85 / 86
第八十五話 魔女と勇者の戦い
しおりを挟む
黒勇者の中から二人が走り出した。
黒勇者の中でも飛び抜けて大きな二人である。
そして背中にあの樽を背負っている。
角も羽も生えている二人だった。
メイの足が止まり、相手の角のある黒勇者も足を止めた。
デラも、足を止めて、目の前の角黒勇者と間合いを取っている。
先に動いたのは、メイだった。
だが、角黒勇者はニヤニヤしながらこれを余裕でかわした。
「ふふふ、デラ、一段ギヤをあげなさい」
この言葉とともに、角黒勇者の余裕はなくなった。
「がはっ」
メイの前の角黒勇者が膝をついた。
メイの風魔法が炸裂したのだ。
横を見ると、デラも相手を倒し終っている。
「全軍でかかれーー」
その言葉とともに軍が動き出した。
そして、声をかけた本人は一目散に逃げ出していた。
メイは軍勢とは違う方向に、手を伸ばし、それが分るように杖を持っていた。
もちろん即興で、今魔法で造り出した物だ。
杖の指し示した方に、青白い稲妻が大量に現れた。
ガラガラガラ、ドオオオオーーン
ビリビリビリビリ……
地響きがしばらく続いた。
これが何を意味するのか、黒勇者達には十分伝わった。
黒勇者の進軍が自然に止まり、多くの者の力が抜け座り込んだ。
「あなた達の指揮官は逃げました。降伏しなさい」
メイが叫んだ。
「武器をすてろーー、死にたい奴は相手になってやる!」
デラも叫んだ。
その言葉を聞くと何百人かが立ち上がった。
死んでもいいから戦おうという者達であろう。
「デラ、黙りなさい!」
メイがいつになく、強い口調で言った。
メイはすでに全員を助けるつもりなのだと、デラは瞬時に理解した。
「はっ」
大げさにひざまずき、頭を下げた。
「皆さんに、食事を用意します。これを食べてみてください」
メイはここで自らの姿をさらけ出した。
透明をやめたのだ。
そして両手を広げた。
大地に多くの机が現れ、その上に沢山の牛肉のタマネギ甘煮が現れ、炊きたての美味しいご飯、そしてペットボトルの水が現れた。
あたりに甘い匂いがただよった。
黒勇者の口に唾がたまった。
突然四人の女性が黒勇者の前に現れた。
ヒノ、アリア、ハンナ、メアリーの四人である。
「皆さん、お手伝いをお願いします。シロちゃん、クロちゃんもお願い」
メイが言うとシロとクロが、メイと同じぐらいの歳の美少女姿で現れた。
「いただきます!」
ヒノが黒勇者の前で食べて、飲んで見せた。
一番下っ端なのだろう体の小さい黒勇者が、数人毒味で歩いてきた。
その、下っ端黒勇者が、一口食べる。
全員無言で膝をついた。
黒勇者の集団からざわめきが起った。
下っ端黒勇者はしばらく沈黙の後叫んだ。
「うまーーーーい!!」
そして一杯目を数秒でかき込み、二杯目をかき込んだ。
二杯目の後に水をガブガブ飲み。
また叫んだ。
「み、水がうまーーい」
この言葉が号令になり黒勇者が集まり、
「いただきます!」
黒勇者達はヒノのまねをして食べ出した。
黒勇者達が、うれしそうに食事をし出すと、メイにデラが涙ぐんで近づいてきた。
「メイ様、ありがとうございます」
「まだ、わたし達はやることがありますよ」
メイは再度姿を消すと、デラとともに黒勇者の陣に歩いた。
そこには、檻が幾つもあり、捕らえられた人々が、片隅に身を寄せ合って、今日食べられるのか、明日食べられるのか、という恐怖の中で生きていた。
「皆さん、私はガドです。助けに来ました」
「おおおお、英雄様、ガド様」
低い声が漏れた。
メイはデラにカギを開けさせると中に入り、おむすびと水を与えた。
