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第八十二話 久々の里帰り

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僕は人さらいの砦で、久しぶりに男ばかりになって楽しく過ごしている。
ぼーっとしていると、もじもじしながら、兵士さんがやってきて少し話しをします。
その話しが意外と興味深くて、深掘りすると止らなくなってしまいます。
ここにいる人は、僕を女だと思っているみたいで、会話には気を使ってくれているようだ。要するに下品な話しは聞けなかった。

「ノコ様、そろそろ帰る時間ニャ」

「うーん、マリーだけ帰って、僕は泊まっていくよー」

無理だとは、思っていますが一応言ってみた。

「ノコ様!!」

すごい剣幕で怒られた。
ニャを付け忘れる剣幕だった。
クリードさんとライアクさんに別れを告げて、我が家に移動した。



いつもの様に、夜、皆が寝静まってからのんびりしていると、ゾンビの三王がやってきた。
当然、ゾンビの大魔女マリーは僕の膝の上で、黒猫姿になりくつろいでいる。

「ふふふ、ここにいると世界を征服できそうな気がするのじゃ」

「ユーリさん、僕にそんな気は微塵もありませんからね。いまのまま静かに平和に暮らせれば何もいりません」

ユーリさんが恐ろしいことを言い出して、僕はビックリしました。
でも、ユーリさんとアクエラさん、デルイドさんはニコニコしています。
表情から本気では無いと読み取れますがどうなのでしょう。

「ノコ様、姉御、遅くなりました」

S級冒険者の、サビアさんとシロイさんが帰ってきました。

「お帰りなさい。食事を用意しましょうか?」

「いいえ、済ませてきました。ノコ様にいろいろ聞きたい事と、伝えたいことがあります」

サビアさんが答えてくれました。
我が家には、きらきら輝くような美人しかいませんが、この二人だけは普通でほっとします。

「はい。お話の前に、甘い物はいかがですか」

「いただきます!!」

サビアさんとシロイさんの返事がそろいました。

「マリー、お願いします」

マリーの魔法で、お菓子と紅茶が机の上に並んだ。

「で、どの様な件でしょうか」

「はい、まずはギルド長からの言葉です」

口に一杯、ケーキを頬張ったサビアさんに代わって、シロイさんが答えてくれました。

「はい、何でしょう」

「森の魔獣が魔石を残して大量に消滅しました」

「そそそそ、そうなんですか。へー初めて聞きました」

僕は、全く知らないふりをしました。でも、ユーリさんとアクエラさん、デルイドさんの三王が、笑いをこらえきれずに、肩が滅茶苦茶震えています。
もう、いっそ笑って下さいという心境です。

「ふふふ、ノコ様は知らなかったのですね。でも聞いて下さい。その怪しい状況に冒険者が恐くて魔石を拾えないのですが、拾ってよろしいのかどうか、ギルド長に聞いて来て欲しいと言われています」

「な、なぜ僕に聞くのかどうかは知りませんが、よろしいのでは無いでしょうか。あ、でもちょっと待って下さい」

ここで僕は一つ名案が浮かびました。実は、昔々、僕は世界を滅ぼしかけたことがあります。
世界の人口の八割をゾンビにしてしまったのです。
そのゾンビが、パリス国の東の僕が管理しているダンジョンに、しまってあります。
せっかくなので、このゾンビを世界中のモンスターの代わりにばらまきたいと思ったのです。

「ねえ、マリー、一つ名案が浮かんだのですが、ゾンビをモンスターの代わりに出来ないでしょうか」

「だめニャー。あんな恐ろしいことは絶対にだめニャー」

「でも、ほら、あの時は、何も命令を出していませんでしたが、今回は太陽の光に当たらないこと、森から出ないことの二つの命令をしようと思います。これならいいと思いませんか」

僕は、スキル冥府王でゾンビに命令が出来ます。
でも脳が溶けているゾンビには複雑な命令が出来ません。
昔の過ちは、何も条件を付けずにゾンビが増えたので、あっという間に世界中をゾンビがおそったのです。
あの時は昼も夜も休み無くゾンビに襲われた人達は、恐怖に寝る暇も無かったのです。

「そうニャー、魔石が簡単に取れてしまったら、余り良くないニャ」

すでにゾンビのマリーは意外と、あっさり受け入れてくれました。

「そうです。ゾンビになりたくなければ森に入らなければ良いのですから」

「それニャら、良さそうニャ」

「ということなので、森にゾンビがあふれているので、気を付けて拾うようにとギルド長にはお伝え下さい。あ、あと森から出ないことなどの条件は伏せておいてください」

「は、はあ、ゾンビですかー」

シロイさんの表情が暗くどんよりとしました。

「いったい、どの位いるのでしょうか」

サビアさんが、少し余裕の表情で、聞いて来ました。

「どの位いたのでしょうか?」

僕が首をかしげていると、

「だいたい、七千万体ニャ」

「……」

全員の目が点になった。
少し僕も驚いた。

「話しは、これだけですか」

「いいえ、武術大会についてです。すでに予選が行われていて、王都の中心街はすでにお祭り騒ぎです。私達は、実行委員も兼ねていますので、ご案内できますから一緒に行きませんか。というお誘いです」

「行きまーす。行きたいでーす」

部屋の外からヒュアちゃんが、手をあげて飛び込んできました。
僕は明日、エルフの国の王都に行こうと思っていましたが、これは予定変更ですね。

「わかりました。明日はよろしくお願いします」

「はい!!」

サビアさんと、シロイさんの声がそろいました。

「では、マリー、ユーリさん、アクエラさん、デルイドさん、ゾンビばらまき作戦開始です」

僕は、久しぶりに、ダンジョンに里帰りした。
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