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第六十四話 魔人セイ
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ホイとあい、ミドムラサキが森を疾走している。
あいの服から露出している肌に、ぽっぽっと水滴が当たる。
ホイの汗だ。
さっきの休憩から一時間半ほど走り続けている。
あいはミドムラサキの方をチラチラ気にしている。
ホイの疲労を心配して、休憩の一言を言って欲しいと思っているのだ。
そろそろ、自分で言おうかなーと思っていると、ホイが巨木にのぼり始める。
そして巨木の太い枝の上で立ち止まった。
あいとミドムラサキが横に並ぶと、ホイが指をさす。
「あそこが水場です」
深そうな池とそこに流れる小川がみえる。
「あー、近づかないで下さい、魔獣がいますから」
「何人か村人が食べられています」
「そうですか」
「でも、私たちは大丈夫です」
「ホイさんは危険です、ここにいてください」
あいが、ホイに声をかけると、笑顔で池に走り出した。
「えー、魔獣ですよー」
ホイは声をかけたが、一緒には恐くてついて行けなかった。
あいとミドムラサキが池の中をのぞくと、小さな赤い光が四つ動いている。
池の脇に人影を見つけると四つの光が近づいてくる
ミドムラサキは日本刀血染に手をかける。
水面から巨大なナマズの様な魚が二匹飛び出し、あいとミドムラサキに襲いかかった。
その大きな口は人間など一口で飲み込むほどの大きさだった。
「血染!」
ミドムラサキが太刀をを抜き横に払うと、ナマズは上下二つに綺麗に分かれた。
「す、すごい切れ味です」
ミドムラサキは、感動している。
あいはその間何もせずすべて、ミドムラサキに任せていた。
ことあるごとに血染に手をかけるミドムラサキを見て、使いたい事を感じていたからだ。
「す、すごい魔獣を一撃で二匹もやっつけちゃった」
木の上でホイが目を見開いて驚いている。
「治癒!」
魔獣が心肺停止となり、魔力が抜けきるとあいは、治癒を施した。
魔獣は元のナマズに戻った。
少し池から離れていたため、あいが手で二匹のナマズを池に戻してやった。
「ねえ、ミドムラサキさん」
「同族を切るのって抵抗はないのですか」
「えっ」
ミドムラサキは、最初あいが何を言っているのか全くわからなかった。
「あい様、わたしは精霊魔人です、精霊から魔人になりました」
「私だけじゃなく、シロ様、ハイ様、アオ、アカ、クロ全員精霊魔人なのですよ」
深い森には聖なる力が溜まり、精霊が生まれる。
その精霊がさらに魔力が使えるようになり、魔力が大きくなると精霊魔人になるのだ。
「だから、魔獣とは同族にはなりません」
「それに同じ魔獣でも、種族が違えば同族にはなりませんよ」
「へーー」
あいは、自分から聞いておいて同族じゃ無いとわかって、もうこの話から感心を無くしている。
「あい様!」
ミドムラサキが、池の中の異変を感じた。
あいは、黙って頷いている。
池の中から、象の頭程もある赤い光が二つ浮上してきている。
「あい様、この魔獣は魔人になるすぐ手前です」
「退治せず、魔人にしてみてはいかがでしょうか」
「あい様の超回復をすると、魔力が上昇するとクロから聞いています」
「そうですね、そうしましょう」
あいはそんな方法があるのかと感心していた。
せっかく、ここまで成長した魔獣を弱々しい元の姿に戻すのに、実は抵抗を感じていたのだ。
「ただ、なりたての魔人は多少暴れると思うので、力の違いを見せつけなければ成りません」
「殺さない程度に、ぶん殴って下さい」
「はい、わかりました」
あいが返事をすると同時に、池全体と同じ位の魔獣がヌーと浮上した。
あいがその魔獣の上に素早く飛び乗ると、回復魔法をかける。
「回復!」
魔獣の動きが止まった。
全身の細胞が魔力に置き換わる瞬間である。
死ぬより痛い激痛の瞬間。
巨大な魔獣でもそれは同じで、震える事も出来ず、たた動きを止め激痛に耐えている。
やがて、痛みが少しずつ引いてきたのか体に震えがおきる。
