北の魔女

覧都

文字の大きさ
上 下
16 / 180

第十六話 新たな討伐

しおりを挟む
結局、兵士は三百人程が生還、残りは行方不明となった。登録者からは犠牲者無しという結果だった。

「本当にそれでよろしいのですか」

隊長がたずねる。

「それ以外ならあなたたちを助けた意味が無くなります」
「私たちは目立たないように言われいてますので」

メイが代表で話す。

隊長と交渉した結果、この討伐は、兵士と伍イ団の協力により魔獣を倒したということにしてもらった。

分かれるとき髭の兵士が、ずっと見え無くなるまで頭を下げている姿があった。

あの人だけあいちゃんの魔法を一人で受けていたのよねー。この先出世しそう。レイはそう思った。


その後、グエン商会に行き、魔力を納品した。

「金貨二十五枚ですね」
「魔封石は階級上昇です。金貨五十枚用になります。個人用も金貨一枚から十枚に上昇です」
「伍イ団はこれでイネスの、順位四番になりましたよ。掲示板に順位表がありますので、見ておいてくださいね」

順位は魔封石の階級で決まる。

確認したら、
一位 青龍団
二位 赤龍団
三位 猛虎団
四位 伍イ団

となっていた。
他は皆、百人以上の団員がいるのに、伍イ団は五人だから凄い事だと言われた。


「今回の報酬は無しだ」

「えーーえ」

アド商会への報告は、女性三人で来ていた。
この後宝飾店へ行くためだ。

「目立たないようにと言ったはずだ」
「しかも、兵士が失敗したらと、いったはずだ」
「王室が支払わないと言ってきた」

「そうですか」

三人はしょんぼりした。

「なーーんてな」
「冗談だ」

シャムは上機嫌だった。

「兵士まで助けるとはな、全部見ていたよ」
「あいちゃんは死にそうな者を無視するのが嫌みたいだね」
「それでは隠密活動ができなくて、今後の仕事の幅が狭くなるから困るけど、それがあいちゃんだからしょうが無いのかな」
「お金はグエン商会の口座へ預けておいた、後で確認しておいてほしい」
「今回はお疲れ様でした」

シャムが頭を下げた。

三人も頭を下げた。


青龍団本部

団長は青龍を名乗っている。
熊のようにずんぐりした大男だ。

「あれはやべーえって」

副団長のギドがいう。
浅黒い肌の鋭い目の男だ。

「あの魔獣を一人で、やりゃあがった」
「それだけじゃねー、岩や水を出し、死者まで復活させやあがった」

「それは、北の魔女ということか」

「わからねー」

「まあ、伍イ団はやべえって事だ」
「団員に、伍イ団には喧嘩は売らねえように言っておかねえとな」

「俺からも話がある」

団長の青龍がいう

「ササ領から連絡が来た、団員が百人以上やられた」
「領兵は三千人以上、やられている」

「そんなにすげーのか」

「人間でどうこう出来るもんじゃねえらしい」
「赤龍も猛虎も、もう団員を出さねえらしい、グエン商会も募集をださねえってことだ」

「ひょっとすると伍イ団の出番かな」

「それで死んでくれるとおもしれえけどな」

二人が嫌な笑いを浮かべていた。


アド宝飾店で買い物を済ました三人は、ベイに向かっていた。

「ぶっ」

「レイちゃん笑っちゃだめだよ」

「だってシャム様が、あの黒いパンツを履いているんだよ」
「想像しただけで笑えてくる」

「くすくす」

三人は笑っている。シャムを笑っているようでそういう訳ではなく、新しいパンツを買って嬉しくって、何でも可笑しいのだ。


ベイに着くといつもの個室に案内された。

ガイとロイが飲み物を飲んでいる。
隣に美しい女性がいる。

「あー皆さんお邪魔しています」

グエン商会の受付嬢だった。服装がきちっとしているだけで分からなかった。声を聞いてやっとわかった。

「もう、皆さんにしか頼めないのです」

「とりあえず、食事をしませんか」

メイが提案する。

あいが美味そうに牛乳を飲み、料理に手を付ける。
全員手づかみで、料理を食べ出すと受付嬢も手で食べ出した。

「あのー、話してもよろしいですか」

皆が無言で頷く。

「ササ領から討伐の依頼が来ていまして」

ササ領はイナ国の南端にある。
現王の弟の領地だ。

「最初、人員の募集でしたが、参加した人が大勢死んでしまって、討伐に変わりました」
「ですが、受ける人が誰もいません」
「既に幾つも村が滅ぼされ、領民も困っています」
「金貨三万枚の報酬です」
「どうでしょうやって頂けませんか」

「三万枚か、今回の討伐より安いな」
「あいちゃんどうする」

ガイがあいに視線を移すと、あいは手に一杯料理を持ったまま止まっている。
あーこれは受けるなーと、四人は思った。

「困っている人がいるなら、やります」

「よかった」

「すぐに領主様に連絡します。明日グエン商会に来てください」

受付嬢は嬉しそうに帰っていった。
この日の食事代はグエン商会が出してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...