勇者が街にやってきた

覧都

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第六十九話 街の救助

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ハンナが振り向くと真面目な顔をしたデラがいた。

「すみません、これをお願いできませんか」

デラがいつも背負っている、四角い鞄をハンナの前に出した。
ハンナが受け取ると、鞄が二センチ程度空いて、隙間から美少女メイとヒノの二頭身人形が最高の笑顔で手を振っている。

「か、かわいいーー、…… わかりました、命に代えてお守りします」

ハンナの目は、メイの分体に釘付けになっていた。

「宜しくお願いします」

デラが丁寧にお辞儀をした。
お辞儀が終ると、黒勇者にスッと近づいた。
誰もが、黒勇者から距離を取っていた為、デラは苦も無く黒勇者のふところ深く潜り込むことが出来た。
黒勇者には慢心があった、俺を倒せる者などいないだろうと、

ガキン!!

金属音にも似た音が響き、黒勇者の体が二メートル以上垂直に浮き上がった。
デラが黒勇者のあごを下から真上に拳で突き上げたのだ。
おかげで、つかまれていたアリアの体が、三メートル程宙に浮いていた。
デラは落ちてくるアリアの膝の後ろに素早く左手を入れ、背中に右手を回し、膝を大きく曲げて衝撃を吸収し受け止めた。

「大丈夫か」

デラの顔がアリアの顔に近づいた。
アリアはデラのかっこよさに気を失いそうになっている。

「ら、らいちょーぷです」

声が裏返っている。
デラが、アリアの体を立たせると、アリアはハンナとメアリーのところへ、チョコチョコお尻を振りながら歩いていった。
いつもは、がに股でズンズン歩くアリアを見慣れている、ハンナとメアリーはビックリしている。
そして真っ赤になっているアリアを見ると爆笑してしまった。

デラは、顔が半分ほどに潰れ、動けなくなっている黒勇者の襟をつかむと引きずりながら、ハンナの前に行き、鞄を受け取った。
鞄を背負うと、残る二人の黒勇者の元に向かった。

「か、かっこいいーー」

アリアとメアリーが同時に声を出していた。

「メ、メイちゃーーん」

ハンナは、可愛いメイとの別れがつらいようだった。



一方、二人の勇者に戦いを挑むバンガ軍は、苦戦していた。
だが、遊び半分の黒勇者はまだ本気で攻め込んでいなかった。
二人は楽しみすぎていて、デラに気づけなかった。
デラは持っている黒勇者を、余裕の黒勇者の一人に、投げつけた。

ドン!!

地響きを伴う重い音がした。
これでぶつけられた黒勇者は、地面に倒れてピクリとも動かなくなった。

「き、きさまーー」

残った勇者が走り出した。

「うろたえるなーー」

デラが叫んだ。
残った黒勇者はピタリと動きを止めた。

「その二人を連れて、報告に戻れ、今から行くってなーー」

その言葉を聞くと黒勇者は、両手に倒れている仲間を引きずり、引き返した。
途中でもう一人の黒勇者が合流し、一人ずつ引きずりながら、街を後にした。

「うおおおおーーー」

黒勇者が引き返すのを見ると、バンガ軍から歓声があがった。
デラは、振り返りもせず、二人の黒勇者の後を、距離を開けながらゆっくりついていく。
デラのおかげで黒勇者を追い払うことが出来たバンガ軍は、街の人々を避難させることに成功した。
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