北の魔女

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第二話 初めての魔法

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「……」

まなは暗闇の中、一人激痛に耐えていた。

全身の細胞一つ一つに、針を刺されるような痛み。

痛みも度を超すと声も出せない。痛い痛いと叫べるうちは、今のまなの痛みには遠く及ばない。

その痛みは気絶すらも許さない。痛みが覚醒を伴うため痛みから解放されない。

息を止め全身を丸めて痛みに耐えていると、少しだけ痛みが和らいだ、その後徐々に痛みが和らぎ楽になった。

「はーはー」

呼吸が止めていられる間だったので、時間にして1分もたっていない。だが、まなには何時間にも感じられた。

「疲れた」

ゴロンと仰向きに寝転がる。

「なーあ、宇宙かここは!」

何も見えない暗闇、試しに顔の前に手を持ってくる、何も見えない、指でまつげを触る、触っている感触はあるが何も見えない。

「ここは、一体どこだろう」

ギイイー

背後で扉が開く音がする。開いた扉から光りが差し込む。

「人間の匂いがする」

頭に角のある女が青く光る目でこちらを見ている「ここは、北の魔女様の城だ。侵入者は殺すそして、人間なら喰う」

「うわー、後ろから恐ろしい人が来た」

全身に恐怖が走った。

恐い、恐い、恐い、体が反射的に角女と反対側へ一歩踏み出す。

ドスン、背中から激痛が走る。

「ぎゃははー」

角女がすごく笑っている。その笑顔がまた恐ろしい。目が吊り上がり、口が耳まで開いていた

「嘘っ」

まなの胸を角女の腕が貫いていた。

「あらら」

今度は角女が、引き抜いた血の滴る腕を見つめ驚いている。

「心臓を潰したのに死なないなんて」

今度は鼻を摘まみ。

「うわあー、北の魔女様の魔力の匂いがする」

「貴方はもしかして、若返った北の魔女様ですか」

「いだだだだだー」

胸に大穴が開いたはずの、まなが声を出す。すでに胸の大穴は塞がり服の穴まで直っている。

「あのー北の魔女様、色々すみません」

恐る恐る角女が謝る。

「すみませんで済むかーー」

「死んじゃうだろうがー」

「・・・」

「あれ、何で死んでないんだ」

胸を擦りながらまなが呟く。

「ぎゃははは、何を言っているのですか北の魔女様、魔女は不老不死ではありませんか」

そう、魔女は不老不死である。だが北の魔女は年を取っていた。これは、北の魔女の呪いによるものである。

北の魔女は魔法を際限なく使えると、面白くないという理由で、魔法を使えば、年を取る呪い。

そして、若返りの魔法には強大な不幸が訪れるという呪いを掛けた。

前回の若返りもアドが強く反対したように大変なことが起きた。

今回の若返りでは、北の魔女には激痛という不幸が起こり、この世界には北の魔女がいなくなるという不幸が訪れていた。

北の魔女が誰にどれだけの不幸が訪れるのか設定をし忘れたために。

そして、まなにも・・・

「まさか、北の魔女様記憶でもなくされましたか」

「そ、そうね何か記憶が曖昧で」

まなは、頭に手を置き角女の言葉に乗っかった

「私は北の魔女様の護衛係、鬼姫キキントゥワと申します」

「そう、キキさんね。わかったわ。」

「私のことは、まなって呼んでくださいね」

まなは、頬を赤らめ、目をキラキラしてつづける。

「ねーキキさん私にも魔法が使えるかな」

「使えますよ、やってみますか」

「本当!やるやる」

今日一の笑顔である。

その笑顔に何か不安を感じたのか

「あっでも何かあるといけません、場所を変えましょう」

キキは、まなの手を握ると一枚の紙切れを出した。出したのは、移動の魔法符である。

一瞬で森の中に出た。

「ふぁんふぁんふぁん、きゅんきゅんきゅん」

周りで虫の声がする。

「なんか虫の声がすごく変」

「ここは、魔女の森の中央です。ここなら大抵の事は大丈夫です」

「キキさん、魔法の使い方がわからないのだけど」

「私は鬼なので魔法は使えませんが、どこに出すか決めて、具体的な形を思い浮かべるだけと聞いています」

「出す場所は足元」

「具体的な形、火にしよう。ローソクの火」

目を閉じローソクの火を思い浮かべる。

カッ

巨大な火柱が上がり月まで焦がした。

「よかった、ローソクの火で、キャンプファイアーならどうなっていたのだろう」

「キキさん大丈夫だった」

心配になりキキの方を見る。

「はい、鬼は丈夫ですから。でも、あと2度温度が高かったら消滅していました」

「ギリギリじゃん」

目が吊り上がり、口が耳より少し前まで開いているキキがまなの方を見る。

あーキキさん半笑いで安心させようとしてくれているのかー。

って笑顔恐すぎなんですけど。

「コラー、何で魔女の森を何百キロも焼いたニャー」

「何を考えているニャ」

後ろにアドがいた。

元々アドは北の魔女のペットの黒猫である。まなには、アドがかわいい猫に見えた。

「わあー、かわいいねこちゃんだ」

そういうとアドの頭を、わしわし撫でてしまった。
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