同時に、体の大きさに変化がおき、どんどん縮んで人間の姿になる。
あいはいつ魔人が飛びかかってきてもいいように身構える。
だが、痛みの引いた魚魔人は、正座をして頭を下げている。
「ねー、ミドムラサキさんもうぶん殴ってもいいのですか」
「えーーえー」
ミドムラサキは驚いていた。
この状況のどこにぶん殴る要素があるのかと驚いた。
「いえいえ、あい様、殴っちゃ駄目です」
「この魔人はすでに、あい様に恩義を感じています」
「とても頭の良い魔人ですよ」
「そ、そうですね」
あいは、真っ赤な顔をしてもじもじしている。
あー、これは本気でぶん殴ろうとしていたやつだ。
あい様は私を信じ切って、言った事だけを実行しようとしていたのか。
そう思うと苦笑してしまった。
「この魔人は、生まれたばかりで赤ん坊と同じです」
「まずは名前を付けてあげましょう」
「はい」
あいが返事をすると、二人は生まれたばかりの魚魔人をじっくり見た。
生まれたばかりの魔人は、生まれたばかりの姿で、全身が少しネズミ色で、胸とお尻に少し鱗のような模様がある。
フナかコイの面影がある。
顔はアオによく似ている。
「ねず美、ねず子でどうでしょうか」
ミドムラサキがいうと、あいが微妙な表情である。
「セイ! アオさんに似ているから、青っていう意味でセイです」
「よかったな、セイ、あい様に名前を付けてもらったぞ」
ミドムラサキが魚魔人に話しかけると、わかっているのか、魚魔人は笑顔になった。
おとなしい、頭の良い魔人とわかると、ミドムラサキはホイを手招きして、こちらに来るように呼んだ。
ホイが来るとセイに向かって、ミドムラサキがあいを指さし、
「お母様」
次に自分を指さし
「お姉さん」
ホイを指さし
「お姉さん」
と、教えた。
「おはあはま、おれえーはん、おれえーはん」
セイはミドムラサキを真似してたどたどしく発音した。
「セイ!」
ミドムラサキがセイを指さし大きめの声で言う。
「セイ」
セイは自分を指さし、言う。
あいもミドムラサキもホイも、笑顔で大きく頷いた。
「だーーああーあ」
あいが大声を上げる。
ミドムラサキとホイとセイが驚いてあいを見つめた。
あいの服から露出している肌に、ぽっぽっと水滴が当たる。
ホイの汗だ。
さっきの休憩から一時間半ほど走り続けている。
あいはミドムラサキの方をチラチラ気にしている。
ホイの疲労を心配して、休憩の一言を言って欲しいと思っているのだ。
そろそろ、自分で言おうかなーと思っていると、ホイが巨木にのぼり始める。
そして巨木の太い枝の上で立ち止まった。
あいとミドムラサキが横に並ぶと、ホイが指をさす。
「あそこが水場です」
深そうな池とそこに流れる小川がみえる。
「あー、近づかないで下さい、魔獣がいますから」
「何人か村人が食べられています」
「そうですか」
「でも、私たちは大丈夫です」
「ホイさんは危険です、ここにいてください」
あいが、ホイに声をかけると、笑顔で池に走り出した。
「えー、魔獣ですよー」
ホイは声をかけたが、一緒には恐くてついて行けなかった。
あいとミドムラサキが池の中をのぞくと、小さな赤い光が四つ動いている。
池の脇に人影を見つけると四つの光が近づいてくる
ミドムラサキは日本刀血染に手をかける。
水面から巨大なナマズの様な魚が二匹飛び出し、あいとミドムラサキに襲いかかった。
その大きな口は人間など一口で飲み込むほどの大きさだった。
「血染!」
ミドムラサキが太刀をを抜き横に払うと、ナマズは上下二つに綺麗に分かれた。
「す、すごい切れ味です」
ミドムラサキは、感動している。
あいはその間何もせずすべて、ミドムラサキに任せていた。
ことあるごとに血染に手をかけるミドムラサキを見て、使いたい事を感じていたからだ。
「す、すごい魔獣を一撃で二匹もやっつけちゃった」
木の上でホイが目を見開いて驚いている。
「治癒!」
魔獣が心肺停止となり、魔力が抜けきるとあいは、治癒を施した。
魔獣は元のナマズに戻った。
少し池から離れていたため、あいが手で二匹のナマズを池に戻してやった。
「ねえ、ミドムラサキさん」
