勇者が街にやってきた

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第六話 暗い夜

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ズボンとパンツは瓦礫の中の落とし物をお借りした。

だが、それも直ぐに血で汚れ気持ち悪いから脱いでしまった。
ついでに上着も脱いで、文字通り、裸になった。
見つける度に勇者と戦い、剣で切り倒すと全身勇者の血で汚れ、もう洗う気もおきない。

辺りが薄暗くなると、勇者達の姿は無くなった。
地震から生き残った人々は悲惨だ。
この辺りは、壊滅的に壊れていて、電気もガスも水道もない。
避難で集まればそこには勇者がやってくる。
気が休まる場所も何も無い。

勇者がいなくなると、大声で避難先を案内しだした。
そこに水や食事が用意されていると案内している。
何故か俺は腹が減ってないし、水すらも飲みたいとは思わない。
人の流れとは逆に歩き人気の無い小さな公園で休むことにした。

座るのに丁度いいコンクリートに腰掛けていると、星が綺麗だった。
街に光が無いと、星が綺麗に見えるものらしい。

「うわーーん」

小さな泣き声が聞こえる。
俺の前に、小さなまなとあいが現れた。
泣いているのは、あいだった。

「どうしたんだ」

まなに聞いてみた。

「家に誰も帰ってこないらしいのじゃ」

「そうか」

「まなの家族も帰ってこない。そしてガドの家にも誰も帰っていない。こっちには勇者は来ていないから。勇者の出口はあそこだけのようじゃ」

「そうか、俺の家族も……」

「学校の校庭に生き残った人が集まっているが、その数は少ない。そっちはもっと大変じゃろうのう」

「ああ、勇者がひでー。あいつらは最悪だ。休まる場所がねー」

「ばあさん、俺を朝の場所に移動させてくれないか。いまから、あいつら殺しまくってやる」

「それはいいのう。やつらは、夜は集まって眠るらしい。スライムの怒りをみせてやれ。ほい!!」





「ふふふ。よく眠っているなー。神殿で生き返る奴に容赦はしねえ。鎧まで脱いでいるとは、スライム舐めすぎじゃねーのか」

俺は立てかけてある剣を手に取ると、首に剣を差し込んだ。
人間と同じ形をしているが、心臓の位置が同じとは限らねえから首にした。
しかし、見張り番もいねーとは、舐めるのもいい加減にしろ。
結構な人数の首に穴を開けたら、血でびちゃびちゃになり、異変を感じるものが出て来た。

「侵入者だー! 侵入者がいるぞーー!!」

いるけど、透明になっているから見えないよ。

「おかしい、なぜ俺たちがやられるんだ。スライムでは俺たちに危害を加えられるわけがねえ。なにものだ」

なるほどね、スライムからは攻撃されてもダメージがないんだ。
それで、こんなに無防備なわけね。
明日からは見張りを立てておきなさいねと。
さて、俺は帰るとしますか。
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