勇者が街にやってきた

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第六十五話 最悪の待遇 

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エリンに案内されてデラは、勇者の遠征部隊に加わった。
部隊長は老将バンガ、白い髪、ツンツン伸びた髭を生やした、小太りの爺さんだった。
エリンがいる間はニコニコ愛想良くしていたが、エリンが城に帰ると態度が豹変した。

「おい新入り、テメーは勇者でもねー癖に何、俺の隊に入って来てんだ。役立たずは後ろで荷物でも運んでいろ」

勇者の特権のステータスを見たのだろう、デラが勇者じゃ無いとわかると、荷物運びを命じた。

「ぐぬぬぬ-」

鞄のなかでヒノが怒っている。

「先生、静かにして下さい」

「わかっています」

デラは勇者の集合しているところから、輸送隊の所に移動した。
荷物はまだ積み込みの最中で、必死に積み込み作業をしていた。
だが勇者達は手伝うことはなかった。

「でら、体に二十倍の重力をかけなさい」

メイがデラに無茶を命じた。

「それではまともに歩けませんが……」

「その位が丁度いいです」

「ははっ」

「おい新入りこの荷物を運んでくれ」

近くの男に荷物を運ぶ事を命じられた。
デラは荷物に手をかけて持ち上げたが重い、少しだけ浮かせてヨロヨロ運ぶと。

「てめー、その体は見せかけだけかーー」

後ろの男に怒鳴られた。
その男は、デラから荷物を奪い取ると肩に担いですたこら運んでいった。
回りから失笑がおこった。

「メ、メイちゃん、これではデラさんが可哀想です」

「大丈夫です。デラの事は私がよく知っています。そうですねデラ」

「はい」

デラはうつむくとにやりと笑っていた。
その後もデラはヨロヨロ歩くのがやっとで、荷物運びには役に立たなかった。
まわりから木偶の坊と陰口を言われるようになった。
露骨に木偶の坊と呼ぶ者まで現れた。



翌早朝

「良し、しゅっぱああーーつ」

部隊長バンガが声をかけると勇者一行は出発した。
勇者千人の部隊であった

デラはそのまま荷物運びを命じられ、隊の後方で荷車を押していた。

「くそーー重い、木偶の坊、ちゃんと押しているのかーー」

男達が、デラを囲んで制裁を加え始めた。
デラはたいして痛くなかったが、体が重くてヨロヨロしている為、制裁を加えた者は満足していた。
デラは部隊についていくのがやっとだった。

「よーーしここで野営するーー」

部隊長バンガが指示をする。

「野営だー」

「野営だー」

全部隊に指示が届くと、食事の用意が始まった。

デラは少し遅れていた為、追いついた時には食事は終っていた。

「がーはっはっはー、木偶の坊てーめーに食わせる飯はねえ、てめー何背負ってんだそれ」

男がデラの背中の鞄に手をかけた。

「やめろーー!!」

今までずっと、声を荒げたことの無いデラが大声を出した。
だが木偶の坊が反抗したので、それがかえって火をつけた。
男達は、相変わらずヨロヨロとしか動けないデラから鞄を奪い取った。
奪い取るとそれを投げ捨てた。
なかから、二体の人形が転げだした。

「な、何だこいつ、人形なんか持ってるぞ」

鞄から転げだした、メイとヒノは人形の振りをした。
デラがその人形の上に自分の体をかぶせ二人を守った。

「このヤロー、気持ち悪いんだよ」

「仕事も出来ねーしよー、迷惑なんだよーー」

口々に悪口を言うとデラを痛めつけた。

「ねえ、メイちゃん、重力半分にして上げたら」

ヒノが心配してメイに提案する。

「駄目です。私だって二十倍なのですから」

「あーー、それで今日のメイちゃんは、おばあさんみたいな歩き方だったんだ」

「……」

つづく
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