「同族を切るのって抵抗はないのですか」
「えっ」
ミドムラサキは、最初あいが何を言っているのか全くわからなかった。
「あい様、わたしは精霊魔人です、精霊から魔人になりました」
「私だけじゃなく、シロ様、ハイ様、アオ、アカ、クロ全員精霊魔人なのですよ」
深い森には聖なる力が溜まり、精霊が生まれる。
その精霊がさらに魔力が使えるようになり、魔力が大きくなると精霊魔人になるのだ。
「だから、魔獣とは同族にはなりません」
「それに同じ魔獣でも、種族が違えば同族にはなりませんよ」
「へーー」
あいは、自分から聞いておいて同族じゃ無いとわかって、もうこの話から感心を無くしている。
「あい様!」
ミドムラサキが、池の中の異変を感じた。
あいは、黙って頷いている。
池の中から、象の頭程もある赤い光が二つ浮上してきている。
「あい様、この魔獣は魔人になるすぐ手前です」
「退治せず、魔人にしてみてはいかがでしょうか」
「あい様の超回復をすると、魔力が上昇するとクロから聞いています」
「そうですね、そうしましょう」
あいはそんな方法があるのかと感心していた。
せっかく、ここまで成長した魔獣を弱々しい元の姿に戻すのに、実は抵抗を感じていたのだ。
「ただ、なりたての魔人は多少暴れると思うので、力の違いを見せつけなければ成りません」
「殺さない程度に、ぶん殴って下さい」
「はい、わかりました」
あいが返事をすると同時に、池全体と同じ位の魔獣がヌーと浮上した。
あいがその魔獣の上に素早く飛び乗ると、回復魔法をかける。
「回復!」
魔獣の動きが止まった。
全身の細胞が魔力に置き換わる瞬間である。
死ぬより痛い激痛の瞬間。
巨大な魔獣でもそれは同じで、震える事も出来ず、たた動きを止め激痛に耐えている。
やがて、痛みが少しずつ引いてきたのか体に震えがおきる。
同時に、体の大きさに変化がおき、どんどん縮んで人間の姿になる。
あいはいつ魔人が飛びかかってきてもいいように身構える。
だが、痛みの引いた魚魔人は、正座をして頭を下げている。
「ねー、ミドムラサキさんもうぶん殴ってもいいのですか」
「えーーえー」
ミドムラサキは驚いていた。
この状況のどこにぶん殴る要素があるのかと驚いた。
「いえいえ、あい様、殴っちゃ駄目です」
「この魔人はすでに、あい様に恩義を感じています」
「とても頭の良い魔人ですよ」
「そ、そうですね」
あいは、真っ赤な顔をしてもじもじしている。
あー、これは本気でぶん殴ろうとしていたやつだ。
あい様は私を信じ切って、言った事だけを実行しようとしていたのか。
そう思うと苦笑してしまった。
「この魔人は、生まれたばかりで赤ん坊と同じです」
「まずは名前を付けてあげましょう」
「はい」
あいが返事をすると、二人は生まれたばかりの魚魔人をじっくり見た。
生まれたばかりの魔人は、生まれたばかりの姿で、全身が少しネズミ色で、胸とお尻に少し鱗のような模様がある。
フナかコイの面影がある。
顔はアオによく似ている。
「ねず美、ねず子でどうでしょうか」
ミドムラサキがいうと、あいが微妙な表情である。
「セイ! アオさんに似ているから、青っていう意味でセイです」
「よかったな、セイ、あい様に名前を付けてもらったぞ」
ミドムラサキが魚魔人に話しかけると、わかっているのか、魚魔人は笑顔になった。
おとなしい、頭の良い魔人とわかると、ミドムラサキはホイを手招きして、こちらに来るように呼んだ。
ホイが来るとセイに向かって、ミドムラサキがあいを指さし、
「お母様」
次に自分を指さし
「お姉さん」
ホイを指さし
「お姉さん」
と、教えた。
「おはあはま、おれえーはん、おれえーはん」
セイはミドムラサキを真似してたどたどしく発音した。
「セイ!」
ミドムラサキがセイを指さし大きめの声で言う。
「セイ」
セイは自分を指さし、言う。
あいもミドムラサキもホイも、笑顔で大きく頷いた。
「だーーああーあ」
あいが大声を上げる。
ミドムラサキとホイとセイが驚いてあいを見つめた。
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