら、こっちだ」
「もうここ以外、隠れる場所はねえ」
「覚悟しろ、捕まえたら、たっぷりかわいがってやる」
馬車には座席が二列あり、残る座席は一つだけである。
マイは震えていた、近づく男達の足音、会話、いくら勝ち気な少女でもこの状況がいかに危ういものかわかり、ツーッと、涙が流れ落ちた。
バキー
座席が外された。
男達は、外された座席の中をのぞき込む。
「……」
「あれ、誰もいません」
「小頭、網棚の上、大きな鞄がありますぜ」
座席の上に人が一人入れるほどの鞄が四つ乗っていた。
「ちーっ、こっちに隠れているのか」
「もう居場所は分かっている」
「今出て来たら、殺さねえ、助けてやるから出てこい」
男達は、鞄に向かって声をかける。
もちろん出て来ても、助ける気などない。
恐い、恐い、恐い
暗い闇の中、マイは心で助けが来るのを願っていた。
お願い、誰か助けて、心の中で叫んでいた。
もう涙が止めどなく流れていた。
それでも、泣き声一つ出せずに息を殺していた。
「もう出てきても殺すからな」
「ひーっひひ」
下衆な笑い声を上げ一つ目の鞄を下に叩き下ろす。
ガーン
大きな音を上げ鞄が落ちる。
「軽いですぜ」
「念のためだ開けろ」
「何ですかねー、白い三角の布きれと、目隠し見てーな布きれが入ってやす」
「そんな物放っておけ」
「次だ」
「今度も軽いですぜ」
「念のためだ、開けろ」
「服でやす」
「次だ」
「やはり服でやす」
「次だ」
「小頭、こいつは人ぐらいの重さがあります」
「よしそれだ、慎重に下ろせ」
「ひーーひっひ」
「いま、出て来たら、許してやる」
「どうした、恐くて出てこれねえのか」
「よっし」
「あけろ!」
とうとう鞄の蓋が開けられた。
「……」
「こ、小頭、防具と、武器が入っているだけでやす」
「防具と武器じゃねーんだよ」
「じゃあなんだ、武器と防具に出て来たら許してやるとか言っていたってのか」
「このばかやろー」
「これだけ探してもいねーんだ」
「いくぞ!」
馬車から男達がでていった。
マイは、ほっと胸をなで下ろしていた。
だが、しばらくは様子見のためじっとしていた。
マイは馬車の座席の下の二重底に隠れていたのだ。
男達は外した座席の下を、もっと良く見ておけばよかった。
隅にほんの数ミリだが、マイの今日着ている翡翠色のドレスの端っこが出ていたのだ。
数分隠れていたが、気配がなくなったので、ゆっくり、マイは顔をだした。
まわりを見渡したが、誰もいなかった。
それを見て急に気が緩んだ。
投げ出された鞄を見て
「もー、私のぱんつとぶらじゃーこんなにちらかしてー」
拾い上げ鞄に詰めだした。
ゴルド一家の小頭は、引き上げると言いながら、馬車から見えない位置に隠れていた。
だが、十分程待ったが、何も変化がなかったので、引き上げようと思い、引き上げの合図を送ろうとした。
その瞬間、馬車がガッタっと揺れた。
マイが、下着の入った鞄を網棚に戻したのだ。
そして、馬車から顔を出し、外を見回した。
賊の姿はなかった。
あったのは、御者の死体と護衛の死体、馬車の車輪に突っ込まれた丸太だけだった。
安心して馬車から降りた。
「ひっ!」
マイは小さく悲鳴を上げてしまった。
建物の影から次々賊が姿を現わしたのだ。
「ひーひっひひー」
賊は皆、薄笑いを浮かべている。
ガツッ!
マイは背後に衝撃をうけ気絶してしまった。
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