勇者が街にやってきた

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第四十三話 つらい日常 

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ヒノは学校に着くと、直ぐに校長室へ足を運んだ。
そこで身分を明かし、全面協力を依頼し、引き受けさせた。
自らを、講師として校内で自由に行動できるようにし、お目当ての人物を探し始めた。

背格好から小学生の教室から探し始めた。
意外にも中学二年生の、成績が一番低い子供達の教室にいた。
しかも一番目立たない、一番後ろの出入り口の前の席で、下を向いて一心不乱にノートを取り、教科書を読んでいた。

(あんなにもすごいのに、頭悪いんだー、意外)

ヒノは勇者の特権のステータスを見た。
地味な少女のステータスは透明魔女だった。
それ以外は文字化けで見えなかった。

(すごい、ガド様とまな様を足したみたいなステータスだわ)

そこまで確認すると、職員室にもどった。
中学二年の生徒名簿を見つけると、透明魔女の個人情報を探した。
一人だけ名前以外何もわからない生徒がいた。
その生徒の名はメイだった。



ヒノは名簿を持って校長室に入り、応接用のソファに座ると校長を呼んだ。

「校長、これはどういうことですか」

「ああ、その子ね。憶えていますよ。金貨を大量に持ってきて、寄付をするから何も言わずに、入学させてと言ってきた子です」

「それで、入れたのですか」

「お金さえ貰えば文句はありませんからねー。でも真面目に勉強していますよ。けっしって悪い子ではありません」

優しそうな初老の貴婦人を思わせる見た目の、校長が微笑んでヒノを見た。

「知っています」

「では、なぜ王家があの子を調べるのですか」

「あの子は、この国の英雄に関係のある子です」

「まさかガド様の隠し子ですか」

この世界では、黒勇者から世界を救った英雄として、ガドの名前は隅々まで知れ渡っている。
校長の目が、芸能人のスキャンダルを楽しむおばさんの顔になり、ズイっとヒノに顔を近づけた。

ヒノは首を振り。

「ガド様にはその様な子はいません、そもそもいたとしても隠す必要もありません」

「そうですかー」

何やら校長が急につまらなそうな顔になった。

「私がメイちゃんの事を、調べていたことは、内緒にしておいてください」

「はい、はい、でも生徒に酷いことをするようなら、私は王家といえども敵にまわす覚悟がありますから、お忘れ無く」

校長は暗く恐ろしい笑みを浮かべた。
ヒノはぞくりと、寒気がした。



ヒノがメイのいる教室に戻ると、メイ達の姿が無かった。
教室の窓から外を見ると、体育の授業中でメイは走っている最中だった。

「おかしい、あの子、のろすぎる」

メイの走る姿はヨロヨロ、ふらふら、まともに走れていない。
成績も悪い、運動も出来ない。

あの子が本当に、今日黒勇者を倒した子なのかしら。

「くすくす」

もし演技なら相当なものね。
朝二度もあの子の勇姿を見ながらそれでも信じられないわ。



「メイ様、十倍はやり過ぎではありませんか」

「こ、この位出来なければ、黒勇者を全滅なんて出来ません」

メイは、体重十倍の世界を日常にするつもりだった。
だが、さすがに辛くて先生に気分が悪いため保健室へ行くと言って歩いて行った。

これをチャンスとヒノは微笑んだ。
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