黒勇者の中でも飛び抜けて大きな二人である。
そして背中にあの樽を背負っている。
角も羽も生えている二人だった。
メイの足が止まり、相手の角のある黒勇者も足を止めた。
デラも、足を止めて、目の前の角黒勇者と間合いを取っている。
先に動いたのは、メイだった。
だが、角黒勇者はニヤニヤしながらこれを余裕でかわした。
「ふふふ、デラ、一段ギヤをあげなさい」
この言葉とともに、角黒勇者の余裕はなくなった。
「がはっ」
メイの前の角黒勇者が膝をついた。
メイの風魔法が炸裂したのだ。
横を見ると、デラも相手を倒し終っている。
「全軍でかかれーー」
その言葉とともに軍が動き出した。
そして、声をかけた本人は一目散に逃げ出していた。
メイは軍勢とは違う方向に、手を伸ばし、それが分るように杖を持っていた。
もちろん即興で、今魔法で造り出した物だ。
杖の指し示した方に、青白い稲妻が大量に現れた。
ガラガラガラ、ドオオオオーーン
ビリビリビリビリ……
地響きがしばらく続いた。
これが何を意味するのか、黒勇者達には十分伝わった。
黒勇者の進軍が自然に止まり、多くの者の力が抜け座り込んだ。
「あなた達の指揮官は逃げました。降伏しなさい」
メイが叫んだ。
「武器をすてろーー、死にたい奴は相手になってやる!」
デラも叫んだ。
その言葉を聞くと何百人かが立ち上がった。
死んでもいいから戦おうという者達であろう。
「デラ、黙りなさい!」
メイがいつになく、強い口調で言った。
メイはすでに全員を助けるつもりなのだと、デラは瞬時に理解した。
「はっ」
大げさにひざまずき、頭を下げた。
「皆さんに、食事を用意します。これを食べてみてください」
メイはここで自らの姿をさらけ出した。
透明をやめたのだ。
そして両手を広げた。
大地に多くの机が現れ、その上に沢山の牛肉のタマネギ甘煮が現れ、炊きたての美味しいご飯、そしてペットボトルの水が現れた。
あたりに甘い匂いがただよった。
黒勇者の口に唾がたまった。
突然四人の女性が黒勇者の前に現れた。
ヒノ、アリア、ハンナ、メアリーの四人である。
「皆さん、お手伝いをお願いします。シロちゃん、クロちゃんもお願い」
メイが言うとシロとクロが、メイと同じぐらいの歳の美少女姿で現れた。
「いただきます!」
ヒノが黒勇者の前で食べて、飲んで見せた。
一番下っ端なのだろう体の小さい黒勇者が、数人毒味で歩いてきた。
その、下っ端黒勇者が、一口食べる。
全員無言で膝をついた。
黒勇者の集団からざわめきが起った。
下っ端黒勇者はしばらく沈黙の後叫んだ。
「うまーーーーい!!」
そして一杯目を数秒でかき込み、二杯目をかき込んだ。
二杯目の後に水をガブガブ飲み。
また叫んだ。
「み、水がうまーーい」
この言葉が号令になり黒勇者が集まり、
「いただきます!」
黒勇者達はヒノのまねをして食べ出した。
黒勇者達が、うれしそうに食事をし出すと、メイにデラが涙ぐんで近づいてきた。
「メイ様、ありがとうございます」
「まだ、わたし達はやることがありますよ」
メイは再度姿を消すと、デラとともに黒勇者の陣に歩いた。
そこには、檻が幾つもあり、捕らえられた人々が、片隅に身を寄せ合って、今日食べられるのか、明日食べられるのか、という恐怖の中で生きていた。
「皆さん、私はガドです。助けに来ました」
「おおおお、英雄様、ガド様」
低い声が漏れた。
メイはデラにカギを開けさせると中に入り、おむすびと水を与えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる