38 / 86
第三十八話 亀裂消滅
しおりを挟む
メイの痛みは、体の細胞が魔力に置き換わる痛みだった。
ガドの血が、メイの魔力を目覚めさせるきっかけになったのであろう。
メイの体は魔力を欲して、黒い霧を吸収する。
その勢いは掃除機が埃を吸い込む比では無かった。
まるで、霧の方から飛び込んで行くように見える。
薄暗かった世界が見る見る明るくなった。
明るくなると、今が夕暮れで、空がオレンジにおおわれているのがわかった。
この世界で夕日を見るのは久しぶりのことだった。
そして、黒い霧の魔力が薄らぐと、亀裂が少しずつ縮んでいった。
「おお、ガドがやりおった」
亀裂の外でまなが異変に気が付いた。
「まずいのー、亀裂が縮んでおる」
まなは、勇者達を心配した。
既に、あいもサエも勇者達も亀裂の前に集まっていた。
「まな様、わたし達は、元の世界へ帰りたいと思います」
ヒミがまなに自分の気持ちを伝え亀裂を覗いた。
「あああ、すごい、黒い霧が無くなっています、ガド様のおかげです」
「うむ、亀裂が無くならぬうちに早う行け」
まなが心配するほど早く亀裂は縮んでいた。
勇者達は、まなにお礼を言いながら亀裂の中に消えていった。
最後にヒミだけが残っている。
その時にはもう、一人がやっと通れるほどになっていた。
「ガド様は戻らないのでしょうか」
ヒミが心配する。
「その事なら心配するな、何とかする方法がある。それともおぬしは残る気か」
ヒミは残りたそうな顔をしているが首を振った。
「私は、王にならねばなりません。本当は残りたいのですが……」
「ならば早く、無くならぬうちに」
「はい」
こうして、勇者は亀裂の中に消えた。
「おばあさま、ガド君は大丈夫ですか」
あいが心配そうにまなに尋ねた。
「ふふふ、大丈夫じゃ、奴はわしの眷属じゃ。眷属はあるじの呼び出しには必ず駆けつけるのが契約じゃ」
まなは両手を広げ険しい表情になる。
「いでよ、ガドーー」
なんの変化もなかった。
「あれ、おかしいな」
「おばあ様、おかしいなじゃありませんよ」
あいが怒っている。
「いてーーー」
まなの前で声だけがした。
「ああ、透明だった」
まなとあいの声がそろった。
「ばあさんも、あいも死んだのか」
「な、何を寝ぼけておる。相変わらずじゃのー」
「まさか生きているのか、俺」
「当たり前じゃ、虫の息だったかもしれんが、生きておったのじゃろう」
「ケガも治っている」
目には見えなかったがガドは体中をさわっているようだ。
「あたりまえじゃ、契約魔女に呼ばれたら万全の状態になるに決まっておる。魔女がピンチの時に助けとして呼ぶのじゃからな」
まなが暴君を見る。
「おぬしはどうするのじゃ」
「&%#$……」
「むう、亀裂の向こうの魔力が無くなって、言葉がわからんようになっておる」
メイは辺りが少し明るくなってから気が付いた。
ガドが倒れている位置をを見たら、全体が血の海になっている。
「おかしい」
恐る恐る手を伸ばしたがそこにあるはずの手応えがなかった。
「ガド様、ガド様」
呼んでも返事が無い。
黒い勇者に連れ去られたのか、死ぬと消えてしまうのか、メイには真相がわからなかった。
「ガドさまーーー」
辺りにメイの悲痛な叫びが響き渡った。
ガドの血が、メイの魔力を目覚めさせるきっかけになったのであろう。
メイの体は魔力を欲して、黒い霧を吸収する。
その勢いは掃除機が埃を吸い込む比では無かった。
まるで、霧の方から飛び込んで行くように見える。
薄暗かった世界が見る見る明るくなった。
明るくなると、今が夕暮れで、空がオレンジにおおわれているのがわかった。
この世界で夕日を見るのは久しぶりのことだった。
そして、黒い霧の魔力が薄らぐと、亀裂が少しずつ縮んでいった。
「おお、ガドがやりおった」
亀裂の外でまなが異変に気が付いた。
「まずいのー、亀裂が縮んでおる」
まなは、勇者達を心配した。
既に、あいもサエも勇者達も亀裂の前に集まっていた。
「まな様、わたし達は、元の世界へ帰りたいと思います」
ヒミがまなに自分の気持ちを伝え亀裂を覗いた。
「あああ、すごい、黒い霧が無くなっています、ガド様のおかげです」
「うむ、亀裂が無くならぬうちに早う行け」
まなが心配するほど早く亀裂は縮んでいた。
勇者達は、まなにお礼を言いながら亀裂の中に消えていった。
最後にヒミだけが残っている。
その時にはもう、一人がやっと通れるほどになっていた。
「ガド様は戻らないのでしょうか」
ヒミが心配する。
「その事なら心配するな、何とかする方法がある。それともおぬしは残る気か」
ヒミは残りたそうな顔をしているが首を振った。
「私は、王にならねばなりません。本当は残りたいのですが……」
「ならば早く、無くならぬうちに」
「はい」
こうして、勇者は亀裂の中に消えた。
「おばあさま、ガド君は大丈夫ですか」
あいが心配そうにまなに尋ねた。
「ふふふ、大丈夫じゃ、奴はわしの眷属じゃ。眷属はあるじの呼び出しには必ず駆けつけるのが契約じゃ」
まなは両手を広げ険しい表情になる。
「いでよ、ガドーー」
なんの変化もなかった。
「あれ、おかしいな」
「おばあ様、おかしいなじゃありませんよ」
あいが怒っている。
「いてーーー」
まなの前で声だけがした。
「ああ、透明だった」
まなとあいの声がそろった。
「ばあさんも、あいも死んだのか」
「な、何を寝ぼけておる。相変わらずじゃのー」
「まさか生きているのか、俺」
「当たり前じゃ、虫の息だったかもしれんが、生きておったのじゃろう」
「ケガも治っている」
目には見えなかったがガドは体中をさわっているようだ。
「あたりまえじゃ、契約魔女に呼ばれたら万全の状態になるに決まっておる。魔女がピンチの時に助けとして呼ぶのじゃからな」
まなが暴君を見る。
「おぬしはどうするのじゃ」
「&%#$……」
「むう、亀裂の向こうの魔力が無くなって、言葉がわからんようになっておる」
メイは辺りが少し明るくなってから気が付いた。
ガドが倒れている位置をを見たら、全体が血の海になっている。
「おかしい」
恐る恐る手を伸ばしたがそこにあるはずの手応えがなかった。
「ガド様、ガド様」
呼んでも返事が無い。
黒い勇者に連れ去られたのか、死ぬと消えてしまうのか、メイには真相がわからなかった。
「ガドさまーーー」
辺りにメイの悲痛な叫びが響き渡った。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる